オペルベクトラGTS2.2(5AT)/ベクトラGTS3.2(5AT)【試乗記】
5ドアに賛同 2003.03.25 試乗記 オペルベクトラGTS2.2(5AT)/ベクトラGTS3.2(5AT) ……361.0万円/458.0万円 2003年3月24日、オペルの中核モデル「ベクトラ」に、5ドアハッチバックの「GTS」が加わった。スポーティイメージを訴求し、「ベクトラの本命」と謳われる新型に、webCG記者が箱根で乗った。
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シリーズの本命
「“スポーティ”を訴求するオペルとして、ベクトラはセダンでなく、こちらがシリーズの本命となります」と、日本ゼネラルモーターズのオペル担当者が説明するのは、2003年3月24日からオペル「ベクトラ」のラインナップに加わった5ドアハッチバックバージョン「GTS」。日本に導入されるのは、GMグループ内ですっかりお馴染みになった2.2リッター4気筒(147ps)を積む「GTS2.2」と、“新世代キャディラック”たる「CTS」にも使われる、3.2リッターV6(211ps)の「GTS3.2」の2種類。トランスミッションは、いずれもシーケンシャルモード付き5段ATの組み合わせとなる。
「GTS」というスポーツカーのような名前を与え、“スポーティセダン”を標榜するのは、ブランド戦略の一環による。新型ベクトラの発売以来、オペルは“スポーティ”をキーワードにしたブランドイメージの構築と、ユーザーの若返りを図っているためだ。だからGTSには、フォーマルな雰囲気を持つセダンに較べて、若々しく気軽な雰囲気を与えたという。
さらに、2.2リッターが348.0万円、3.2リッターは415.0万円という価格もポイント。メルセデスベンツやBMW、あるいはアウディやアルファロメオなどの“プレミアムブランド”とは、ハッチバックという点でひと味違う、かつ「グっとお安く求めになれます」というセールストークができるのだ。潜在的な顧客に立派なカタログスペックでアピールし、魅力的な価格で背中を押す、というわけだ。
オフィスのよう
GTSのボディサイズはセダンと変わらず、全長×全幅×全高=4610×1800×1465mm、ホイールベースは2700mm。リポーターは個人的には、セダンの見た目に四角張って野暮ったい印象を抱いていたが、6ライトのウィンドウグラフィックと、なだらかな傾斜のリアハッチゲートをもつGTSは、「セダンよりずっと、カジュアルでスタイリッシュだ」と思った。前後に装着されるエアロバンパー、大きな空気取り入れ口、ブラックで縁取りされたヘッドライトベゼルがフロントマスクを引き締め、さらに、スポーツサスペンションが車高を20mm低める。
「うわ、大きいなあ!」撮影機材を積むため、ハッチゲートをあけた峰カメラマンがつぶやく。ベクトラはセダンの荷室も広いが、荷室のフタがガバっと開き、フラットなフロアを一望できるハッチバックのインパクトは、また格段のものがある。容量500リッターのカタログ値はセダンと変わらないが、後席をフォールディングすれば、オメガに匹敵する1800mmの奥行きと、1360リッターの容積(いずれもVDA方式)を確保できる。
最初に乗ったのは、上級グレードの3.2リッター版。スポーティを謳うGTSだけに、シートはサイドサポートの利いたレザースポーツシート(2.2リッターはファブリック)を装着、セダンのウッドパネルに対し、3.2はプラチナ調、2.2はアルミ調パネルをアクセントに使う。とはいうものの、インテリアの造形は基本的にセダンと同じで、水平垂直のラインでダッシュボードやセンターパネルを形づくるシンプルなもの。運転席に座っただけで、ドライブ気分が盛り上がるというより、静かに仕事をこなすオフィスのような雰囲気だ。
「速い3.2」と「スポーティな2.2」
3.2リッターV6「エコテック」は、「オメガ」やキャディラック「CTS」などに搭載されるものと同じパワーユニット。低回転からトルクは十分、最大トルクは30.6kgmもあるだけに、アクセルペダルを踏み込めば箱根の山道をストレスなく加速する。0-100km/h=7.5秒、オペル量産車史上最速のV-MAX(最高速度)=245km/hを標榜するだけあって、普通に走っていてもさすがに速い。しかし高回転になると、音は勇ましいのにフィーリングが重たく、スカっとしない。5段ATはスムーズながら、トルキーなエンジンゆえにシーケンシャルモードを使う必要性を感じない。次第にスポーツドライビングというよりは、安穏としたドライブとなった。
2.2リッターに乗り換えると、印象はだいぶ変わる。中低速トルクに優れる性格はオペルならではだが、直列4気筒「エコテック」はバランサーシャフトを備え、高回転までシャーンと吹け上がるスムーズさも兼ね備える。147psと20.7kgmのパワーは“そこそこ”でも、シーケンシャルモードを駆使し、高回転まで存分に使って走れる。あえてスポーティで選ぶなら、2.2リッターがオススメです。ちなみにハンドリングは、両モデルともセダンよりキッチリしているけれど、驚くほどシャープでもダイレクトでもない。“スポーツセダン”というコトバから想像されるより、ずっとマイルドだ。
乗り心地も、2.2リッターに軍配があがる。通常、車重が重い方がボディの動きが緩慢で快適だが、GTSの場合は2.2リッターのほうがしなやかに感じられた。担当者によれば、3.2リッターは高速性能を確保するため、タイヤ空気圧を前2.8、後2.9kg/平方センチと、2.2より高く(2.2は前後とも2.2kg/平方センチ)設定したからだという。ちなみに、テスト車のタイヤは、いずれもグッドイヤー・イーグルNCT5である。
リポーター的には見た目も走りも、ハッチバックのGTSが、セダンより好印象で、“ベクトラの本命”には強く賛同する。とはいえ、単にセダンよりスタイリッシュな外観が好きなのと、5ドアハッチバックの方が利便性が高いと思ったからですが……。
(文=webCGオオサワ/写真=峰昌宏/2003年3月)

大澤 俊博
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