トヨタ・エスティマハイブリッドG(4WD/CVT)【試乗速報】
“約100万円”を補うアドバンテージ 2006.06.28 試乗記 トヨタ・エスティマハイブリッドG(4WD/CVT) ……498万7500円 先代に較べて内容を一気にグレードアップさせた、新しい「エスティマハイブリッド」。ノーマルと内外装にも差別化を図り、10.15モード燃費20.0km/リッターを謳う新型の乗り味やいかに?今もって、革新的なミニバン
動力性能や燃費、環境性能といった走りの基本部分と、シートやラゲッジスペース等のミニバンとして求められる使い勝手の両面において、従来モデルを上回る性能を実現すること。新しい「エスティマハイブリッド」の狙いを要約すれば、それに尽きると言えそうだ。何か革新的なところはないのかって? いやいや、結局のところ2001年の登場から今までに、それを上まわる革新性を備えたミニバンは、ついぞ現れはしなかったのだ。さらにその先へと進んだ新型エスティマハイブリッドが、十分過ぎるほどに先鋭的な1台であることは間違いない。
進化した走りの根幹は、一新されたハイブリッドシステムだ。前輪への動力伝達にベルト式CVTを用いた、従来の「THS-C」に替わって使われるのは、「プリウス」以降の最新モデルで定評のある「THS-II」。モータートルクを増大させるリダクション機構や電子制御式4WDの「E-Four」と組み合わせたシステム構成は「ハリアー/クルーガーハイブリッド」と近いが、こちらのエンジンは、より効率性を重視したアトキンソンサイクル=高膨張比型の直列4気筒2.4リッターとなる。エンジンの最高出力は先代の96kWに対して110kW(150ps)へと大幅アップ。さらにモーター出力も、フロントが13kWから105kW(143ps)へ、リアが18kWから50kW(68ps)へと、やはり一気に高められた。
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ベースのよさを残して洗練
その効果は乗れば明らかだ。そうは言っても、280psを発生する3.5リッターV6モデルのような迫力で押す感じではない。停止状態からの立ち上がりはグッと力強く、しかしトルク感はあくまで滑らか。そして、そこから先もハイブリッド特有の継ぎ目のない加速が、100km/hオーバーの速度域までいささかも衰えることなく続く。その加速感には、“上質”だとか“品がいい”といった表現がふさわしい。
車重は「G」の7人乗りで1970kgと、ガソリン仕様の2.4リッターモデルより200kg以上も重い。おかげでハンドリングは軽快とは言いがたい。ステアリングの反応は悪くないのだが、その後の追従性には重く、しかも重心も低くない感じはハッキリ現れる。
しかし、だからよくないというわけではない。事実、重く背が高いクルマなのだから、そういう風に走らせてやればいいのだし、仮に行き過ぎてしまったときには……実際には行き過ぎてしまいそうになった時点から「VDIM」が介入を開始して、車両姿勢を穏やかに修正してくれるからだ。
乗り心地は予想以上のものだった。こちらも確かに重さは感じるが、強力なダンパーが、路面のうねりで煽られた時にもその入力をしっかりいなしてくれ、ズシーンと突き上げることがない。3列目より2列目、2列目より1列目のほうが落ち着きがあって快適なのは、ベースとなるエスティマと同じ。速度を上げるにつれて車体の動きがぴたっとしたフラット感を高めてくるのも同様で、街乗りよりも、実は高速クルージングこそ得意科目のようである。
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選ぼう……と思わせる価値
使い勝手の面では、ハイブリッドシステムを搭載したにもかかわらず、他のモデルと同等のシートアレンジを実現したことがトピックだ。先代はラゲッジ床下にバッテリーを収納するためサードシートが収納できなかったのだが、新型ではそのバッテリーが移設されたのである。その行き先は、運転席と助手席の間のセンタートンネル内。おかげで前席間ウォークスルーはできなくなったが、代わりに2列目はセールスポイントのひとつである「スーパーリラックスモード」へのアレンジが可能になっている。もちろん荷室の使い勝手もこちらのほうが上。よって、より多くのユーザーに歓迎されるのは間違いない。
新型エスティマハイブリッドの10.15モード燃費公表値は実に20.0km/リッター。実際、一般道が9割ほどを占めた今回の試乗では、オンボードコンピューターは15km/リッター前後を指していた。その数字の通りなら、2トン級の体躯としては十分満足できる小食ぶりと言っていい。加えて、3.5リッターV6モデルより上質な加速感、さらには先代同様なぜか感じるちょっと知的な雰囲気といった魅力も加わるのだ。「100万円近い価格差を燃費で取り返すのは大変(というか無理?)だ」とわかっていても、「ハイブリッドを選ぼう……!」と思わせるだけのものは、確かにそこにはある。
クリアブルーをあしらったヘッドランプやリアコンビネーションランプ、バンパーやグリルなどを変更した外観は、元のイメージを大きく変えるものではないが、オーナーにとっては、それこそが他のミニバンに、そして他のエスティマに決定的な差をつける大きなポイント。新型も、きっと彼らの羨望の眼差しを集めるミニバンのプレミアムブランド的存在になるのだろう。
(文=島下泰久/写真=荒川正幸/2006年6月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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