第265回:W杯のオマケにどう? 新メルセデス・ベンツ・ミュージアム
コイツはちょっとズルすぎる!?(前編)(小沢コージ)
2006.05.30
小沢コージの勢いまかせ!
第265回:W杯のオマケにどう? 新メルセデス・ベンツ・ミュージアムコイツはちょっとズルすぎる!?(前編)
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■“一線級”が本気を出すと……!
まったくまーその……コイツにはほとほと参りました。降参です! ドイツはシュトゥットガルトに新しくできた「メルセデス・ベンツ・ミュージアム」。2006年6月に開幕する「2006 FIFAワールドカップドイツ大会」にあわせ、「ゴットリープ・ダイムラー・スタジアム」と、メルセデス・ベンツのウンタートルクハイム工場の隣に建設された最新クルマ美術館であります。
先日初めて行ったんだけど、ヤリ口がある意味ズルい! ズルすぎるっ! っていうか反則!? そう言いたくなるくらいにステキなミュージアムなのでありました。
というのもさ。1886年に自動車を誰よりも早く開発し、今の今まで一線級の乗用車&レーシングカーを作り続けてきたメルセデス・ベンツが、マジメかつ本気でやるんだよ。ステキになるに決まってるじゃない。一時、潰れかけた老舗とか、最近バカ売れしてる新興メーカーの仕業とはワケが違う。
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■自社の力を120%発揮
具体的には2000年にVWグループが本拠地ヴォルフスブルクに作って、年間100万人集客予定のところを倍も集めちゃった“自動車の街”こと「アウトシュタット」に触発されたのは……まぁ“みえみえ”。でも、あちらが自社ブランドだけにこだわらず、他社製品もひっくるめて“クルマのディズニーランド”的なものを目指したのに対し、メルセデス・ベンツは“自社製品=まさに自動車の歴史そのもの”であることを120%活かし、純度100%の自社展示物のみで、カンペキなまでに自動車の歴史の面白さ、深みを見せつけちゃってるのだ。
なんつーか、まさにメルセデスにしかできない荒業なわけで、俺に言わせりゃグラビアアイドルのほしのあきちゃんがビキニ着て「ハワイで一緒に泳がな〜い?」って誘ってくるくらいにズルい!
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■展示方法もまた、ドイツ
だってさ。男(クルマ好き)としては抵抗できないじゃないの。相手があまりに魅力的すぎて。しかもその自分の魅力を知り尽くしちゃってる態度がニクらしい。なんつーか、「私って可愛いでしょ!」「私って凄いでしょ!」って言われて「はいそうです」って答えてしまうような悔しさよ。わっかるかなぁ、この複雑な男ゴコロ……。
とはいえ、メルセデスもまさに適材適所、必要にして十分な展示法は採っている。建物はオランダの著名な建築家、ベン・ファン・ベルケル氏とカロリン・ボス氏の「UNスタジオ」作で、見た目からしてアートっぽいのもいいけど、それ以上に中味が有機的かつ効率的なのだ。
建物は高さ47.5m、10階建てのマンションぐらいあり、総展示スペースは実に9フロアで、総床面積は1万6500平方メートル。そこに車両160台を含む総数1500点以上のブツが陳列されてるわけだ。それだけ聞くと俺みたいなナマケモノは気が遠くなる感じだけど、そんなことはない。
内部構造がいわば“東急ハンズ渋谷店”的な、中二階のある二重らせん構造になっており、適当にフロアをハショリながら、ラクにも念入りにも観ることができる。
オマケに基本的には最初にエレベーターで最上階に上がり、階段で下っていくシステムだから重力的(?)にもラクチン。
なんつーかな。たしかに包括的かつ網羅的なんだけど、べつにルーブル美術館ほどじゃないし、車両にしてもホントは600台ほどあるコレクションなかの160台を適度にチョイスして展示してある。つまり、ドイツらしく見る人のことを考えてる。だからすんごく効率的で、肉体的にも心理的にもストレスのかからない見学ができるのだ。(後編に続く)
(文=小沢コージ/写真=ダイムラー・クライスラー日本/2006年5月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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