ジャガーXKクーペ(FR/6AT)/XKコンバーチブル(FR/6AT)【海外試乗記(後編)】
時代の先端を切り開くために(後編) 2006.03.27 試乗記 ジャガーXKクーペ(FR/6AT)/XKコンバーチブル(FR/6AT) ジャガーらしい流麗なシルエットを継承しているニューXK。アルミボディの採用により先代より軽量化を果たした、その走りはいかに?ボディにお金をかけすぎた
まずテストドライブに出発をしたのは「最大の共通化を行うためクーペと同時進行で開発を行ってきた」というコンバーチブルモデル。低くて薄いその佇まいは、なるほどジャガーのオープンモデルにふさわしいカッコ良さだ。
コンソール上の赤いエンジンスタートボタンを押し、300bhpという最高出力を発する4.2リッターのエンジンに火を入れる。ちょっとアメリカンな派手め(?)のV8サウンドを耳にしつつ、“Jゲート”が健在のATレバーでDレンジを選択する。アクセルペダルに力を加えると、動き出しの印象はすこぶる強力で、かつ軽快だ。
そう、接合箇所を減らすなどXJに用いられた手法を進化させたこのクルマのオールアルミによるボディ構造は、そのすこぶる付きの軽量ぶりこそが最大の特徴。具体的には、360kgという「メルセデスベンツSL」、370kgという「BMW6シリーズコンバーチブル」のホワイトボディ重量に対し、新型XKコンバーチブルのそれは「より上回る剛性値を確保した上で、わずかに285kgに過ぎない」という。
実際そうしたデータを耳にするまでもなく、新しいXKコンバーチブルのボディのしっかり感は期待と予想を上回り、さらに前出の出力スペックから考えるより豪快で軽快な加速感を持つ。
これならば、ライバルたちに対してちょっと控え目(?)な4.2リッターという排気量でも、確かに競争力は十分にあるだろう。もっとも、こうして「ボディにお金をかけたゆえに、エンジンの直噴化にまでは踏み切れなかった」という裏話も聞かれはしたのだが……。
路面変化に敏感なアルミボディ
“前編”でお伝えの通りソフトトップは3層構造。が、クローズ時にはそれを透過しての車外ノイズがやや目立ち気味なのはちょっと残念だ。標準の18インチに対し1サイズアップの19インチオプションシューズを履かされたテスト車は、走りのシーンによってはタイヤが発するゴム毬が弾むごとき空洞共鳴音も少々目立った。また、ロードノイズが路面変化に対してやや敏感という印象もある。「アウディA8」や「ホンダNSX」でも同様の印象を持った記憶があるので、アルミボディはこのあたりがやや神経質なのかもしれない。
一方、後に乗り換えたクーペのテスト車は、さらに1インチアップの20インチというオプションシューズを装着。フィクスドルーフゆえにボディ剛性感はさらに高く、振動の減衰が優れているので不快感は少なめだが、さすがに低速域では路面凹凸をよりダイレクトに拾う傾向がある。ちなみに、コンバーチブルよりも40kg軽く車両重量が1.6トンを割り込むこちらは「14.4秒という0→400m加速データは、従来のXKRとコンマ5秒と違わない」というさらなる俊足ぶりを誇る事になる。
アウトバーンの王者は狙っていない
むろん日本では問題となるまいが、ごく緩いコーナーの続く彼の地の“超高速ワインディングロード”をオーバー200km/hで駆け抜けてみると、ノーズが軽く左右に泳ぐような傾向も認められた。トランクリッド後端に控え目なキックアップ処理が施されてはいるが、まずは伝統的な優美さを演じたいというこのモデルの場合、あえて強いダウンフォースを生み出すような機能的デザインの優先度は高くはなかったのかも知れない。最高速はリミッター作動時の250km/hが報告をされるが、そもそも「アウトバーンの王者」などは狙っていないのが新型XKでもあるのだ。
そんなこんなでコンバーチブルにしてもクーペにしても、フラッグシップモデルたるXKの“ジャガー度”の高さというのは、ぼくにとって「ほぼ期待通り」という印象だった。何よりも歴史と伝統という無形の財産を重んじるこのブランドが、一方でオールアルミ構造という最先端のテクノロジーを用い、自らのイメージリーダーを世にアピールしようというのは興味深い戦略だ。いや、そんな豊かなヒストリー性を持つブランドであるからこそ、今現在は時代の先端を切り開こうという気概に満ちているのかも知れない。新しいXKシリーズはこの夏には日本にも上陸の予定とされている。
(文=河村康彦/写真=ジャガージャパン/2006年3月)
・ジャガーXKクーペ(FR/6AT)/XKコンバーチブル(FR/6AT)【 海外試乗記(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017975.html

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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