アウディ A4【特集/webCG青木禎之】
細部による前進-アウディA4を女満別で乗る- 2001.12.30 試乗記 アウディ A4 2.0(CVT)/3.0クワトロ(5AT) ……362.0〜515.0万円 2005年までに、販売台数を1万台に戻したいアウディジャパン。新たに日本市場に投入されたプレミアムBセグメントモデル、A4に希望をかける。「2リッター直4+CVT」と「3リッターV6+5AT」、2系統のモデルに、『webCG』記者が女満別で乗った。主役の上陸
飛行機のなかで北海道は女満別の位置を確認すると、ずいぶん北だ。「すぐ上はオホーツクですね」と、隣の席から地図をのぞいたスタッフが言う。
2001年6月、新型アウディA4のプレス向け試乗会が開催された。250人からのジャーナリスト、カメラマンほかは3つのグループに分けられ、われわれ『webCG』取材班が参加したのは6月12日からはじまる第2グループである。
現地には、「梅雨の本州を避けたつもりが、しかし北の空は泣いていた……」なんて演歌な気分を吹き飛ばすヨーロピアンな会場が用意されていた。緑の芝生には、フォーリングズのフルラインナップが並ぶ。葉陰から屈斜路湖の水面がのぞき、オレンジ色のモーターボートが見える。湖畔には、白い、大きなテントが建てられた。
1994年に登場した先代A4は、デビュー以来100万台がドイツのインゴルシュタット工場から巣立った。
「ドイツ国内に限れば、プレミアムミドサイズサルーンの、常にトップの座を守り続けてきました」(プレス資料)。ところが、日本市場では、欧州での成功を反映するどころか、97年の1万800台(アウディ全車)をピークに販売台数は低下、99年には6400台まで数字を落とした。
不振の原因を、「ディーラーのプレミアム度不足」と分析したアウディジャパンは、2000年末に約240店舗あった全販売店との契約を終了、アウディ専売店を中心とした販売網の再構築を始めた。5月14日現在でディーラーは74店舗となり、うち30が専売店である。
TT、Sシリーズ、そしてRSなどで話題を維持したフォーリングズ。いよいよ“数の出る”主力モデルの上陸である。試乗会にも気合いが入ろうというものだ。「2005年までには、全アウディ車販売の65%をA4が担う」と、アウディジャパンは予測する。
せっかちだとノイジー
A4のラインナップは、当面4種類。2リッター直4搭載FFモデルの「2.0」(362.0万円)と「2.0SE」(399.0万円)、3リッターV6を積んだ4WD「3.0クワトロ」(515.0万円)と「3.0クワトロスポーツ」(533.0万円)である。直4には「マルチトロニック」と呼ばれるCVTが、V6には「ティプトロニック」ことスポーツモード付き5段ATが組み合わされる。
2.0SEに乗る。黒い外装にタンのレザートリム。空力を重視するアウディらしく、グリーンハウスはやや上すぼみでサイドが倒れるが、30mm拡大した横幅のおかげで圧迫感はない。ボディサイズは、全長×全幅×全高=4555(60)×1765(30)×1430(20)mm。カッコ内は先代からの増大分。ホイールベースは2645mmに延長され、室内長は32mm拡大したという。
小ぶりなシートに座る。「ステッチのひとつひとつにまで神経を使った」との説明通り、四方八方キッチリしている。フェイシア面一(ツライチ)に埋められたエアコン吹き出し口。ゆるぎない直線がダッシュボードを横断する。“全体主義的清潔感”といったら語弊がありましょうか。パワーウィンドウのスイッチは、カチ、カチと動き、曖昧さがない。
130ps/5700rpmの最高出力と19.0kgm/3300rpmの最大トルクを発生する2リッターオールアルミユニットは、しかし立派な内外装から期待されるよりは非力で、従来型より200kg近く増した1470kgのボディが重い。そのうえ、リポーターのようなせっかちなドライバーの手にかかると、もともとエンジン回転数が上がりがちなCVTと組み合わされるので、キャビン内は少々うるさい。
もっとも、落ち着いてドライブすれば、CVTの変速プログラムはじゅうぶん吟味されたリニアな設定であることがわかる。100km/hの巡航に移れば、直4 5バルブユニットはわずか2000rpmで静かに回るだけだから、パワーソースにだけノイズの責を負わせるのは妥当ではない。
試乗後、本国アウディAGから来たプロダクトマーケティング担当のミヒャエル・レムケ氏にうかがった。
--どうしてCVTを採用したのですか?
「(先代で使われた)4段ATはよくなかったし、ZF社製5段ATはあまりに大きくて重かったんです。新しい5ATを開発するよりいい方法はないか、と探していました」
--CVTは、アウディ自製ですか?
「そうです。1995年から開発を始めました。『安くて』『経済的で』『機能的』なので採用しました」
マーケットの支持も、A4への搭載を後押しした。1999年からA6にCVTを搭載したところ、従来、AT比率は11%だったのに、22%以上のオーナーがCVTを選ぶようになったという。
もうひとつの新型A4の目玉、FFモデルのリアサスペンション独立化について聞いてみたところ、「従来のスイングビーム(半独立式)では、限界が見えていたので……」と歯切れが悪い。「メルセデスは、(1982年デビューの)190からマルチリンクを採用していましたしね」と、こちらの意地の悪い質問を先まわりする。
続いてレムケ氏は、(トラペゾイタルサスペンションは)ひどくコストがかかりますけど、と笑ってから、「スポーティだし、それにメルセデスやBMWと対抗していかなければいけませんから」と表情を引き締めた。
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俄然、歌い出す
翌日は、3リッターV6モデルに乗った。ノーマルより20mm車高が低い「3.0クワトロスポーツ」。タイヤも、215/55R16を履くノーマル「3.0q」と比較して、235/45R17となる。ダッシュボードを横切るアルミニウムパネルと3本スポークの革巻きステアリングホイールが「スポーツ」仕様である。
新開発3リッターV6の、最高出力は220ps/6300rpm、最大トルク30.6kgm/3200rpm。オールアルミ合金化により、ベースユニットたる2.8リッターV6より17kgも軽くなった。90度のバンク角をもち、ゆえにバランサーシャフトを備える。可変バルブタイミングと可変インテイクマニフォルドを搭載、2000-5000rpmにわたって、最大トルクの90%を発生する。
5段ATとのマッチングもよく、左ゲイトにシフターを動かせばシーケンシャルシフトが可能だ。ギアを変えるタイミングを変えた「S」モードが用意されるのも、2リッターモデルとの相違点である。
3.0クワトロスポーツはスムーズに速いけれど、トルセンデフを用いた4WDモデルのせいか、やや大味。ダンパー、スプリングをハードなモノに交換してコーナリングに備えるけれど、積極的に“曲がり”にいきたくなるタイプではない。
ところが、ノーマルのV6クワトロに乗り換えたところ、にわかにステアリングホイールを回すのが楽しくなった。コーナーでの適度なロールがわかりやすい。身のこなしが自然だ。スロットルを踏む足にも勢いが増して、5バルブユニットが、俄然、歌い出す。
ヨーロッパのような気候と道を求めて北海道で開かれたニューA4試乗会。天気にはいまひとつ恵まれなかったけれど、舗装のいい路面とアールの大きなカーブは、新しいアウディの基幹モデルによく合っていた。フラットな乗り心地がほころびを見せることはなかった。
小さいながら重厚なメルセデスベンツCクラス、エクサイティングなBMW3シリーズ。そうしたライバルに対し、A4は、神が宿る細部で勝負できるクルマだ。内外を問わずフィニッシュがよく、素材も選び抜かれている。オーナーは、シートに座るたびに心地よくキーをひねり、ステアリングホイールを握り続けるだろう。いや、座っているだけでウレシイかも。
(文=webCG青木禎之/写真=小河原認/2001年6月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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