アウディ A4【特集/大川悠】
IQ指数が高い-アウディA4の考察- 2002.01.01 試乗記 アウディ A4 2.0SEC(CVT) ……339.0万円 先代のA4に乗って、「まずいんじゃないか?」と思った『webCG』エグゼクティブディレクター。アウディが満を持して投入したニューモデルに乗って考えたこととは?5年前と同じ結論
最初のアウディA4、つまり1994年に発表されたモデルに乗った日のことは今でも忘れない。それはプライベートカーとして当時のメルセデスC200を買ったばかりで、それなりに満足していた頃だった。
夕方、会社でA4を受け取って帰路についた。途中から、「まずいんじゃないか?」という疑念が次第にわき上がってきた。どうしても納得できなくて、家に帰るなりメルセデスのキーをひっつかんで自分のクルマを走らせた。「やっぱりまずいわ、これは」僕は思わず独り言を発した。
つまり、A4はメルセデスより良かったのだ。そんなこと、予想もしていなかった。まず乗り心地がいい。Cよりもはるかにソフトで静かだ。1.8リッターユニットも、低速トルクは2リッターのCよりもある。A4というクルマを評価するようになったのは、かように個人的な損得勘定にかかっている。だから真実なのだ。
今回の新型はノーマルの4気筒だけ乗った。そして結論は約5年前と同じだった。「ある部分では現代のCクラスよりもいい」ということだ。
自己矛盾
僕はA6以降のアウディを見ると、いつも30年代初期のドイツ表現主義建築を思い出す。機能主義に徹しながらも、どこかで何かを訴えたいという感じがある。メルセデスにも機能主義を超えた何かがある。端的に言うならドイツ流の無骨な力だ。BMWにもある。スポーティ感覚重視だ。
アウディの場合はちょっと違って、「技術による前進」を以前は謳っていたが、今はすこし気取って技術の上に一種の知的感覚を出そうとしている。スタイリングでも冒険をしようとしている。それでもやはりどこかでピエヒ的に「走ってナンボ」という突っ張りが抜けないから、この軟派な気取りと、硬派の走りが混ざっている。
よく言えばそれがアウディを他のドイツ車と差別するブランドイメージだし、悪くいえば何となくそのイメージが日本に定着しにくい一種の自己矛盾だ。
新型A4も、いい意味での自己矛盾につきまとわれていた。「走り」と「仕上げ」の両立である。「動的性能」と「静的質感」への挑戦といってもいい。結果としては、両方とも狙った結果、それぞれが80%の仕上がりだった。そこがアウディらしいと個人的に思った。
ブランド神話の形成
ハードウェア評価はすでに何人かのリポートが掲載されている。僕もまったく同意見で、2.0に関していえば、唯一にして最大の弱点はエンジンのノイズ、主に吸気音と排気レゾナンスで、だから加速中はかなり気になる。それに登りでは、やはり重いボディを感じさせる。乗り心地は一般路上では相当にいいが、高速の大きなうねりでは多少のバウンシングを見せる。
それを除けば、まあ文句は付けられない。FWD(前輪駆動)を忘れさせるナチュラルなステアリングと、軽い鼻の動き、特に中高速コーナーを得意とする、いかにもドイツ的なハンドリング性能を見せる。そしてきちんと、整合性がとれていて、まさにバウハウスの巨匠、ミース・ファン・デル・ローエ先生(例の“神は細部に宿る”の言葉を生んだ)からハナマルをもらいそうな室内。やはりメルセデスやBMWとは微妙に違う。
基本的にはいいクルマである。特に傑出したものを見いだしにくいのが難点だが、それに乗っている限り、悪い人にも変わった人にも、妙なクルママニアにも思われない。「ものがわかっていて、クルマの理解力が高い人に見られる」。そういったクルマがアウディなのだ。こういうアウディに感じられるクルマIQ指数の高さが、やがてはブランド神話を形成していくのかもしれない。
(文=大川 悠/写真=小河原 認/2001年7月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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