アウディA4カブリオレ(CVT)【試乗記】
新しい赤いアウディ 2002.09.06 試乗記 アウディA4カブリオレ(CVT) ……610.0万円 2002年9月から、新世代のアウディ・カブリオレの販売が始まった。2.4リッターV6搭載、CVTと組み合わされるモデルである。避暑地で開催されたプレス試乗会に、webCG記者が参加した。ニューカブリオレ、598.0万円
アウディの赤いカブリオレを前に頭に浮かぶフレーズは、ちょっと古いけれど、「奥様の赤いアウディ」。1998年に設立されたアウディジャパン第一の課題は、かつてヤナセ時代に形成された「旦那様にはメルセデスベンツ、奥様には……」という販売政策上のイメージからの脱却だった、というのはちと言い過ぎか。
アウディは、いうまでもなく「フォルクスワーゲングループ」のプレミアムブランドである。全世界的に自動車メーカーの勢力争いが繰り広げられるなか、アウディはもはやメルセデスのセカンドカーとして見られることは許されない。フォーリングスは、スリーポインテッドスター、バイエルンのエンジンメーカー(BMW)と並び立つ存在でなければならないのだ。
……といった、グローバルに展開されるパワーゲームはともかく、2002年9月4日、アウディA4カブリオレのプレス試乗会が、長野県は軽井沢で開催された。日差しは強いけれど、風は涼やか。道を挟んで並ぶ木々の緑が目に優しい。高級オープンカーのお披露目には、もってこいの場所と気候である。
2枚ドア4シーターのA4カブリオレは、1991年のジュネーブショーでデビューした「アウディ・カブリオレ」以来のブランニューオープン。昨2001年のフランクフルトショーで登場した。本国では、3リッターV6モデルもラインナップされるが、日本に入るのは、2.4リッターV6のみ。「マルチトロニック」と呼ばれるシーケンシャルシフト用ゲートをもつCVTと組み合わされる。
ドイツ車らしい分厚い3層幌の開閉は、トンネルコンソールのボタンを押すだけ。約30秒で動作が終わる。車両本体価格は、メルセデス、BMWといったドイツ勢と、ボルボ、サーブのスウェーデン勢、それぞれのオープンモデルの中間に位置する、598.0万円である。
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ヒトに見せたい
「技術による前進(Vorsprung durch Technik)」に加えて、最近アウディが積極的に打ち出しているキーワードが「スポーティ」。実際、ルマン24時間レース3連覇をはじめ着実に実績をあげている。けれども、極東の島国においては強敵BMWの前にかすみがち。むしろ、「クリーンなエクステリア」「できのいいインテリア」といったデザイン面での高い評価が浸透しはじめたように思う。
避暑地の陽光に輝く新しいカブリオレにも、「ハッ」とするほどキレイなラインが使われる。ボディサイズは、全長×全幅×全高=4580×1780×1380mm。見まがうことない「A4」スタイルながら、フロントまわりをはじめ、専用のボディパネルが用いられる。Aピラーとフロントスクリーン上端のつや消しシルバーがステキだ。注意深いヒトなら、テイルランプが、サルーンと同じ印象を与えながら、より薄い台形になっていることに気がつくだろう。
「アムレットレッド」にペイントされたA4カブリオレに乗る。「アニエスイエロー」の柔らかいパールナッパレザーが、体によく馴染む。ポジションのほか、ランバーサポートとして、腰のあたりを電動で隆起させることも可能だ。細身で上品なウッドリムのステアリングホイール。よく吟味された黒い樹脂類。正確なパーツの取り付け。細部にまで神経が行き届いているのがよくわかる。可能な限り幌を下ろして、ヒトに見せたい室内だ。
webCG取材班、男3人を乗せて、赤いアウディがいく。オープンで。道に平行する清水のせせらぎが目に楽しく、軽い排気音が耳に心地よい。上下に短いフロントスクリーン、長いショルダーラインと、開放感は抜群だ。
停車中の観光バスの脇を徐行して通る際、観光客らしいオジサンが声を上げた。「オッ、いいクルマに乗ってるな!」。
車内の男3人、よろこぶ。外の世界との垣根がないのが、オープンカーの醍醐味である。
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年収1200万円から
A4カブリオレは、全体にスムーズなクルマである。ステアリングは滑らかで、FF(前輪駆動)を感じさせない自然なフィールは、アウディ車の大きな美点だ。前4リンク、後トラペゾイダル式の足まわりもいい。さらに、サルーンの「2.4SE」より150kg重い1740kgの車重(と3人乗車)が、落ち着いた乗り味に貢献しているはずだ。
5バルブの2.4リッターV6は、170ps/6000rpmの最高出力と、23.5kgm/3200rpmの最大トルクを発生する。2リッター直4の「A4 2.0」に乗ったときは、エンジン回転数が上がりがちな無段変速機(CVT)の特性が如実に出て、「無粋なノイズが上質感をスポイルしている」と感じたが、カブリオレでは、3500rpmを超えるあたりからよくチューンされたエグゾーストノートが高まって、いわば“演出”に昇華されている。一方、気になったのが、予想以上に飛び出し気味な発進時のマナー。後日、リゾート地ではなく、ストップ&ゴーの激しい都市部でチェックする必要があると思った。
終わりの見えない平成大不況のなか、伸び悩む輸入車市場にあって、フォーリングスは前年比155.6%と5割増の伸びをみせる。2002年度の予想販売台数は1万800台。97年以来の、悲願の1万台超だ。好調の要因に、アウディジャパンのヨハン・ダ・ネイスン代表取締役社長は「A4シリーズのラインナップ拡充」を挙げる。2001年6月、2リッター直4と3リッターV6で始まったA4サルーンは、1.8Tクワトロ、2.4SEはじめ、アバントことワゴンボディも導入され、A4ファミリーは実に192.4%の販売増を果たした。
しかしアウディの成績は、A4の高い商品力を反映しただけではない。先代A4では、欧州でのトップセラーぶりとはうらはらに、国内では不振にあえいだ苦い経験ある。その原因、「ディーラーのプレミアム度不足」を解消するため、アウディジャパンは2000年末に約240店との販売店契約を終了、アウディ専売店を中心とした販売網の再構築を始めた。現在79店舗になったディーラー網が、次第に力を発揮しはじめたわけだ。
ダ・ネイスン氏は、「店舗あたりの販売台数が5倍になりました」と胸を張り、「スタッフのブランドに対するロイヤリティ(忠誠度)が高まった」うえ、「お客様からのフィードバックが迅速になった」と笑顔を見せる。
−−BMWに対するアウディのアドバンテージは何ですか?
「BMWに乗るヒトは、アグレッシブな『Push、push』タイプです。アウディは、もっと洗練され、知的な要素をもっています」
ネイスン氏にハナシを聞く前に、アウディスタッフはA4カブリオレについてこんな説明をした。
「……メインターゲットは35歳から。年収は1200万円以上です」
「1200万円!」とオドロク会場の雰囲気を察してか、壇上のスタッフは「私の年収ではとうてい無理ですが」と自虐的に笑ったのち、「でも、ご夫婦で合わせてなら、そんなに無理な数字ではありません」と付け加えた。
なるほど。アウディの新しい世代のオープンモデルは、旦那と奥様といった主従関係ではなく、パートナーとしての夫婦のクルマでもあるわけだ。
(文=webCGアオキ/写真=高橋信宏/2002年9月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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