フォルクスワーゲン・ゴルフR32 3ドア(4WD/6MT)/5ドア(4WD/2ペダル6MT)【試乗記】
“ゴルフファナティック”のために 2006.02.21 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフR32 3ドア(4WD/6MT)/5ドア(4WD/2ペダル6MT) ……419.0万円/460.0万円 先代「ゴルフIV」で誕生した、「ラクシャリーとハイパワーの両立」を目指したハイパフォーマンスモデルが「ゴルフR32」。5代目に進化した現行モデルに加えられた、そのフラッグシップゴルフの走りをテストする。速いゴルフの理想型
「R32、どうなのよ?」と軽めに聞かれたら、きっぱりこう答える。これは「ゴルフ」を愛する人のためのクルマだ。それも、速いゴルフを求める人のひとつの理想形である、と。
今回で2代目となる「フォルクスワーゲン・ゴルフR32」。初代は2002年に登場したゴルフIVベースの限定車で、コンパクトなボディに搭載された狭角3.2リッターV6エンジンの動力を4輪で駆動する。新型は出力が9psアップの250ps/32.6kgmとなったが、「4MOTION」と呼ばれる、湿式クラッチのハルデックスカップリングを電子制御し駆動力を配分する、オンデマンド4WDの方式は変わらない。与えられた225/40R18という大径タイヤを履くアルミホイールの隙間からは、大きなブルーのブレーキキャリパーが覗く。なお、ノーマルよりも20mm下げられたという車高は、メーカープロダクションモデルとしてはかなり低い部類で、スノーチェーンは装着できないとのこと。このモデルは「スキーにも行ける4WDゴルフ」ではない、ピュアにスポーティなヤツなのである。
ボディタイプは3ドアと5ドアの2種類。前者に6段MT、後者にはDSGを搭載する。
エクステリアでひときわ目立つメッキ処理されたフロントグリルは、先に発表された「ジェッタ」とも微妙に異なる手の込みよう。それはクラシックなメッキグリルの現代解釈にも見えて、レトロフューチャーではない手法に妙に納得した。後方に目をやれば、バンパー下にはデュアルマフラー。フロントビューほどの迫力はないが、静かに、しかし力強く存在感をアピールする。
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徹底したスタビリティ
乗ってみた感想はDSGで決まり! である。普通なら自分は積極的にMTを選ぶほうであるが、街なかで便利なのはもちろん、スポーツドライビングを考えてもDSGを強く推したい。すでに「ゴルフGTI」などでもお墨付きを得ており、さらに個人的には、緻密なイメージのするR32には、先進的な操作感のDSGが似合っていると思うからだ。
その走りは痛快そのもの。スタビリティは非常に高いうえ、そのスピード領域がとんでもなく上のほうにある。これとまともにやり合ったら、かなりヒリヒリする領域へ踏み込まねばいけないことになる。
サーキットのように自由度が高く、キャパシティが広いステージでは刺激より安心を感じるだろう。ワインディングロードのような狭くてツイスティなステージにこのクルマを持ち込むならば、その見事なフロントグリップを基本に、狙ったラインを弱アンダーステアで抜けていくことで十分刺激的なのである。
その理由となっているのは、駆動配分状況などみじんも感じさせない4MOTIONの完成度と、ボディ剛性の高さにある。加えてステアリングホイールを中心とした操作系のクオリティと、そして84×94.9mmとロングストロークながら高回転型エンジンのように吹け上がる狭角エンジンの回転上昇感が、ぴたりとはまっているからである。
限界はすこぶる高く、多くのドライバーは「ついていけない」と思うかもしれない。しかしそうは思わずに、素直に「すごい!」と感嘆するのがいい。無茶をして走らなくても、存分に幸せを感じることができるだろう。
もうポルシェはいらない?
さらに感心したのはそのフラットライド感。街中ではハッキリと感じた足まわりの硬さが、速度が上がるにしたがってしなやかに調和してくる様子は、感動的ですらあった。まるで乗り味重視の「ゴルフGT」で、心地よく走ったときのようなしなやかなロール感が、とんでもないスピードレンジで達成されるのだ。
生粋のチューニングカー的な軽量作戦を施した「ホンダ・インテグラ タイプR」などとは違い、徹底したスタビリティで自らをアピールしてくるR32。
アルファ147GTAがピッコロ・フェラーリであれば、こいつは小さなポルシェ? いいや、アルファがフェラーリを延長線上に夢見るのだとしたら、ポルシェとR32の関係はまた大きく違う。「ここまでやられたら、もうポルシェいらないでしょ」といわれてもおかしくないぐらいのできばえなのだ。
嬉しいことに今回からR32はカタログモデルとなった。価格も性能を考えれば破格で、3ドアが419.0万円、5ドアが439.0万円となっている。
ただ、それほどゴルフが欲しいわけでもない人が、値段も手頃だとか、ゴルフのトップモデルだからと、ヤワな動機でR32に手を出すことはやめたほうがいい。ヤケドこそしないものの、街乗りばかりだとその乗り心地で舌を噛むことになってしまうだろう。これはゴルフファナティックのためのマシンなのだ。
(文=山田弘樹/写真=河野敦樹/2006年2月)

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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