アウディA6 3.2FSIクワトロ&4.2クワトロ(6AT/6AT)【海外試乗記】
A7になったA6 2004.04.22 試乗記 アウディA6 3.2FSIクワトロ&4.2クワトロ(6AT/6AT) プレミアム性を強調したクルマづくりをすすめるアウディ。アグレッシブなグリルが人目をひくニュー「A6」はどうなのか?自動車ジャーナリストの河村康彦が、イタリアはミラノで乗った!明らかに大きい
アウディの新型「A6」がヨーロッパの道を走り始めた。ニューA6の国際試乗会が開催されたのは、ブランド品信仰者なら誰もが狂喜乱舞をしたくなる(?)ミラノの街。流行ファッションの発信地のひとつであるこの都市をアウディが選んだのは、やはり自らのプレミアム性の高さをアピールしたいがゆえ、と解釈すべきだろう。そういえばこのところアウディの国際イベントは、本国ドイツよりもアルプスを越えたイタリアで開催されることの方が圧倒的に多いような気がする……。
お披露目となった2004年ジュネーブショーの会場で目にしたときにも「大きいナ」と思った新しいA6。それは、まだ4月になったばかりというのに、すでに初夏を思わせる眩いイタリアの陽の下でも、やはり同様に感じられた。
それもそのはず、何しろ今度のA6の全長は、4900mmをオーバー。全幅も1800mmを大きく超える。サイズとしてはむしろ“A7”と表現をした方がよいポジションにまで成長しているのだ。従来型に比べて80mm以上も延長されたホイールベースを含め、新しいA6がここまで大きくなったのは、ライバルと目される「メルセデスベンツEクラス」や「BMW5シリーズ」の「次のモデルチェンジ」までを視野に入れたからだろう。ちなみに現行モデル同士の比較でいうと、全長でEクラス比10cm以上、5シリーズ比でも6cm以上と、新型A6の方が明らかに大きい。しかしここまでくると、今度はパーソナルカーとしての日常的な使い勝手のほどが、ちょっと心配にもなってくる……。
A6のデザイン
新型A6を前に誰もが目を奪われるのが、アウディが「シングルフレームグリル」と呼ぶ、何とも大胆な、大型のメッキ縁どりつき逆台形フロントグリル。実はこれには“兆し”があった。このところのアウディ車が好んで使ってきた、フロントバンパーを上下に挟んだカタチのツイングリルがそれだ。つまり、新しいグリルは、その上下をつなげて一体化したものがモチーフ。ぼくは抵抗なく気に入ることができたが、他のジャーナリストやプレスからはネガティブな意見も出ていたから、いままで以上に好みが分かれるデザインであることは間違いない。
一方のリアビューは、そんなフロントに比べると随分とオーソドックス。見方によってはちょっと「弱く」思えるくらいで、これまた好みが分かれそうなポイントだ。そんな新型が、たとえシルエットだけでも「A6だ!」と即座に識別できるのは、相変らずサイドビューが4ドアクーペ調だから。つまり、アーチ型ルーフラインをメインに据えたプロポーションの持ち主だからだ。ちなみに、新型A6のCd値は0.28と優秀。サイズの大型化で前面投影面積が拡大しているはずだが、にもかかわらず、両者をかけ合わせた絶対抵抗値そのものも「減少している」というのが担当デザイナー氏(和田智シニアデザイナー)のジマンのひとつだ。
アウディ車らしく各部で高いクオリティを示し、大人4人にゆとりのスペースを提供してくれる、ニューA6のインテリアデザイン。従来型を凌ぐスポーティさをアピールする。メータークラスターと一体化されたセンターパネル部は、ドライバー側へと軽く捻られたレイアウト。優れた操作性を先行採用の「A8」で確認済みの「MMI」(マルチメディアインターフェイス)用のモニターが、随分と高い位置に置かれている。視線移動をすくなくする配慮が、いかにも最新設計のモデルらしい。
V6とV8のドライブフィール
直噴ヘッド採用の新開発3.2リッターV6エンジン(255ps/6500rpm、33.7kgm/3250rpm)と得意の4WD「クワトロ」との組み合わせで乗ってみると、その動力性能は「どのようなシーンでもとりあえずは満足レベル」。6段ATがエンジン出力をきめ細かく引き出してくれるので、フラットトルクな印象を受けるこのエンジン。しかし仔細にチェックしてみると、その実、3000rpmから上で一段と活力を漲らせることに気がついた。
一方、最高出力で80psのゆとりを備えるV8エンジン(335ps/6600rpm、42.8kgm/3500rpm)を搭載したモデルは、さすがに動き全般の余裕が大きく増す。「S4」譲りの心臓は、ちょっとアメリカン(?)。アッパーミドルサルーンらしからぬ大ボリュームで耳に届くV8サウンドが、なかなかスポーティ。ただし、テスト車が履いていたオプション設定の18インチシューズは、50km/h付近までの低速でハーシュがきつく、「ちょっとやり過ぎ……」の感がある。
こちらに比べると、17インチシューズを履いた3.2リッターのクワトロは、ばね下の動きがグンと軽くなってより好印象だ。今回は本格的なワインディングルートを試す機会はなかったが、高速走行時の信頼感を大きくアップさせる「微舵効き」の正確性の高さは褒めてやりたい。
とそんなわけで、やはりトヨタの「クラウン」や「セルシオ」などに代表される、日本のセダンたちとは異なった価値観でのクルマづくりを感じることができるのが、A6というモデル。日本には、2004年の9月を目処に、今回紹介した2タイプのクワトロモデルを中心とした導入が予想される。
(文=河村康彦/写真=アウディジャパン/2004年4月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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