フォード・フォーカス 1.6(FF/4AT)【試乗記】
エンジン控えめでも“走快”なキレ味 2006.01.14 試乗記 フォード・フォーカス 1.6(FF/4AT) ……220万円 マイナーチェンジを受け大きくなった2代目「フォード・フォーカス」。遅れて導入された1.6リッターモデルに試乗。エントリーモデルの乗り心地は。 ![]() |
価格差は50万円
2005年8月5日に発表された新型フォーカス。ラインアップは、2リッターエンジン搭載のフォーカス 2.0と1.6リッターのフォーカス 1.6の2種類で、いたってシンプルな車種構成である。このうちフォーカス 2.0は発表と同時に販売が開始されたが、これに遅れること4か月、ようやくフォーカス 1.6の販売がスタートした。
価格は、2.0の270万円に対して、1.6は50万円安い220万円。この価格差は、当然搭載されるエンジンと装備の違いということになる。1.6になくて2.0にあるのは、オートランプシステム、本革巻ステアリング、アルミホイール、フロントフォグランプ、フルオートエアコン、自動防眩ルームミラー、運転席パワーシートなど(安全装備に差をつけないのはヨーロッパメーカーの良心だ)。そのうち装着されなくて残念なのは本革巻ステアリングくらい……と考えると、フォーカス 1.6はとてもお手頃なモデルに思えてくる。
エンジンは必要にして十分
あとは1.6リッターエンジンの実力次第ということになる。最高出力100ps/6000rpm、最大トルク15.3kgm/4000rpmの直列4気筒DOHCエンジンには、シーケンシャルシフトが可能な4段オートマチックが組み合わされているが、最大のライバルである「VWゴルフ」の1.6リッターモデルが、116ps/15.8kgmのエンジンと6段ATの組み合わせであることを考えると多少見劣りするのは確かで、実際に運転してみても、スペックの差がそのまま表れている印象だ。
フォーカス 1.6のエンジンは、いまどきのクルマとしてはアイドリング時のノイズ、振動が大きめで、ブレーキペダルからアクセルペダルに軽く足を載せ換えると、もたつくことこそないが、発進の力強さは感じられない。それでも、ふだんよりやや大きめにアクセルペダルを踏んでいれば、十分に流れに乗せる運転は可能である。加速したいときは、躊躇せず右足にグッと力をこめればいい。キックダウンしてエンジン回転を4000rpm以上に保てば、エンジンは盛り上がりを見せ、街中でも高速でも必要な加速が得られるからだ。エンジン音はそれなりに大きいが……。
それよりも気になったのが街中でのロードノイズ。よく使う一般道で、「ここの舗装、こんなに荒れてるの?」と思うほどキャビンは騒々しかったのだ。
一方、ワインディングロードでは、フォーカスのキレ味の良さが光る。エンジンが非力なので上り坂ではフラストレーションが溜まるが、上りから下りに転じると、まさに水を得た魚のように生き生きと走るのである。195/65R15のタイヤと快適性重視のサスペンションを持つ1.6でも、コーナーではステアリング操作に応じて面白いように向きを変えるし、安定感も極めて高い。
高速でも上下動を上手く抑えたフラットな乗り心地と、直進性の高さが魅力で、100km/h巡航ならエンジン音もロードノイズもさほど気にならないレベルである。乗り心地も硬めではあるが、十分快適だ。
大きなボディは“両刃の剣”
というわけで、50万円安の1.6でも及第点をあげられそうだ。意外にパワーを必要とする都心部の道路よりも、流れの速い郊外の道や高速道路のほうが、私はお似合いだと思う。
走行性能以外は、2.0とほとんど変わらないが、それにしても室内の広さは新型フォーカスの魅力であることは確かだ。後席のレッグルームが広く、また、横方向の余裕も十分すぎるほど。ただ、その代償として、全幅が1840mmに達するのは正直ツライ。デザインの妙で、実際のサイズほど大きく見えないのはいいが、運転してみたら「あれっ」と驚く人は多いかもしれない。特に狭い都内に乗り入れる機会の多い人は要注意。それさえ気にならなければ、お奨めできるのが、フォーカス 1.6である。
(文=生方聡/写真=清水健太/2006年1月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。