ポルシェ・911カレラ4S(5AT)【試乗記】
アシにするより、ルックス重視 2006.01.12 試乗記 ポルシェ・911カレラ4S(5AT) ……1591万5000円 997型ポルシェ911に、四駆モデルの「カレラ4」が追加された。その高性能版たる「カレラ4S」に、外気温がマイナスとなり路面が一部凍りついた箱根で乗った。少数派だが、ポルシェの面目躍如
「カレラ4S」はSの文字が示すように、標準のカレラ4に比べ一段と高性能なモデルだ。3.6リッターの排気量は3.8リッターと大きくなり、タイヤは前が235/40ZR18から235/35ZR19に、後ろは295/35ZR18から305/30ZR19と太くなり、1センチ低い車高などで区別される。発表されている性能は、カレラ4の最高速度は280km/hに対し、4Sは288km/hに達する。
もちろん4の文字が示すように4WDであるが、フルタイム4WDのセンターデフはVCUヴィスカスカプリングによる。世の趨勢は電子制御に傾き、なぜかパートタイムで済ませようとしていて、今やVCUは少数派でもある。が、使い方によっては超高速高性能四駆にこそ最適という見本であり、ここにも本質をわきまえたポルシェの面目躍如たる技術力をみることができる。
3.8リッターの排気量は伝統のフラット6史上で最大のものであるが、ボアもストロークも両方最大の組み合わせとなる。これはシリンダーの壁が薄く、コンロッドも短いゆえにシリーズ中では音や振動の面では一番不利な組み合わせで、「ヴァルーン」というようなのどかな音を発して回る。しかしさすがにトルクは強大なものがあるし、直列6気筒よりはクランクが短いこともあって、7000rpmの高回転域まで綺麗に回り切る。
4WDの恩恵
この日の箱根は外気温度マイナス1度とあって、路面は一部凍結していたが、4WDはそれをほとんど感じさせない。回転数感応型のVCUは明確なスリップなどさせなくとも、路面のうねりや左右輪の回転差など、接地面積の長さの変化で生じる少しの回転差でもトルクのやり取りが行われ、スムーズな駆動バランスのうちにも接地性を有効に助けている。この日はほかにも高性能なFR車が同行していたのだが、そのモデルは時折前輪がスリップするようなこともあった。やはり4WDの恩恵は偉大なものがある。
しかしポルシェとてすべてが理想的にできているわけではなく、気になった特性もある。それはバンプステアが大きいことだ。タイヤトレッド以下と思われるサスペンションアームの短さはいかんともしがたく、うねった路面を斜めに通過するような時にその動きは顕著にでる。
始末に悪いバンプステア
キックバック自体は操舵感としてスポーツカーには付き物のような諦めもあるが、911はゼロスクラブを採ることにより消し去っている。バンプステアはタイヤが左右の位相差をもって上下動するたびに、ステアリングが転舵されてしまうから始末に悪い。まるで用もないのにソーイングさせられてしまう感覚は、自分の運転が下手になってしまったようにも感じる。さらに、一定舵角でコーナーを抜けようと舵角を固定していると、今度は強烈なGとなって横に飛ばされるから余計シビアなことになる。よって舵角で逃げたほうがまだマシだ。
またティプトロニックは、相変わらず左足ブレーキに対してエンジンストールを起こすので、必ずスロットルペダルを離してからブレーキを踏む必要がある。若干リカバリーが早くなったものの、根本的な解決は見送られている。ティプトロは、ポルシェにとっては今もって素人向けとして認識されていることの現れだろうか。
以上の感想から所見を述べるならば、911の4WDを日常のアシとする人には4Sではなく、細いタイヤと3.6リッターエンジンのカレラ4、そして6MTをお勧めする。ただ、ルックスを重視するなら4Sということになろうか。
(文=笹目二朗/写真=高橋信宏/2006年1月)

笹目 二朗
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