マセラティ・グランスポーツ(2ペダル6MT)【短評(前編)】
単純な言葉では語れない(前編) 2005.11.10 試乗記 マセラティ・グランスポーツ(2ペダル6MT) ……1396万5000円 ブランドイメージがわかりにくいマセラティだが、なぜか惹かれるものがある。「マセラティ・クーペ」をスポーティにモディファイした「マセラティ・グランスポーツ」に試乗して、わかった事とは。第一印象とのギャップ
マセラティは、わからない。「フェラーリ」や「アルファ・ロメオ」や「フィアット」に比べて、ブランドイメージがいまひとつはっきりしない。そんなふうに思っている人は、けっこう多いんじゃないだろうか。
わかりにくいからこそ、1914年の会社設立からいままで、何度も経営者が代わってきたともいえる。フィアット・グループに入ってからも、当初はグループ内の1ブランドであったのが、まもなくフェラーリの管理下に置かれ、これで安泰かと思いきや、最近になって今度はアルファとコンビを組むようになった。当のイタリア人も、このブランドを今後どこへ進ませればいいか、迷っているのかもしれない。
でもそんなマセラティに、なぜか惹かれてしまう。
ふだんはおとなしい人が会議で激論を戦わせたり、天真爛漫な人が冷静にものごとを考えたり。たとえば人間でも、第一印象とは違う一面を知ることで、その人の魅力がさらに広がり、引き込まれていく、ということがある。どこへ行っても同じ顔を見せるのではなく、シチュエーションに合わせて微妙に表情を変えていく。マセラティに惹かれるのは、そんなところが理由じゃないかと、なんとなく思うようになってきた。
今回のパートナーはグランスポーツ。簡単にいってしまえば、ヨーロッパで行われているワンメイクレース用マシン「マセラティ・トロフェオ」のロードゴーイングバージョンだ。グランスポーツの名は、50年代に少量生産された「A6-2000」の高性能版にも使われていた。クアトロポルテと同じように、由緒あるネーミングだ。
4.2リッターV型8気筒エンジンは、最高出力がベースのマセラティ・クーペ+10psの400ps、最大トルクが+1?mの46?mにアップした。シャシーはハードにセットアップされ、車高は10?ダウン。ホイール/タイヤは18インチから19インチにサイズアップされている。
先鋭的技術と古典的装飾
ロードゴーイングレーサーといっても、エクステリアはフェラーリやポルシェなどとはまったく別の線上にある。空力性能の向上という機能を最優先しながら、派手でも冷徹でもない。フロント/リアのグリルをメッシュとするなど、クラシカルなディテールを取り入れているおかげだろう。先鋭的技術と古典的装飾という、相反する要素がここではたくみに融合し、新たな魅力を生み出している。
フル4シーターのスペースを備えるキャビンもまた、いま風のクールさを持ちつつ、佳き時代のあたたかさが漂う。航空業界向けに開発された素材というテクニカルクロスの、渋さを含んだ光沢のおかげだろう。そこにレザーとカーボンファイバーを組み合わせて、大胆なのに軽薄ではない、むしろ重厚な空間を作り出している。
シートはテクニカルクロスとレザーのコンビ。座り心地は硬めだが、あつらえたように自分の体格にフィットし、とりわけ肩のあたりのホールド感が心地よい。そのシートにからだをあずけ、グランスポーツの文字が刻まれたメーターを目の前にして、左右のパドルを両手で同時に引いてニュートラルを出し、エンジンスタート。今度は右手だけを動かして発進する。(後編につづく)
(文=森口将之/写真=峰昌宏/2005年11月)
・マセラティ・グランスポーツ(2ペダル6MT)【短評(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017433.html

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。




