アウディ・オールロードクワトロ 2.7T SV(5AT)【ブリーフテスト】
アウディ・オールロードクワトロ 2.7T SV(5AT) 2003.11.29 試乗記 ……622.0万円 総合評価……★★★★★ 「すべての道」を車名にした、アウディのスペシャルモデル「オールロードクワトロ」。自動車ジャーナリストの笹目二朗は、いたく感心したのであった。 |
一番アウディらしい
「オールロード」の名の通り、どんな道でも走れるような自信を感じさせてくれる。岩石や丸太渡りといった荒技には向かないが、条件によっては、それも可能だ。ワイルドなシチュエーションには向かないスタイリングだから、本格的なSUVっぽくはないが、実力は相当に高いのではないだろうか。
ルックスの迫力からは、最近の大型高級SUVに差をつけられ、タダのステーションワゴンとSUVの中間車種に見られてしまうかもしれない。しかし、現実的には、オンロード性能を発揮する機会の方が圧倒的に多いことは、いうまでもない。
ところで、アウディはハード面の技術指向が強い会社である。他社に先駆けて導入したクワトロ(=4WD)やアルミボディは、試行錯誤の時代を経て、いまや洗練の域に達した。長い年月が培った“微妙な設定”が活きて、ドライブフィールは自然でスムーズ。メカの存在感は薄いが、それこそ“本当の技術”が成しうることだと思う。
こうした技術的な特徴は、目に見えず地味なだけに、声高な宣伝に負けてしまう脆さもある。しかし、最近のアウディのデザイン偏重は、かえって自動車メーカーとしての存在を弱めているのではないかと思う。そう考えると、適当な野趣を感じさせるオールロードクワトロは、現在のアウディラインナップのなかで、一番アウディらしいアウディかもしれない。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
オールロードクワトロは、「A6アバント」をベースにつくられたクロスオーバーモデル。デビューは2000年3月、日本には01年2月から導入された。
専用の前後バンパー、ステンレス製エンジンアンダーガード、オーバーフェンダーなどで、外観をSUV風に演出。エンジンはV6DOHC30バルブ2.7リッターのインタークーラー付ツインターボを搭載する。トランスミッションは5段ティプトロニックATのみ。駆動方式はもちろん、トルセン式センターデフをもつ「クワトロ」こと4WDだ。
サスペンションは、フロントが4リンク、リアはダブルウィッシュボーン式。形式はA6アバントと同じだが、オールロードクワトロは、4段階に車高調節できる「4レベルエアサスペンション」を装備する。自動または手動により、142〜208mmの範囲内で最低地上高を変えることができる。
(グレード概要)
「2.7T SV」(599.0万円)は、2002年に追加されたベーシックグレード。上級「2.7T」(690.0万円)に装着される本革シート、シートヒーター、ボーズ製オーディオ、ウッドパネル、アルミモール、全方位型ソナーのAPS(アコースティックパーキングシステム)などが省かれる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ベースの「A6アバント」に較べ、高性能SUVらしい特別な待遇は与えられていない。これを物足りないとするか、むしろ好ましいとするかは、意見が分かれるところだ。つくりは最近のアウディのレベルに洩れず、精緻で上質。メーター類も大きく見やすい。ウッドパネルやメッキの光り物がなく、シンプルで好ましい。オールロードクワトロに乗ると、それらがなくとも、高級感の演出に支障ないことがわかる。
(前席)……★★★★★
シートアジャスト、ステアリングとも調整代が広い。ランバーサポートは上下動まであり、ドライバーの体型や好みに幅広く対応する。前方の眺め(ボンネットの見え具合)も含め、ほとんどの人にジャストフィットするはずだ。レザーのシート生地は、シボ穴付きの通気性に優れたもの。表面は滑りにくいスウェード調と、気が利いている。居住空間は、頭まわりも横方向もたっぷり。
(後席)……★★★★★
広々として開放的。全長4810mm、ホイールベース2760mmのボディサイズは伊達じゃない。ルーフは高く居住空間は充分。フロアが低いので、乗っていて安心感がある。座面もたっぷりしているし、シートバックは寝すぎていないから、座り心地は良好だ。乗降時に敷居の高さはやや気になるが、側面衝突やボディ剛性のことを考えると心強い。熱線吸収ガラスによる暗さは、少々やりすぎ。
(荷室)……★★★★
フロアはフラットで、ボディサイズが大きいから充分な広さをもつ。サスペンションの室内への張り出しもすくない。ステーションワゴンとしての使いやすさでは、何の不満も見当たらない。たとえば、大型犬2頭も運べるだろう。バックウィンドウの微妙な傾斜角は、難易度の高い処理が要求されるが、オールロードのそれは「スタイリング」と「実用性」を両立させた好例だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
2.7リッターツインターボは実にパワフル。パワーの出方も洗練されており、運転していて気持ちがいい。トルクが際限なく溢れ出すかのような、息の長い加速を約束する。ボディサイズのわりに小排気量なことも、知的な印象を強める。
シーケンシャルモードを備えるATは多いが、ティプトロニック5段ATは実績があるうえ、改良を重ねてきた完成度の高さが感じられる。レバー操作が一番馴染んだ機構ゆえ、シンプルなことによる安心感もある。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
「フラットで快適」の一言に尽きる。鷹揚でゆったりした感覚がこの車の美点だ。包容力の大きさというか、すべてを包み込む大きな手で路面をグリップする感じ。チマチマした小業を弄する気持ちが起こらない。今となっては、手足で操作する部分の操作力がやや重いこともその印象を強め、信頼感や安定感の高さはちょっと比類がない。センターパネルのスイッチでクリアランスを4段階に調節できるのは、オールロードクワトロならではの機構。やや時間を要するが、段差や傾斜のキツい地下駐車場などで便利だ。
(写真=清水健太)
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【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2003年8月12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:4608km
タイヤ:(前)225/55R17 97W(後)同じ(いずれもピレリ P6 allroad)
オプション装備:キセノンヘッドランプ(10.0万円)/アルカンタラ&本革仕様シート(13.0万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(3):山岳路(4)
テスト距離:264.8km
使用燃料:47.6リッター
参考燃費:5.6km/リッター

笹目 二朗
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