三菱アウトランダーG 5人乗り(4WD/CVT)/G 7人乗り(4WD/CVT)【短評(後編)】
“振れ過ぎ”は許されない(後編) 2005.10.27 試乗記 三菱アウトランダーG 5人乗り(4WD/CVT)/G 7人乗り(4WD/CVT) ……266万7000円/306万6000円 「アウトランダー」に用いられるプラットフォーム、エンジン、トランスミッションはすべて新開発。「走りを語りたくなる」というその走行性能はいかに?アメリカ市場を睨んで
ところで、そんな“SUV離れ”を狙ったというアウトランダーのインテリアの中で、一点だけそのセオリーに反した部分が見い出せる。ATセレクターの手前にレイアウトをされた、大きめの円形ダイヤルがそれだ。
「ドライブモードセレクター」と大そう(?)な名前が与えられたものの、要はこれは4WDか2(F)WDかを選択するスイッチ。電子制御の多板クラッチ式トランスファーを持つこのモデルの場合、実際には「4WDモード」で用いてもセンターデフ機能のために不都合は生じない。後輪への伝達トルクを4WDモード時の約1.5倍に高めるという「ロックモード」を用いてさえも、タイトコーナーブレーキング現象は回避されるので、事実上はフルタイム4WDとして使える理屈なのである。
にもかかわらずこうしたダイヤルを敢えて目立つ形で残したのは、いまだに「SUVなら2駆に切り替えられて当然」という意識のが強いアメリカ市場を睨んだものと推測がつく。どこを取っても「まずはアメリカでヒットをしてくれないと困る」というのが、アウトランダーなのだ。
拡大
|
拡大
|
アメリカ向けは6気筒
ダイムラークライスラーと三菱、そしてヒュンダイという3者によるの合意の下に、ボアピッチやバルブ挟み角といった基本重要スペックが決定され、2002年にそれぞれの均等出資でアメリカに設立されたGEA(グローバルエンジンアライアンス)が開発をした基本図面を元に、「吸排気系などには三菱オリジナルの技術を採用した」という生い立ちを持つのがこのクルマに積まれる新開発の4気筒エンジン。「徹底した小型軽量化を実現」というこの心臓がやはり新開発というCVTを介して生み出す動力性能のほどは、これも率直なところ「2.4リッターユニットとしてはごく平均的な印象」というものだった。
確かに、ひとり乗りでチェックをする限り、そのパワー感に不満はないし静粛性もまずまずだ。が、そうは言っても1.6トン級の重量に対して「ゆとり溢れる」という感覚ではないのもまた事実。これだとアメリカ市場ではちょっと力感に欠けるといわれるかな……と思ったら、彼の地に向けては「より排気量の大きい6気筒モデルも検討中」という。
感心したのはCVTの機能の一部である、6段マニュアルモードの使い勝手。“回らないパドル”はいかにも扱いやすいし、コラム右側のアップコマンド側のパドルを2秒以上引き続けるとマニュアルモードからDレンジに復帰するというロジックも使いやすい。そもそも“無段変速”が売り物のCVTにわざわざステップを設けるのは本末転倒の気もするが、ちょっとしたエンジンブレーキ力が欲しい時はもとより、走りのシーンによっては走行速度とエンジン回転数がリンクをしてくれたほうが心地良いという場合も確かにあるだろう。
|
小回りに長けている
フットワークのテイストも、やはりさほど特徴のあるものとは感じられなかった。ハンドリングの自在度やスタビリティ、そして乗り心地に至るまでいずれも「ソツなくこなしている」という感触。特筆に値するような、キラリと光るポイントがあるというわけではない。「SUVの概念を塗り替える……」といいつつも、オールシーズンタイヤを履く事もあってか、微舵の効きが甘いのはやはりSUVらしい(?)部分でもある。ただし、ひとたび舵が効き始めるとそこから先のステアリング操作に対する応答性は比較的シャープな印象。走りの自在度という点では小回り性が想像以上に長けているのは嬉しいポイントだ。
というわけで、全般には見た目上でも走りのテイストでももう少し個性を演じてもよかったのではないかと思う。しかし一方で、このクルマが生まれてきた背景を考えれば「そうはいっても“振れ過ぎ”は禁物なのだろうナ」と、そんな同情が妙にできてしまうアウトランダーなのである。
(文=河村康彦/写真=高橋信宏/2005年10月)
・三菱アウトランダーG 5人乗り(4WD/CVT)/G 7人乗り(4WD/CVT)【短評(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017391.html

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
モト・グッツィV7スポルト(6MT)【レビュー】 2026.3.18 イタリアの名門、モト・グッツィのマシンのなかでも、特に歴史を感じさせるのがロードスポーツの「V7」だ。ファンに支持される味わい深さはそのままに、よりスポーティーにも楽しめるようになった最新型の実力を、上級グレード「V7スポルト」に試乗して確かめた。
-
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)/RAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】 2026.3.17 「トヨタRAV4」が6代目へと進化。パワートレインやシャシーの進化を図ったほか、新たな開発環境を採用してクルマづくりのあり方から変えようとした意欲作である。ハイブリッドの「Z」と「アドベンチャー」を試す。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】 2026.3.14 英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。
-
プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ(FWD)【試乗記】 2026.3.11 「プジョー3008」の電気自動車版、その名も「E-3008」が日本に上陸。新しいプラットフォームに未来感あふれるボディーをかぶせた意欲作だが、その乗り味はこれまでのプジョーとは明らかに違う。ステランティスのような大所帯で個性を発揮するのは大変だ。
-
ジープ・アベンジャー アップランド4xeハイブリッド スタイルパック装着車(4WD/6AT)【試乗記】 2026.3.10 「ジープ・アベンジャー」のラインナップに、待望の「4xeハイブリッド」が登場。既存の電気自動車バージョンから、パワートレインもリアの足まわりも置き換えられたハイブリッド四駆の新顔は、悪路でもジープの名に恥じないタフネスを披露してくれた。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――マツダ・ロードスターSレザーパッケージVセレクション編
2026.3.19webCG Moviesトヨタで「86」や「スープラ」といったスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんが、日本を代表するスポーツカーのひとつである「マツダ・ロードスター」に試乗し、クルマづくりについて語ります。 -
NEW
ホンダがまさかの巨額赤字に転落 米国生産車の日本導入への影響は?
2026.3.19デイリーコラム本田技研工業の「Honda 0サルーン」を含む、電気自動車3車種の開発・販売中止に関連する巨額赤字転落という衝撃的なトピックに埋もれてしまった感のある米国生産車2モデルの日本導入計画。その導入予定車両の特徴と、同計画の今後を分析する。 -
NEW
ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン(4WD/8AT)
2026.3.19JAIA輸入車試乗会2026今も昔もジープブランドの支柱となっている「ラングラー」。悪路にフォーカスし、舗装路では手ごわい挙動を示す一台だが、偏屈なリポーターは「これこそ自動車の本質である!」と強弁するのだった。JAIA輸入車試乗会より、孤高の一台の走りを報告する。 -
NEW
第953回:「黄金のGT-R」と宅配便ドライバーになりかけた話
2026.3.19マッキナ あらモーダ!イタリア在住のコラムニスト、大矢アキオが1年ぶりに日本を訪問。久々の東京に感じた世相の変化とは? 廃止されたKK線に、街を駆けるクルマの様相、百貨店のイベント。さまざまな景色を通じて、「中からは気づけないこの国の変化」をつづる。 -
NEW
ホンダN-ONE e:L(後編)
2026.3.19あの多田哲哉の自動車放談ホンダらしい軽EVと、ちまたで評判の「N-ONE e:」。初めてステアリングを握った元トヨタの多田哲哉さんが、その良かった点と気になった点について、エンジニアの視点で熱く語る。 -
ホンダの「スーパーONE」はどんなカスタマーに向けたBEVなのか?
2026.3.18デイリーコラムホンダが2026年に発売を予定している「スーパーONE」は「N-ONE e:」をベースとした小型電気自動車だ。ブリスターフェンダーなどの専用装備でいかにも走りがよさそうな雰囲気が演出されているが、果たしてどんなカスタマーに向けた商品なのだろうか。
































