レクサスGS350/GS430【試乗記】
強いオーラを放ってこそ 2005.07.22 試乗記 レクサスGS350/GS430 「トヨタ・アリスト」の後継たるスポーティサルーン「レクサスGS」の試乗会に参加。国内展開第一弾となるレクサス車の印象はいかに?落ちつきか、保守的か?
日本では「トヨタ・アリスト」、欧米では「レクサスGS」と名前を換えユーザーに親しまれていた。海の向こうで一足先にモデルチェンジを果たし、上々の評価を得ている新型が、ついにレクサスブランドとして日本国内に展開されることになった。今回試乗したのは日本市場で用意される、4.3と3.5リッターの2モデルだ。
そのスタイリングはアリストからの流れをほのかに感じさせるものの、より骨格の力強さを感じさせ、またその一方で、滑らかな曲面やその交錯具合が、繊細というか優美な印象を醸し出してもいる。このあたりはISで感じたのと同じ印象だ。ルーフとリアデッキを強く傾斜させたリアウィンドウで繋ぐキャビン形状程度しかディテールの共通性は無いのに、特にリアビューは明らかに同じ“レクサス”の血筋にあることを意識させる。
練り込まれた操作系、高いクオリティなどインテリアのできも期待に違わない。広さも後席含め充分以上だ。ただ、マテリアルの選択や使い方は、落ちついてはいるが保守的とも言える。せっかくのニューモデル、もっと新しい提案があってもよい気がするのだが。
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上々のスタビリティ
最初に乗ったのはGS430。セルシオ譲りのV型8気筒4.3リッターユニットを搭載する上位グレードだ。メカニズムの面では、VGRSと呼ばれるギアレシオ可変式ステアリングを組み合わせた車両姿勢制御装置VDIMや電動可変式スタビライザーなど、ふんだんに盛り込まれたシャシー制御が、その目玉と言える。
相変わらず心地よく回るV型8気筒ユニットは、あくまでジェントルに、されど堂々たる動力性能をもたらす。240km/hを過ぎても加速がまったく衰えないのだから恐れ入る。しかもそんな領域でも車内は静粛そのもの。風切り音の類いが小さいのはもちろん、245/40R18のランフラットというタイヤのわりに、ロードノイズも気にならない。
そんな領域でのスタビリティも上々だ。ステアリングの座りが今ひとつだし、路面のうねりではボディの上下動が大きめで、時に明確な突き上げを許すのも気になったが、直進性自体は乱されることはなかった。また、目を見張ったのは高速レーンチェンジでのレスポンスと安定感。一連のシャシー制御が効果を発揮している。
GS350に乗り換えると、エンジンはあるいはこちらの方がパワフルなのでは?と感じた。トルクのツキが抜群で吹け上がりも豪快。とてもスポーティな味付けだ。
一方、ハンドリングはいろいろな制御が入らない分、舵の効きがより素直に感じられる。さすがにハンドリングコースではややボディの重さを感じさせるし、もっとリアのスタビリティ感を伝えてほしいとは思うが、挙動変化自体はマイルドで扱いやすい。
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希薄な個性
率直に言って、その走りっぷりは特段強いキャラが立っているわけではないが、練り込みぶりはさすが。今後期待したいのは、ステアリングやスロットルの精度感など、感覚面のさらなる煮詰めだろうか。さらに、現状では「レクサスの走りとはこういうものだ」という個性の打ち出しが、希薄に思える。ISのようにスポーツ性に特化するのでなければ、そういった部分での磨き上げがあっていいと思うのだ。
あるいは個性の主張は来年登場のハイブリッドモデル、GS450hに託されるのかもしれないが、全体のイメージだけでなく、やはり1台1台が強いオーラを放ってこそ、プレミアムカーだろう。
このGS、ライバルと目されるのはメルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズである。
(文=島下泰久/写真=トヨタ自動車/2005年7月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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