【スペック】全長×全幅×全高=3810×1675×1380mm/ホイールベース=2440mm/車重=1210kg/駆動方式=FF/1.6リッター直4DOHC 16バルブ(108ps/5800rpm、15.0kgm/4000rpm)/価格=265万円(テスト車=同じ)

プジョー206CC カラーライン(4AT)【試乗記】

種を育てたフレンチオープン 2005.07.12 試乗記 島下 泰久 プジョー206CC カラーライン(4AT) ……265万円 「オープンカーに乗りたい……」とは思えども、価格や手間など敷居が高い。オープンカーの魅力をグッと身近に、しかも魅力的に開花させた、それが「プジョー206CC」であった。

ロードスターが開いた世界

「ロードスター」が登場する以前だって、もちろん、気軽に乗れるオープンカーがなかったワケじゃない。けれど、肩肘張らずに楽しめて、しかもファッショナブルなオープンカーの市場を開拓したのは、やはり初代ロードスターだったはずだ。

作り手の意図は、あるいは「ロータス・エラン」のようなスパルタンな存在感だったのかもしれないが、オープンエアドライビングの楽しさをなんの我慢も必要とせずに楽しませてくれる巧みな設計や軽快なハンドリング、そしてなにより存在しているだけでその空間を華やいだ雰囲気に変えてしまう愛らしいスタイリングは、そうしたマニアックなファン以上に、自己主張のできるクルマを求めていた一般層に大いにアピールすることとなったのだ。

オープンのカジュアル化

あるいはこの「プジョー206CC」は、初代ロードスターのそうした面を引き継ぎ、発展させた存在と言うことができるのではないだろうか? つまりそれは、オープンの爽快感を気軽に味わうことができ、街なかでも気持ちイイ走りっぷりを備え、そしていうまでもなくオシャレ度満点のクルマだということである。

なかでも、オープンカーを“特別なモノ”と意識せずともよくしたこと。その功績はとても大きい。言うまでもなく、それは206CCが採用した電動格納式のメタルトップルーフ、プジョー呼ぶところのリトラクタブルルーフのおかげである。当時は他に「メルセデス・ベンツSLK」や「トヨタ・ソアラ」など、いわゆる高級車にしか装備されていなかったこのルーフの効能は、あらためて説明するまでもないだろう。開けているときはともかくルーフを閉じた際、ソフトトップのオープンカーは、室内が騒がしかったり雨漏りしたり、さらにはいたずらの心配もしなければならなかった。206CCは、SLKやソアラよりグッと身近な価格で、そうした悩みを一挙に解決。より多くの人々に、オープンエアドライビングの快感を味わうきっかけをもたらしたのだ。

便利でファッショナブル

しかも206CCは、非常にファッショナブルでもある。そのスタイリングは開けても閉じても実に愛らしく、しかもグレードによってはツートーン色となる本革張りシートを用意したり、のちには16通りの内外装の組み合わせを設定した「カラーライン」や、シックな「ローランギャロス」を追加するなど、素材や色使いにもさすがフランス生まれらしいサエたところを見せて、そのイメージを決定的なものにするのである。また、強調しておきたいのは、206CCが曲がりなりにも4シーターであるということだ。これによって完全な2シーターより購入へのハードルは遥かに低くなるし、使い勝手も断然スマートになる。特に女性ユーザーにとって、このあたりはとても重要なポイントのはずである。

もしかすると206CCの大半のユーザーにとって“オマケ”のようなものかもしれないが、走りだって心地よい。別に飛ばさなくたって、それこそ交差点ひとつ曲るだけでも感じることができる。小気味よい反応に、まるで自分の運転がうまくなったような気になる。それは男女問わずノービスドライバーにとっては嬉しいオマケに違いない。

そう、初代ロードスターが蒔いたカジュアルなオープンカーの種は、そこにあったネガを消し去り、ポジティブな要素を増幅させた206CCによって、一気に花開くこととなったのである。

(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2005年7月)

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