プジョー206CC(5MT)【海外試乗記】
『スーパーヒットの予感』 2001.02.02 試乗記 プジョー206CC(5MT)
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たたむための工夫
プジョー206CCの「CC」は、クーペカブリオレの略。メルセデスベンツSLKと同様の「電動格納式ハードトップ」を採用し、フルオープンとクーペの2つのボディをひとつのハードウェアで両立させたのが、名前の由来だ。
ルーフを閉じた状態では、そのルックスはどこから見ても100%のクーペボディ。Aピラーから始まる自然なアーチ型のルーフラインが、短く高いリアデッキで収束するサイドプロポーションに、不自然さはまったく感じられない。
ところが、センターコンソールに設けられた小さなスイッチを軽くプッシュするだけで、今度は100%のフルオープンカーへと変貌。テイルリッドは、リア下端を支点にして大きく口を開き、わずか20秒余りでルーフとリアウィンドウが、折り重なるようにしてトランクスペース内に収納されてしまう。
オリジナルの206に比べると、フロントガラスがより大きさを増し、Aピラーの傾斜が強まったことに気付く。実はこうしたリデザインでルーフパネルの面積を減らし、それを収納するトランクルームが無闇に大きくならないように工夫をされているのだ。前述の“自然なプロポーション”は、こうした努力の賜物。ただしそのおかげでフロントガラスがドライバーの眼前に迫る印象が強く、オープンモードでも解放感は意外に乏しいのだが……。
クーペとしての実用
搭載エンジンは、2リッターと1.6リッターの2種類。トランスミッションは、前者に5MT、後者に5MTと4ATが用意される。
日本には、早ければ春までに「1.6リッター+4AT」という組み合わせで上陸するはずだ。1.6リッターモデルの動力性能は、オープン化に伴うボディ補強による重量増もあり、加速のポテンシャルは「それなり」ということになりそう。「なりそう」というのは、南仏で行なわれた国際試乗会には、まだAT仕様が用意されなかったからだ。5MTを駆使すれば、かなり活発な動きを見せてくれることは確認出来たのだが……。
1.6リッターと比較すると、2リッターモデルは遥かに活発。なぜか乗り心地のしなやかさなども2リッターの方が上まわる印象で、「出来ればこちらを選んで欲しい」というのが、ぼくの正直な思いだ。
こちらも、2001年中には日本に導入される予定。ただし、MT仕様に限定される。まだまだMT全盛のラテンの国のコンパクトカーである。「2リッターエンジンにマッチするATを、206シリーズには用意していない」というのがその理由だ。
カタログ上は「4人乗り」の206CCだが、後席は緊急用スペースと割り切るべき。大人が寛げる広さはそこにはないし、シートバックも垂直に近いから、体の小さな小学生でも嫌がりそうだ。
もっとも、クーペモード時の、つまりハードトップを折り畳んで収納していないときのトランクスペースはかなりのもの。大型のスーツケースも楽に入りそうで、2+2としてみれば、実用性は極めて高い。
いずれにしても、このモデルの追加によって206シリーズ全体のイメージがさらに向上するのは間違いナシ。スーパーヒットの予感漂う期待のモデルが、206CCだ。
(文=河村康彦/写真=プジョージャポン)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。