BMW740i(6AT)【ブリーフテスト】
BMW740i(6AT) 2005.07.09 試乗記 ……973万7500円 総合評価……★★★★ 新世代のV8気筒エンジンを搭載し、マイナーチェンジされた「BMW740i」。さらに力強くなった走りに、自動車ジャーナリストの生方聡は……。
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ふさわしい熟成ぶり
フルモデルチェンジした「アウディA8」や、まもなく登場するニュー「メルセデス・ベンツSクラス」に立ちはだかるために、このマイナーチェンジが重要な意味を持つBMW7シリーズ。ずいぶんマイルドになったフロントマスクや、イメージを一新したリアエンドのデザインなど、いままでに比べればかなりとっつきやすくなったが、それでも“個性的”なのは相変わらずで、私は「果たしてカッコいいんだろうか?」と唸ってしまう。
運転席まわりのインターフェースにもいまだに戸惑いを覚えるが、走りっぷりに関して大いにグレードアップしているのは確か。これを熟成と呼ぶのだろうが、ラクシュリークラスにふさわしい上品な走りに磨きをかける成長ぶりだ。これこそが、モデルサイクル後半を担うニュー7シリーズ最大のウリだと、私は思った。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年9月のフランクフルトショーでお披露目されたBMWの4代目フラッグシップ。わが国へは、翌2002年4月からデリバリーが開始された。
アッパークラスとして異例に斬新なスタイル、「iDrive」に象徴されるハイテク指向で、スリーポインテッドスターとの差別化を強める。“シフト・バイ・ワイヤ”を採る6段ATも新しい。物理的にスタビライザーを操作してロールを抑える「ダイナミックドライブ」、電制ダンパーによるアクティブサスによって、ビーエムの名に恥じない“走り”も確保する。
05年1月にマイナーチェンジを受け、外観を変更。エンジンはV8が新型に変更され、グレードが4リッターモデル「740i/Li」と4.8リッター「750i/Li」になったほか、シャシーやサスペンションの最適化、そして「iDrive」をはじめとするコントロールシステムや装備品の変更・追加が行われた。
(グレード概要)
新型7シリーズのベーシックグレードが「740i」。4リッターV型8気筒エンジンは、ヘッドまわりに軽量合金を採用した最新型である。
BMWジマンの操作系インターフェイス「iDrive」は、コントロール・ディスプレイに表示されるメニュー・ガイダンスの最適化や、メニュー表示の更新、各種エンターテイメント機能への直接アクセスや、オーディオ音源とラジオ周波数帯の直接選択機能を付与して、機能性を高めた。
装備面では、キセノン・ヘッドランプとヘッドランプ・ウォッシャーの全モデル標準化、急ブレーキ時にブレーキランプの発光面積と明るさが増し後続車に警告する「2段階点灯式ブレーキ・フォース・ディスプレイ」(国別法規定により非装備の場合あり)、MP3にも対応するオプションのCDチェンジャーなどが特徴だ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
「インテリアを大幅に変更」といわれても、フロントマスクやリアエンドほど目立った変更のないインテリア。しかし、よく見ると、空調やライトなどの操作ダイヤルにクロームの飾りがついたり、パネルの質感が微妙に向上していたりと、進化の跡がうかがえる。
個人的にうれしいのは、比較的使用頻度の高いオーディオで、ラジオのバンド切り替えが独立したスイッチとして設けられたことと、カーナビの地図の縮尺が、iDriveのコントローラーを回すだけで簡単に変更できるようになったことだ。
(前席)……★★★
デビューから5年経っても、いまだに戸惑ってしまう7シリーズの運転席。「キーはどこに入れるの?」「ギアをドライブに入れるにはどうすればいいの?」「パーキングブレーキはどこ?」と、乗り込んだ直後はクエスチョンマークが頭の上を飛び交う。さらに、電動シートの調整はセンターコンソール横のスイッチを使うのだが、これも慣れるまでは一苦労。走り出すまでに最も苦労するクルマである。しかし、「プラスパッケージ」に含まれるナスカ・レザー・インテリアの、表面がパンチング仕上げされたレザーシートは肌触りがソフトで体を優しく包んでくれる優れもの。走り出してしまえば心地いいことこのうえない。
(後席)……★★★★
ロングホイールベースの「L」モデルでなくても十分と思わせるほど余裕たっぷりのリアのレッグルーム。広いだけでなく、自然に膝が曲がるよう座れるのも、心地よさにつながっている。
なによりうれしいのは、その乗り心地のよさだ。目地段差の多い西湘バイパスでもリアシートの快適性はまったく損なわれない。運転好きの私だが、こんなクルマならリアシートで揺られてみたい。
(荷室)……★★★
「コンフォートパッケージ」が奢られた試乗車では、トランクリッドも電動式。開けると、不満のないレベルの奥行きが確保されるラゲッジスペースが広がっていた。リアシートを倒すことはできないが、「長尺物が積めないと困る」といって、このクルマを諦める人もいないだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
7シリーズのエントリーモデルといえども、搭載されるエンジンは4リッターのV8。出足こそ控えめな印象だが、街中を1500rpm程度で流すような場面では、トルコンスリップによるトルクアップ効果も手伝って、スーと滑らかに加速する印象だ。一方、高回転まで回してもスムーズで、最大トルクを発生する3500rpmを越えてもなお、トルクが落ち込む感じはない。ただ、約2トンのヘビー級ゆえ、ワインディングロードの上りではもう少しパワーがあれば……と思うこともあった。
それから、オートマチックをマニュアルモードに切り替え、ステアリングで操作する際、ステアリング裏のボタンが押しにくいのも難点。表のスイッチで、アップ、ダウンができたほうが便利だと思うのだが。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
ダイナミック・ドライブとEDCーC(エレクトロニック・ダンパー・コントロール)をパッケージ化した「アダプティブ・ドライブ・パッケージ」が装着される試乗車の乗り心地は極めて快適だ。EDC-Cを“コンフォート”にセットして走り出すと、一般道を低速で走る場面では角の取れた、それでいて、ピッチングなどがよく抑えられた乗り心地を示し、そのまま高速道路に駆け込んでも、十分にフラットな印象なのだ。最高速度100km/hという日本の高速道路ではコンフォートのままでOKだ。
ワインディングロードやカーブの続く高速道路では、EDC-Cを“スポーツ”にすることにより、さらにロールを抑えることができる。と同時に、スポーツに切り替えると、パワーステアリングのアシストが変わり、よりダイレクトなフィーリングに変わるから、素直なハンドリングを楽しむには欠かせない。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2005年6月29日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:3588km
タイヤ:(前)245/50R18(後)同じ(いずれもミシュラン・パイロットプライマシー)
オプション装備:プラスパッケージ(電動ガラスサンルーフ+シート・ヒーティング+ナスカレザー・インテリア)=26万2500円/コンフォート・パッケージ(フロント・ベンチレーション&コンフォートシート+オートマチック・トランクリッド・オペレーション+ソフト・クローズ・ドア+電動リア・サイド・ローラー・ブラインド)=26万2500円/アダプティブ・ドライブ・パッケージ=26万2500円
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(4):山岳路(4)
テスト距離:393km
使用燃料:64リッター
参考燃費:6.1km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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