トヨタ・ヴィッツの「ライバル車はコレ」【ライバル車はコレ】
コンパクトカー対決 2005.06.27 試乗記 トヨタ・ヴィッツの「ライバル車はコレ」 6年ぶりにフルモデルチェンジされた、トヨタの欧州戦略車「ヴィッツ」。「速さ、楽しさ、広さ、扱いやすさ、安全性、経済性」のすべてを満足させるというコンパクトカーのライバルとは? 自動車ジャーナリスト、河村康彦が選ぶ。トヨタ・ヴィッツ(1.3リッター/FF=121万8000円から155万4000円)
歴代「スターレット」が築いたポジションを受け継いで、1999年の初代モデルの誕生とともに、たちまち日本のコンパクトカー代表というポジションを手中に収めた「ヴィッツ」。初代モデルは“トヨタの末っ子”として誕生するも、後にその座はダイハツとの共同開発モデル「パッソ」に譲渡した。ヨーロッパ市場でも同様に末っ子の座をPSA(プジョー/シトロエン・グループ)との共同開発による「アイゴ」へと譲ったこともあり、フルモデルチェンジを機にボディサイズを大幅拡大。ひと世代先のライバルたちとの戦いを念頭に置いたポジションで再度の戦いを挑むのが、2005年の初春にデビューした現行2代目だ。
日欧の両市場で好評だった先代の面影を巧みに受け継ぎつつ、新型が採用したプロポーションは、かなり“ワンモーション”の雰囲気が強い。Aピラーの付け根は大きく前進し、相対的にフロントフード長が短縮。キャビンがグンと大きくなって塊感が強まったフォルムに、最新モデルの新しさが象徴される。
搭載エンジンはパッソにも搭載された1リッター直列3気筒ユニット、及びすでに定評ある1.3/1.5リッター直列4気筒ユニットの改良型だ。組み合わされるトランスミッションはCVT(4WDは4AT)が基本で、スポーティグレードである1.5リッター「RS」グレードにのみ5速MTを設定。ちなみに、メインとなるFWDモデルのATをすべてCVT化したのは英断である。大きく、重くなってしまったボディをなんとか効率良く走らせようという意図がうかがえる設定だ。
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【ライバル車その1】スズキ・スイフト(1.3リッター/FF=101万3250円から128万1000円)■わざわざ買いに行きたい一台
ハッキリ言ってこれは強敵! スズキの小型車と言えば「安いがそれなり」(?)のクルマづくりがこれまでの定番だったが、そんなイメージを大きく打ち崩す一台だからだ。
長いルーフに立ち気味のウインドシールドをもつ、そのシルエットはどことなく新型「MINI」を髣髴とさせるもの。実際「我々の目指していたデザイン・スタンスの近くに、MINIというクルマが存在していたのは事実」と、スズキの開発陣もコメントしている。
インテリアの質感は、世界の競合に負けないレベルだ。なかでも、オーディオや空調コントロール系をシンプルかつ整然と並べたセンターパネルまわりは、スイフトのインテリア・デザインのハイライト部分である。
走ってみるとこれまたビックリ。動力性能は「まぁ期待通り」というレベルに収まるが、フットワークの出来栄えは明確に「期待以上」と言える。ステアリング操作に対する身のこなしはあくまでもドライバーの意思に忠実だし、路面凹凸への当たり感が優しいしなやかな乗り味も美点だ。「(先代のように)軽自動車ベースの拡大版ではなく、当初から世界で通用する小型車を目指した」というコメントが、実感としても納得出来る走りのテイストを味わわせてくれることになる。
惜しいのは電動パワーステアリングが生みだすフィーリングである。中立付近の座り感の甘さが、やはり同様システムを採用するもののヴィッツの仕上がりに負けている。ビジネス面に目を向ければ、販売力ではトヨタのそれに及ぶべくもないが、「ちょっとお店が遠くても、わざわざそこまで買いに行きたい1台」がこのスイフトだ。
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【ライバル車その2】ホンダ・フィット(1.3リッター/FF=112万3500円から136万5000円)■ホンダの自信
生まれ故郷の日本のみならず、ヨーロッパ市場では「Jazz」としてクリーンヒットを飛ばすフィット。デビュー以来、まる4年を経た今となっても相当数のボリュームを販売し続けているのは、この期に及んでもライバルに負けない魅力を備えているからだ。誕生以来大きな変更を与えられていないスタイリングにも、ホンダの自信のほどが感じられる。
パッケージングの邪魔モノである燃料タンクをフロントシート下へと追いやった“センタータンク・レイアウト”を採用。カタログ上だけでなく、より現実的な日常のシーンで極めて優れた使い勝手を実現させたのがフィットの大きな特長だ。事実、そのアドバンテージは、後に現れた数多くのライバル車と比較してもまだまだ健在である。
なかでも、リアシートのクッションを跳ね上げると出現する広大な空間は、どんな他車にも真似できないもの。ディーゼル仕様を用意しないのにヨーロッパ市場で支持率が高いのは、このあたりの“真のユーティリティ性”を追求した影響も大きいに違いない。
初期モデル最大のウイークポイントと感じられた後輪側が飛び跳ねるようにヒョコヒョコと動く挙動も、マイナーチェンジによって随分と改善された。数値以上のパワフルさと燃費の良さを両立されたエンジンも「さすがはホンダの作品」という印象である。
というわけで、いよいよ熟成の度が増してきた現在のフィットはもはや新鮮さは薄いもののなかなかに“買い”の一品。威勢良く走りたい人向けに1.5リッター+5MT仕様が選択できるようになったのも朗報だ。
(文=河村康彦/2005年6月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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