BMW316ti(5MT)【海外試乗記】
『寸づまりだけど上質』 2001.03.29 試乗記 BMW316ti(5MT) 2001年6月、BMW3シリーズ「コンパクト」の第2世代が欧州市場に投入される。それに先立ち、自動車ジャーナリスト河村康彦が、スペイン南部はマルベーヤを基点に、1.8リッターモデル、しかし名前は316tiに乗ってきた。 ![]() |
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ルックスはいまひとつ
BMW3シリーズ「コンパクト」が、初めてフルモデルチェンジを受けた。初代コンパクトは1世代前(つまり現行セダンの先々代にあたるE30用)のプラットフォームを使ったが、新型では「現役モデル」すなわちE46型がベースとなる。
したがって、サイズは従来より大きくなり、特に全幅は1751mmと、日本にやって来れば「3ナンバー」というサイズになった。それでもセダンに比べればまだ全長が21cmも短いから「やはり“コンパクト”だ」というのが開発サイドの主張である。
ちなみにBMWでは、すでに発売が秒読みの「新型ミニ」のほか、ブランニューモデル「1シリーズ」の開発も公にした。今回のサイズ拡大は、こうしたより小さなモデルがスタンバイしていることとも関係があろう。
新型コンパクトのプロポーションは、従来型のそれを踏襲した。BMWらしい長めのフロントセクションに対し、ボディ後半は後突試験を受けた後のような“寸づまり”調。セダン/クーペの“ハンサム顔”と比較すると、フロントマスクは目鼻立ちがハッキリとしないし、テイルレンズはどことなくトヨタ・アルテッツァ風……と、正直なところ「ルックスはいまひとつ」というのが、ぼくの個人的な感想だ。
もっともダッシュボードがセダンと同デザインということもあり、ひとたび乗りこんでしまえば、室内の眺めはセダンと大きく変わらない。
リアシートの居住性も、セダンと遜色はない。しかしラゲッジスペースはホイールハウス部の張りだしがかなり大きく、リアのシートバックを折りたたまないと収納ボリュームは意外に小さい。
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自然だけど、ちょっと鈍い
日本への導入が予定されるのは、イギリスの新工場で生産される新開発1.8リッター4気筒エンジンを搭載した「316ti」だ。輸入開始時期は、11月下旬が予定される。
新エンジンの最大の特徴は、スロットルバルブ(シリンダーに送る混合気の量を調整するスロットルバタフライ)を廃してポンピングロスを減らし、燃費の向上を図ったこと。そのために、BMWは新たな吸気バルブ駆動システム「バルブトロニック」を採用した。これは、エンジンの稼働状況により、バルブリフト量を連続無段階にコントールするシステムである。ウイークポイントは、シリンダーヘッドまわりの構造がかなり複雑化してしまうことで、将来的には電磁バルブシステムなどに置き換えられそうだ。
実際にドライブしてみると、ニュー1.8リッターユニットは、“特別なメカニズム”を採用していることを一切感じさせない。自然なパワーフィールが身上だ。とはいえ、中回転域でトルクが太いところに、バルブコントロールシステムの恩恵を感じる。アイドリング状態からの吹け上がりにちょっとした鈍さがみられるのは、あるいは電子制御のプログラムにまだ改善の余地が残っているのかもしれない。
ちなみに、今回の国際試乗会では、テスト車は全車MT仕様。が、日本に上陸するのは恐らくAT車になるだろう。毎度のことながら、この秀逸なフィーリングのエンジンをマニュアルトランスミッションで日本のユーザーが味わうことが出来ないのはとても残念だ。
セダンよりも若年層を狙うというコンセプトから、スポーツサスペンションは標準で装備される。ただし、それでも乗り心地はけっして硬すぎない。BMW車らしいしっかりしたフットワークと、速度を増すにしたがってフラット感を高める乗り味は健在だ。
というわけで、見た目は「?」。でも乗れば「上質」。それが、新型316tiコンパクトに対する、ぼくの総合的な感想だ。
(文=河村康彦/写真=小宮岩男/2001年3月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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