BMW 320i(6AT)【試乗記】
高まる期待と…… 2005.04.19 試乗記 BMW 320i(6AT) ……533万50円 BMW最量販モデル「3シリーズ・セダン」が、7年ぶりにフルモデルチェンジした。2リッター直4に6ATを組み合わせた「320i」に乗った、自動車ジャーナリスト河村康彦の第一印象は?
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意外とフツー
開発コードナンバー「E90」こと、待望のBMW新型「3シリーズ・セダン」が、いよいよ日本に上陸となった。
現行7シリーズ以降、ことあるごとに“賛否両論真っぷたつ”となるデザインのニューモデルを、立て続けに放ってきたBMWだけに、「今度もきっと(スゴイかも)!」と、期待と不安が入り交じり、身構えていた人がいるかもしれない。が、発表された新型のアピアランスは、「意外にもフツーだな……」というのが、多くの人の心に共通する印象ではないだろうか。
いや、もっと正直に言ってしまうならば、雨の箱根で初対面となった新しい「320i」の姿は、それがたまたまダークなボディカラーを身に纏っていたということもあってか、ぼくにとっては「予想以上に地味」という印象が拭えないものだった。東京から芦ノ湖畔までまで“陸送”してきてくれた編集Oさんが発した、「道中で注目されている気配が、全然ないんですよね〜」というコメントも、このルックスを見ると「さもありなん」と思えてくる。こう言ってはナニかもしれないが、リアビューなんかはかつての「三菱カリスマ」(知ってます?)みたい……。BMWはここにきて、“跳んだ”デザインの提案から心を入れ替えたのか!?
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痛し痒し?
インテリアも、初対面なのに「もはや見慣れた」雰囲気すら漂うデザインだ。“ピナクル”と表現される盛り上がりが、ドライバー前とセンター部分に2連続するダッシュボードのデザインは、7シリーズ、そして5シリーズと、このところ同社がセダンに好んで用いるモチーフで構成されたもの。操作系と視覚系がドライバーズシートに向けてグンと捻られていた、従来型のドライバーズオリエンテッドな運転席に比べると、「乗る人皆に平等に優しい」ファミリーカーライクなものになったのが特徴といえる。
キャビン空間は、足下、広さ感とも明らかに余裕が増した。そもそも長かったホイールベースはさらに35mm延長され、全長は45mmプラス。リアシートに座ると、足元に余裕があるのは当然だ。そして今、話題騒然(?)の1800mmオーバーに到った全幅は、従来型比で一挙に75mmも拡大された。これだけ広がったのだから、乗り込んだ瞬間に室内幅の余裕を感じるのも、また当然という理屈である。
ただし、常に“世界のベンチマーク”として注目される3シリーズのサイズをここまで拡幅したのは、ちょっとヤリ過ぎだとぼくは思う。耳を澄ますと「ボディ幅としてカウントされるのはドアハンドルの張り出し部分」とか「立体駐車場で問題になるトレッド幅は、ほとんど増えていない」など、苦しい言い訳(?)がいくつも聞こえてくる。いずれにせよ、物理的にそれだけのサイズを備えるというのは、紛れもない事実。これまで歴代3シリーズが「日本にもふさわしいコンパクトなサイズ」であったことをひとつのセールスポイントとしてきたBMWジャパンも、今度はちょっとばかり苦慮しているというのが本音でもあるようだ。
惚れ惚れする接地感
そんな新しい320iで走り出すと、ちょっと不自然なまでに重めの味付けの操舵感が、ひと足先にデビューした1シリーズのそれにソックリだ! 新しい3シリーズのハードウェアは1シリーズと色濃い血縁関係にあるという話題を、こんなところから思い出した。もちろん、路面凹凸の入力に対して、脚は素直にきれいに動く印象。最新のBMW車の例に漏れずランフラットタイヤを標準装備するが、特有のコツコツした突き上げはすくない。パンク時に車重を支えるべく、サイドウォールの硬度を増したランフラットを、最近では随分と柔軟に履きこなせるようになったものだと、改めて感心する。
試乗日はあいにくのどしゃ降りだったが、4輪の接地感はヘビーウェットの状況でも、惚れ惚れするほど高かった。それぞれが常にバランス良く接地するのはもちろん、「ボディのどの位置で接地しているか」までもが、手にとるように分かる気がするほどだから、これはもう凄いの一言だ。一方、乗り味のしなやかさでは、このクラスで圧倒的なパフォーマンスを誇る「メルセデスベンツ Cクラス」には及ばない感触である。
ハンドリングに肩すかし
ただし、ハンドリングに従来の3シリーズを想像すると、ちょっと肩すかしを食うかもしれない。5シリーズの日本仕様と違って、本国ではオプション設定の「アクティブステアリング」を標準化しなかったのは見識だが、(すくなくともぼくの個人的な期待値に対しては)全般的にステアリングの効きがダルに思えた。BMW車としては、ちょっと気になるトコロだ。
動力性能は「まず期待通り」。「120i」と同じ、バルブトロニック付き2リッター直4に6段ATの組み合わせは、1まわり大きい3シリーズのボディを走らせるに十分。強い雨がルーフやウインドウを叩き続け、エンジンフィールや静粛性のほどは確認しづらかったので、軽い印象に留めておくことにしよう。
事前の期待があまりに高かったためか、個人的に「……?」なところも残る今回のテストドライブ。未体験の新エンジン搭載モデル「330i」のチェックを含め、もう一度「リベンジ・ドライビング」をやってみたい。短時間の試乗で、そう思わせるには十分な実力をもっていた、新型3シリーズである。
(文=河村康彦/写真=清水健太/2005年4月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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