フォード・モンデオST220(6MT)【試乗速報】
MTを楽しむ大人たちへ 2005.02.15 試乗記 フォード・モンデオST220(6MT) ……430.5万円 ヨーロッパ・フォードの高性能シリーズ「ST」に新たなモデルが登場した。特殊車両開発部門「SVE」が開発したハイパフォーマンスセダン「モンデオST220」に、『webCG』本諏訪裕幸が試乗した。3リッターセダン+マニュアルの選択
魅力的なクルマが入ってきたものだ。「フォード・モンデオST220」、3リッター+6MTのセダンである。
3リッター以上のセダンでMTが選べる車種は非常に少ない。現行国内ラインナップでは「BMW330i」「日産スカイライン」「スバル・レガシィB4」ぐらいだ。webCG読者から「最近はマニュアル車が選べない」と投稿が多いのも、このクラスである。
たしかに、パワーにゆとりがある大排気量車であればATでも楽に走れる。AT自体も多段化するなど進化し、MTよりスムーズな運転になることも多い。とはいうものの、運転を楽しむ向きが多いwebCG読者においては、人と車の一体感という意味で物足りなさを感じておられるのだろう。
今回試乗した「モンデオST220」は、特殊車両の開発をも行う「スペシャルヴィークルエンジニアリング(SVE)」(現:フォード・チームRS)が手がけたハイパフォーマンスモデルだ。
搭載されるのは3リッターV6デュラテックエンジン。本国では従来よりあるユニットであるが、STに搭載するにあたり、吸排気系の見直しや、クランクシャフト、カムシャフトなどの軽量化が行われた。加えてピストンやコネクティング・ロッドのバランス取りまでされているというのは、モータースポーツに深く関わるフォードらしいチューニングだ。さらにはラジエーターの大型化、オイルクーラーの追加装備もなされている。
トランスミッションは、ゲトラク社と共同開発したという6段マニュアル。軽量化とコンパクト化に貢献する「ツインレイシャフト」設計は、2つのファイナルドライブシャフトを持つという凝った作りのものである。
「(フォーカスにある)RSグレードは、特別なコンペティションモデル。STはストリートでの高いパフォーマンスを目指した」という広報氏の説明通り、普段使いの装備をそのまま残している。8ウェイパワーシートとなる、バケットタイプのレカロ製レザーシート、シートヒーター、インダッシュタイプの6連奏CDチェンジャーなども標準だ。
軽いフィーリング
ボディカラーのラインナップは、フォードのイメージカラーでもあるブルー(ハイパフォーマンスブルー)一色となる。およそ15mm低められたという車高と、専用のバンパー、控えめなリアスポイラーなどが、他グレードとの外観上の違いである。
走り出すとまず感じるのは、フィールの軽さだ。このクルマの前に試乗した2.5リッターのV6GHIAは、ペダルやステアリングなどの操作系が重かった。しかし、ST220では、ステアリングギア比がクイックにされ、ベーシックモデルから1インチアップとなる225/40R18サイズの大径タイヤを装着しているにもかかわらず、操作が軽い。パワステのアシストが変更されたと思われる。さらに、アクセルペダルに対するレスポンスも良く、1510kgの車体をらくらくと引っ張っていった。唯一、ブレーキだけは重たいタッチで、しっかり踏まないといけないから、他車から乗り換えると若干とまどうこともある。とはいえ、ストッピングパワーは問題なく、100km/hからの急制動で37mという優れた性能を発揮するという。
いい仕事をしている
「いい仕事をしているなぁ」
同行した『NAVI』中村が、サスペンションの細やかな動きを感じるたびにつぶやく。機械式のダンパーでこの感触を得るためには、研究開発に多くの時間をかけたに違いない。また、レースシーンからのノウハウも注ぎこまれているのだろう。「いい仕事」という言葉は、サスペンションの動きだけではなく、エンジニアをも褒めているのだと思い、深くうなずいた。
事実、スプリングレート、ダンパー減衰力の改良はもとより、フロントセクションはアーム類やストラットのマウント位置を変更するなど、サスペンションには大きく手が加えられた。単にエンジンを載せ替えただけの上級グレードではないのだ。
排気音、エンジン音も控えめであり、おおっぴらにハイパフォーマンスモデルであることを主張していない。あくまでジェントルなセダンであった。ペダルがアルミになっていないのは、革靴でも滑らないためであると、勝手に判断。スーツを着ていても、MTで運転を楽しみたいという大人にうってつけである。
このモンデオST220は20台限定の販売となるが、フォーカスST170同様に、人気に応じて追加投入もあると予想される。日本でのMT需要は一部に限られるが、少数ながらも確実に存在するということは事実。クルマのデキはもちろんであるが、MT限定車を投入したというインポーターそのものも評価したくなる。
(文=webCG本諏訪裕幸/写真=高橋信宏/2005年2月)

本諏訪 裕幸
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