フォード・モンデオセダン V6ギア(5AT)【試乗記】
広い窓口をもったクルマ 2002.06.21 試乗記 フォード・モンデオセダン V6ギア(5AT) ……323.0万円 「ジャガーXタイプとプラットフォームを共用する」といった、モデル政策上のニュースが先走った感のあるフォード・モンデオ。しかしドライブすると、Xタイプとはまた違ったクルマに仕上がっていた。webCGエグゼクティブディレクターが報告する。 拡大 |
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メカは「X」に似ていてもココロは違う
「ひょっとしたらジャガーXタイプよりいいんじゃない?」。モンデオセダンV6ギアから降りてきた時の最初の言葉がそれだった。
実は、社用車としてXタイプの2.5に乗っていることもあって、新たに導入されたモンデオのV6モデルは、かなり気になるクルマだった。兄弟車といってもいいぐらいなほど共通点が多いからだ。
まずエンジンである。フォードがデュラテックV6という2.5リッターユニットは、腰から下がジャガーの「AJ-V6」と同じで上半分が異なる(ついでにいうなら、4気筒モンデオのデュラテックHEはマツダ・アテンザと基本的に同系だ)。フォードの場合、上半分はコスワースとの共同開発になり、170psと22.4kgmを発するが、これはジャガーの2.5リッター(198psと24.9kgm)よりわずかに控えめだ。
「デュラシフト 5トロニック」なる新型5段ATもまたXと共通のJATCO製で、ギア比も同じ。ただしこちらはコンピューター制御で各種プログラミングを組み込み、一種のアダプティブ・システムを採用している。いちいち解説すると複雑だから省くが、要は「D」に入れておけば走行パターンを読みとって学習するもの。
前からいわれているように、ストラットを使ったフロント・サスペンションはサブフレーム以外はほとんどジャガーと共通。面白いのはリア・サスペンションで、モンデオのワゴンに限ってXと基本的に同じレイアウトである。つまりトーコントロール付き上下ウィッシュボーンだ。セダンは独自のマルチリンクになっている。モンデオワゴンの場合、ストラット・タワーの張り出しを嫌ったのだろうが、一方、ジャガーは、たぶん4WDとの相性やトランクスペースからワゴンと同系にしたのだろう。
つまりモンデオV6は、FWD(前輪駆動)化したジャガーXタイプ2.5V6とも、あるいは2.5リッター化したFWDのXタイプ2.0V6ともいえる。
でも、乗ってみるとモンデオは、Xタイプとはまったく違うクルマになっていた。つまり、フォードは、グループ全体において、共用できるものは共用しつつも、各ブランドの独自性を重視するものは徹底的にそれを大切にするという作り方に、大分長けてきたということで、これはPAG(プレミア・オートモーティブ・グループ/フォードグループ内の高級ブランド群)にとっても、本体たるフォードにとってもいいことだろう。
フォードの伝統通り
モンデオは、1年以上前にイギリスで4気筒の5段MTモデルに乗ったときから、憎からぬクルマだと思っていた。すごく真っ当に実直にできているだけでなく、それまでのフォード車より格段に質感が上がっているし、飛ばすとかなりスポーティで、特にハンドリングのバランスがとれていていい。もっとも質感を除けば、それらは旧型から受け継いだ資質でもある。ただし日本の4気筒4段ATモデルの場合、使用状況によっては3000rpm前後にあるトルクのフラットスポットにATがうまくマッチしなくて、一瞬加速のドツボに落ち込む、つまり思うように前に進んでいかないことがある。だから前から「V6か5段ATが欲しい」とは思っていた。
それらどちらも得たモンデオV6はどうなのかといえば、「そうとうにいい中型車」である。フォルクスワーゲンのパサートあたりを徹底してマークしているように言われるが、私はむしろちょっと違うクルマだと感じる。パサートはあくまでも大きなゴルフというべきドイツ車であり、それはそれでとてもいい。
だがモンデオは、よい意味でのフォードの伝統どおりのクルマだ。前述のように清教徒的な実直さがフォード代々の血統であり、それに特に戦後は華々しいスポーツ活動を通して、スポーティでダイナミックな感覚を植え込んだ。さらにKA以降は、「ニュー・エッヂ」に始まる新しい造形への挑戦も見られる。
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客を限定しないフレンドリーなクルマ
そういったフォードの流れの上の存在として、今のモンデオはある。
だから部品の多くをジャガーと共用していても、性格は徹底的に異なる。家族の忠実な友人としての実用性を根本から大切にしつつ、ジャガーのようなエレガントなダイナミズムよりも、もっと実用的かつ直裁なスポーティ感覚を大切にしている。
具体的に言えば広い室内(特にリア)、バウハウス的な近代主義を貫いたインテリアの意匠、一見控えめだがきちんと整合性のとれたルックであり、走った感覚でいえば、ジャガーよりシュアなステアリングやブレーキ、ソフトではないが落ち着いた乗り心地などだ。
とはいえ、ジャガーに感じられる独自のテイストは少なく、むしろドライで無個性である。音や振動も多少大きいかも知れない。人によってはあまりにもビジネスライクに感じるかも知れない。
でもそれがモンデオというクルマの価値なのである。ジャガーのようにユーザーを限定したり、テイストを押しつけたりしない。スノビッシュではなくて、とてもフェアでオープンなクルマである。
輸入元では「比較的自己主張が強く、しかも家族がある35〜44歳の既婚男性に、賢い選択をしたと納得させたい」と言っているが、「私たちはどんなタイプのユーザーもフレンドリーに受け入れなくてはならないのです。若い家族だけでなく、お年寄りもたまにはのんびり、たまには若いときみたいに精一杯元気に走ることができるような、そういう広い窓口を持ったクルマにしたいのです。実はそれが一番難しいのですけれどね」とドイツから来たエンジニアが、隣の席に座りながら語っていた言葉に、私は心から納得した。
だってそういうクルマとしてできあがっていたからだ。
(文=webCG大川 悠/写真=佐藤俊幸/2002年6月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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