フォード・モンデオギア2.0(5MT)【海外試乗記】
『大きなフォーカス』 2001.03.10 試乗記 フォード・モンデオ ギア2.0(5MT) ジャガーXの取材に英国を訪れた『webCG』エグゼクティブディレクターの大川 悠は、この機会にプラットフォームを共用するフォード・モンデオの2.0に乗ってきた。春間近の、南イギリスのカントリーロード、240kmほどのモンデオとの一日は、予想以上に快適だった。1+1が3になる
ジャガーXには興味がある。ジャガー初の横置きエンジンによる4WDであり、メルセデスCクラスやBMW3シリーズのマーケットに焦点を定めた、従来のジャガーラインナップより、ひとクラス下のモデルだからだ。ただ、このクルマの試乗ができるのは、初夏である。
となると気になるのが去年の秋に登場したフォード・モンデオ。中身の多くをXと共用している。そしてこちらは、一気に2クラスぐらい上に上がってDセグメントを目指し、すでにヨーロッパでは評判がいいという。というわけで、Xのお披露目ついでに英国で、モンデオの「ギアX 2.0」なる上級バージョンを試乗してきた。
ジャガーSタイプとリンカーンLSの前例があるから、古くからのジャガーファンは「Xはフォードのプラットフォームを使ったクルマだからつまらない」と否正しくは、ジャガー、フォード双方が、長い年月築き上げてきた技術をシェアし合って、新しいプラットフォームの原型を生みだし、そこからそれぞれのクルマに応用していくということである。これによって時間やコストだけでなく、それ以上に2つの企業の技術を合わせることで、1+1が3ぐらいになるところにメリットがある。しかもそれをやればやるほど、お互いの伝統や、個性が明瞭になり、かえってそれぞれが違った形で表現しやすくなる。実際、現状では、モンデオとXとの共通部品は20%に過ぎないという。
という背景を元に見てもモンデオは大きい。2754mmのホイールベースに4731×1812×1429mmの外寸を持つ。ただし幅はミラーを含めたもの。いずれにしても、従来の市場だけでなく、上級版のスコルピオのユーザーも取り入れようとするからでもある。そのため2.5リッターV6も用意される。
乗ったのは高級版「ギア」の2リッター、5MTのセダンだった。淡いブルーグレーの塗装が、やや暗い春前のイギリスの光に似合っていた。
高い質感と大きなボディ
「室内の質感がすごく良くなった」とは、以前モンデオを試乗した多くの人が最初に表現したものだが、確かにいい。最近ドイツ車ではやりのメカニカル・グレインともいうべき、合成樹脂に機械的なパターンを彫刻的に表現して、新しい機能美を出している。
人によってはドイツ的にビジネスライク過ぎるという意見もあるだろうし、細かいところまで意地悪く見れば、まだ小さな段差なんかがあるが、でも新バウハウスともいうべき清潔で品質間の高いアプローチは好ましい。
拡大された室内のために、実際もそうだけど、心理的にドライバー横に余裕ができた感じで、確かに1クラスは確実に上がっている。
リアシートも広いし、立方体に近いブートも十分なスペースを確保している。実際に乗っていると、それほど大きさを感じさせないが、東京で乗ると、やや持て余すかも知れない。
自然に走る
ロンドンから南、サリー州の小さな村と、それを繋ぐカントリーロードの旅は、気持ちが良かった。イギリスとしても異例に寒い日で、零度前後の曇りだったが、空調はしっかりしているし(細かいところでは空調のファンノイズも少ない)、シートヒーターは強力、まあぬくぬくである。
英国の道の舗装はおおむね良くない。郊外の道は舗装表面が粗いし、ロンドン市内はつぎはぎだらけだ。そういうところでは205/50R17というオプションのコンチ・スポーツコンタクト2なるタイヤは辛い。ゴムが変形しないで、そのまま路面の情報をフロアに伝える感じだし、ロードノイズも大きい。標準の205/55R16で、イギリス以外の道で乗ると、印象はずいぶん違うだろう。
だが音はともかく、乗り心地は速度が上がるに従って、どんどん良くなってくる。全般的にとてもフラットで、ボディ剛性が効いた乗り心地である。サスペンションのストロークもたっぷりしている。ただエンジン以外の音、つまり路面や風切り音が比較的大きい。
フォーカスの「ゼテック(Zetec)」ユニットと異なる新しい「デュラテック(Duratec)」の2リッター4気筒145psエンジンはデキがいい。特に1000rpm台からトルクがしっかりと支え始め、3000rpmぐらいまではとても厚い。しかも全般的に従来の2リッターより遙かに静か(ボンネット裏に、遮音用と思われる共鳴ボックスがあった)だし、スムーズにトップエンドまで吹く。フォーカスに欲しいようなエンジンだ。
ただしこのトルクを考えると、5段MTはややローギアードで、100km/h時にトップで2800rpm近くまで回ってしまうから、もう1速欲しくなる。問題は日本に入るATで、そのシフトスケジュールは気になる。
コッツウォルド地方から、やや東に向け、小さな村々を繋ぐカントリーロードは、一番楽しかった。ステアリングフィールがいい。レスポンスを特に強めず、しっとりとした操舵感を与えているが、それがすごく気持ちいい。そしてFFゆえのハンディを(大きな回転半径以外は)ほとんど見せず、きちんと駆動力を与えながらとても自然に走る。そのさまはまさに「大きなフォーカス」だった。
問題はイメージ構築
帰りはモーターウェイで時々200キロ近くまで試し、あるいは夕方のロンドンに向かうラッシュに巻き込まれたりして、燃費には決していい条件ではなかった。それでも、全行程で9.7km/リッター前後の数値は立派である。
確かにヨーロッパを軽快に飛ばすのにはとてもいいクルマだった。そして狙い通りに前身よりも2段階ぐらいクラスが上がったかのように感じた。
ただそうなると、日本ではかえって難しい競争に追い込まれるかも知れない。たとえばパサートあたりがライバルになると思うが、このサイズにまでなると、単なる価格よりもブランドイメージが大きく効いてくる。それをどう構築していくかが、これからの課題だろう。
だがブランドイメージを作るためには、まずは物から出発しなければならない。そういう意味で新生フォードの出発点としては、フォーカスと並んで大切なモデルになるだろう。
でも実際は、リポーター自身はそんな面倒なことは考えずに、春がもうすぐ来ようとしている英国のカントリーロードを流しながら、すごく気持ちのいい時間を楽しんでいた。
(文と写真=大川 悠/2001年3月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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