トヨタ・ヴィッツシリーズ【試乗速報(後編)】
これが本命? 「トヨタが作った欧州車」(後編) 2005.02.09 試乗記 トヨタ・ヴィッツ1.5X(CVT)/1.5RS(5MT) ……169万1550円 /181万7550円 「ヴィッツ」のスポーティグレードである1.5RSも、最初からラインナップされている。シリーズ最強エンジンを搭載し、唯一マニュアルトランスミッションを選ぶことができる1.5リッターモデルに、『NAVI』編集委員鈴木真人が乗った。CVTがコンパクトカーのトレンド
コンパクトカーにはCVTというのが、最近のトレンドになっている。出始めの頃は、「違和感がある」「回転数が変わらないままにスピードが上がるのが気持ち悪い」などとさんざんな評判だったCVTだが、制御の細やかさが増したこともあって、受け入れられるようになった。むしろシフトショックのないスムーズさを好感する向きも多くなったようで、燃費のことを考えれば合理的な選択である。
初代「ヴィッツ」では、マイナーチェンジでCVT搭載モデルが登場し、「フィット」との燃費競争に力を発揮した。新型ヴィッツに使われるSuper CVT-iはそれを受け継いだもので、さらに制御の質をアップさせたものだという。非力な1リッターエンジン車でも痛痒を感じないのには、この優秀なトランスミッションが貢献しているのだろう。
ただ、ヨーロッパで「ヤリス」として販売されるモデルには、ほとんどマニュアルトランスミッションが組み合わされることになるだろう。コンパクトカーにはMTという図式は、彼の地では揺るぎないものなのだ。
日本で乗れる唯一のMTモデルが、「1.5RS」である。1.5リッターモデルにはCVTが組み合わされる「1.5X」もあるが、こちらは1.3では物足りなく、さらに余裕のあるパワーを求める人向けのものといえる。
100kgの車重増が響いた?
1.5RSの内装は他のモデルとは異なる。特徴となっていたツートーンの配色ではなく、全体をブラック基調で覆いつくしてスポーティイメージを高めようとしている。シートやメーターも専用のものが使われ、本革巻きのステアリングホイールとシフトノブが奢られる。
エンジン音は低音が強調された力強いもので、「聞かせる」ことに重点が置かれているようだ。ほとんど新車だったせいかシフトフィールは渋く、あまりギアチェンジを楽しむことはできなかった。低回転でもトルクはあるので、クラッチミートにはさほど気を使わずにすむ。リミットまできっちり回すことをしなくても、街中では十分に素早い加速を味わえる。それほど回したくなるエンジンではないということでもあるが。
期待していたほどのパンチは感じられなかったのだが、先代とエンジンパワーは同じなのに、車重が100kgほど増えているのだから当然だろう。
ワインディングロードを走ったわけではないので、RSの実力を存分に試せたわけではない。その前提でいえば、電動パワーステアリングのフィールはとても素直なものだった。油圧パワステとほとんど区別がつかないと言っていいだろう。実は、先代のヴィッツにはヨーロッパ市場にノンパワステのモデルが少数残っていて、そのモデルにも対応することが求められていたので、その分詰め切れないところがあったのだそうだ。新型はすべて電動パワステなので、最適な設定を選ぶことができたわけである。
160万円で「アウディ顔」
1.3リッターモデルを試乗していた時、背後から迫るRSをバックミラーで認めてギクッとした。結構獰猛な顔つきをしているのだ。RSのフロントグリルはブラックのハニカムメッシュになっていて、2本の縦のラインが上下の部分を結びつける働きをする。その結果、大きな一つの口のように見えてしまうのだ。そう、あのアウディの「シングルフレームグリル」を思わせる形なのである。いや、どちらかというと、「フォルクスワーゲン・ゴルフGTi」のほうが似ているかもしれない。
もちろん意図的にやっているのではないだろう。さすがに時間的に間に合わない。それに、ローバー75の新しい顔や、フィアットのニューバルケッタを見ても、同じような意匠が取り入れられている。たぶん、これが今の自動車デザインのトレンドなのだろう。アウディの「シングルフレームグリル」を手に入れようとすると、いちばん安い「A3スポーツバック」の2リッターNAモデルでも300万円以上だ。ヴィッツRSなら半額、というものでもないだろうけれど。
(文=NAVI鈴木真人/写真=河野敦樹/2005年2月)
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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