日産フェアレディZ 35th Anniversary(6MT)【試乗記】
いつも心に筑波の2ヘアを 2005.01.28 試乗記 日産フェアレディZ 35th Anniversary(6MT) ……388.5万円 1969年に販売が開始され、35周年を迎えたフェアレディZ。2005年2月末までの限定販売となるアニバーサリーモデルに、筑波サーキットで『NAVI』編集委員鈴木真人が試乗した。わざわざサーキットを借りたわけ
北米では「350Z」として販売されているわけだし、搭載するエンジンはVQ35DEである。「35」という数字は「フェアレディZ」にとって大きな意味を持っている、ということで、35周年記念車の登場となった。
試乗会は筑波サーキットを貸し切りにして行われた。CPS(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)の湯川伸次郎さん、“名工”テストドライバーの加藤博義さんの姿も見える。Zは日産復活の象徴的存在でもあるし、さすがに力の入れようが違うぞ……ということも確かに事実なのだが、サーキットを使ったのにはもうひとつ理由があった。
アニバーサリーモデルとはいっても、外観が大きく異なるわけではない。新形状の18インチアルミホイールが採用され、エンブレムが特別なもの(リングの色がビミョーに違う)に替えられるだけである。最も大きな変更点は、エンジンに加えられたものなのだ。しかも、北米モデルでは300psというわかりやすい指標が与えられたものの、日本では諸般の事情でピークパワーは従来の280psに抑えられたままである。数字の上では、レブリミットが6600rpmから7000rpmへと、400回転上げられただけということになる。まことに地味というかマニアックな改良で、一般公道ではなかなか違いがわかりにくいだろうとの配慮で、筑波が選ばれたのだ。
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ボルトもスペシャル
わずか400回転、と思ってはいけない。なにしろ、3.5リッターというデカい図体だから、耐久性を犠牲にしないことを前提にして400回転余計に回すのは大ゴトなのだ。いちばん大きな変更点は、e-VTC(電磁式バルブタイミングコントロール)をエグゾースト側に採用したことである。これにより、吸気側だけの制御に比べ、低回転から高回転までの出力特性をよりスムーズに移行させることができるというわけだ。
そのほかの変更点は、カム動作角拡大、インテークマニフォールド形状変更、ピストンリング張力アップ、コンロッドボルト変更、クランクシャフト油圧経路変更というもの。ディーラーのセールストークでは使えそうにないものばかりだ。しかし、Zファンたるもの、メカニズムのディテールに凝るのが正しい態度であろう。
ノーマルモデルと一緒に走っているのを見ていると、エグゾーストノートがいくぶん高い音質になっているように思われた。マフラーは替えられていないので、高回転まで伸びることによってもたらされたものと考えられる。スポーツカーにとっては、大切な要素である。
2速100km/hの快感
走行前の説明では、筑波サーキットを走る上での400回転のメリットが図解で示された。ダンロップコーナーを抜けて3速全開で第2ヘアピンに向かうと、ノーマルモデルではどうしても一瞬4速にシフトアップすることになる。それが、レッドゾーンに入るギリギリのところまで粘ることができるので、リズムを崩すことなくコーナーをクリアできるというのだ。
実際走ってみると、全開で加速していくかぎり、400回転の差というのは結構大きく感じられる。アクセルを踏み込んでどこまでも回転が上がっていく感覚は、クルマを走らせる快感に大きく寄与しているのだ。2速で100km/hに達してしまい、メインストレートが短く思えてしまった。
もちろん、そんな性能を公道で発揮するのは困難だろう。400回転のメリットを感じるのは、ごくたまのことで、そしてほんの一瞬だ。しかし、スポーツカーを構成しているのは、そういう一瞬の快感との遭遇、あるいは予感なのだ。ノーマルモデル(Version ST)の10万5000円増しというのは、なかなかにお得な設定なのではないか。筑波を走らなくとも、気分を味わうことはできる。5スポークのアルミホイールとオプションの2トーンシートを得られるだけでも、かなり魅力的だと思う。
(文=NAVI鈴木真人/写真=河野敦樹/2005年1月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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