MINIクーパー・コンバーチブル(5MT)【試乗記】
屋根をなくして、ユルさを得た 2005.01.11 試乗記 MINIクーパー・コンバーチブル ……282万4500円 コンパクトなサイズながら、4人乗車でフルオープン。自動車ジャーナリストの島下泰久が、ブランド史上、正式なものとしては初となる「MINI」のオープンモデルに試乗した。気分に応じて3つの選択
クラシック・ミニの時代には、一度も正式に設定されたことがないというのが信じられないほど、違和感のない取り合わせであるミニのコンバーチブルがラインナップに追加された。設定されるのはクーパーの5段MTとCVT、そしてクーパーSの6段MTである。
イメージとしてはもちろん、実際にもそのキュートなスタイリングにしっくり馴染んでいるソフトトップは、単に電動で開閉できるというだけでなく、凝った仕掛けも仕込まれている。ウィンドシールド上部にあるスイッチをまずひと押し。するとトップは40cmほど開いたところでいったん止まり、サンルーフモードになる。さらにスイッチを押し続けると、トップはZ字型に折り畳まれてフルオープンに。つまり、気分に応じて3つのパターンを楽しむことができるのである。ちなみにクローズドからフルオープンにするまでの所用時間は、ざっと15秒ほどだ。
現代のクルマとしてはフロントスクリーンの角度が立っているミニだけに、オープン時の開放感は抜群である。前を向いて運転していても、視界の上方にウインドウフレームではなく空があるのを実感でき、雲の流れを意識しながら走らせることができる。もともとスポーツカーのように着座位置が低いわけではないから、まるで全身がさらされているような感じすらする。最近のオープンカーでは、ライバルとなりそうなニュービートル・カブリオレなどごく一部のモデルを除けば、なかなか得難い感覚である。
レザーパンツを履きたい
これだけ大きく開いているにも関わらず、いわゆる風の巻き込みは思ったほどではない。風は頭の上を流れていって、顔の横で巻き上げたりすることはないのだ。ただ、巻き込みは少なくとも、絶対的な開口部が大きいだけに、室内の空気はどんどん外へ逃げてしまう。速度が上がっていると、ヒーターを全開にしていても、その暖気が身体まで届く前にどこかに流れ去ってしまって、特に膝まわりがとても冷える。夜にクルマを受け取って、自宅まで首都高をオープンで帰った僕は、一発で風邪をひいてしまった。男性なら股引……はナンなのでレザーパンツあたりを履きたいところ。女性ならスカートは禁物。助手席の場合も膝掛けは必需品だ。
ハッチバックのミニ・クーパーと較べて、車重は130kgほども増えて1270kgにまで至っており、動力性能はそれ相応にスポイルされている。ただでさえ、あまり気持ち良いとは言えないエンジンは、ますます余裕がなくなってしまっているが、少なくともMTであれば、右足に込める力を少し増してやれば、その分を充分カバーできる。エンジン自体、スペックは不変ながら、登場初期に較べると確かにスムーズさを増していて、踏んでいくことが苦にならない。色気に乏しいサウンドや回転落ちの鈍さなどは相変わらずだが、そもそもクラシック・ミニの時代から、ミニのエンジンなんてそんなものと思えば、まあ納得できる。
接地感はプラス、剛性感はマイナス
車重の増加はハンドリングにも影響しているが、それはネガティブな面ばかりではない。ボディ剛性や、それに合わせて変更されているのだろうサスペンション設定などとの相乗効果か、ハッチバックでは今ひとつ薄いリアの接地感が、明らかに高まっているのだ。それでいてステアリングのキビキビ感はさほど損なわれていないから、安心して小気味良いハンドリングを堪能できる。また乗り心地も、オプションの17インチタイヤを履きながらもしっとり落ち着いた印象で、これまた好印象だった。ノーマルの15インチなら、なお快適に違いない。
残念だったのは、ボディの剛性感が今イチなこと。ステアリングコラムのガタなどは一切ないのだが、ボディの前後で動きが微妙にズレている気がするし、サイドウィンドウとソフトトップのフレームあたりからは時折こすれるような音が聞こえてくるのだ。試乗車の走行距離はまだ6000kmほど。ヤレが始まっているのだとすると、ちょっと早過ぎる。
その点を差し引けば、ミニの楽しさ気持ち良さはほとんどそのまま、とびきりの開放感をプラスしたコンバーチブルは、ミニの購入を考えている人にとっては良い選択と言えるだろう。個人的にも、ガチガチのボディとスリリングなフットワークに、ちょっと疲れてしまうハッチバックより、いい意味でちょっぴりユルさのあるコンバーチブルを断然選びたいと思った。
(文=島下泰久/写真=岡村昌宏(O)、洞澤佐智子(H)/2005年1月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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