メルセデスベンツAクラス【海外試乗記】
大人になった末っ子 2005.01.08 試乗記 メルセデスベンツAクラス 1997年、様々な技術的チャレンジを盛り込んで登場した、メルセデスベンツのコンパクトカー「Aクラス」。デビューから7年を経てフルモデルチェンジした新型に、自動車ジャーナリストの河村康彦が乗った。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
“Aクラスならでは”を踏襲
全長わずかに3.6m――1997年に初代「Aクラス」がデビューした当時、盛んに聞かれた“金看板”は、たしかそんな文言だったと記憶する。過密化の一途を辿る都市空間を有功に活用するコンパクトボディもさることながら、メルセデスベンツ初のFFレイアウトの採用や、驚天動地“サンドイッチフロア構造”など、ハードウェア上でも見るべきところが多い。それが一筆書きプロポーションを持つ、スリーポインテッドスターの末っ子だった。もっとも、エポックメイキングなデビューの印象がまだ冷めやらぬうちに、れいの“エルク・テスト転倒事件”なる話題を提供したのはちょっと余計ではあったが……。とまれ、初代Aクラスはおよそ7年の間に約110万台のセールスを記録し、同社のエントリーモデルとなった。
ヨーロッパの道では、すでに頻繁に目にする2代目Aクラス。前述した特徴的なアウトラインは、初代モデルのそれを踏襲している。エクステリアのデザインは、今回新登場の3ドアモデルも含めてご覧のように、一見して「Aクラスであること」をアピール。初代モデルで話題をさらったFFレイアウトや、衝突安全性と代替燃料車化に対応する“サンドイッチフロア構造”も、当然のごとく再度採用された。
もっとも、フロア構造については「実利面よりもセールスのため、『Aクラスならでは』のイメージ戦略的な効用が強いのではないか」というのがぼくの見方だ。二重底の空間は燃料電池車にする際、バッテリーなどを設置するためのスペースだった。一方、ニューモデルを燃料電池車とする構想は、現段階で存在しないという。万が一衝突した際、床下にパワーパックを落とし込むことでクラッシャブルゾーンを確保するシナリオも、技術の進んだ現在は恐らく、そうしたやり方に頼らなくても同等の効果が狙えると考えられることもある。でなければ、より全長の短い「スマート・フォーフォー」などは存在が許されまい……。
ボディ長が延びたワケ
新型の全長はもはや3.6mではない。全長×全幅×全高=3838×1764×1593mmの3サイズは、全幅と全高も微妙に増したが、目立つのはやはり一気に20cm以上も延びた全長だ。初代の“金看板”たるボディ長を、なぜ延長しなければならなかったのか?
答えは「市場の反応」にあるようだ。初代はモデルライフ後半、ホイールベースと全長を170mmずつ拡大し、後席(のレッグスペース)にゆとりを増した「ロングバージョン」を投入し、予想以上に健闘。そこで「ロングバージョンを標準化した」のが新型のディメンション……という考え方が成り立つことになる。
新しいAクラスの技術的なハイライトのひとつに、メルセデスベンツ初となるCVT「オートトロニック」が挙げられる。オートマチックはCVTのみで、通常は5段MTまたは6段MTだ。先代と同様、約60度の前傾姿勢で搭載されるエンジンは、3種類のディーゼルは新開発ユニットだが、日本に導入予定のガソリンユニットは、基本的に従来型の改良版である。このところ、ヨーロッパ車のエンジン開発は“ディーゼル主軸”の雰囲気だが、彼の地のディーゼル比率が年々上昇の一途を辿る現状をみればやむを得ないだろう。
「ひとクラス上」の雰囲気
相変らずの“高床式”ゆえに、乗り込みの第一歩が少々きついのに目をつぶれば、Aクラスの質感はあらゆる面で驚くほどに向上したといえる。最新メルセデスに共通のデザイン流儀が感じられるメーターやセンターパネル部をはじめ、ダッシュボード周りの質感の高さは「Cクラス」に迫るもの。端的に言うと「フォルクスワーゲン・ゴルフに真っ向勝負!」という意欲が、新型のインテリアクオリティには感じられる。
そうした質感の向上は、走りのテイストにも表れている。まるで分厚いオブラートに包まれたかのように騒音レベルがグッと下げられ、CVTの採用によるシームレスな加速を実現した新型では、明らかに初代モデルよりも「ひとクラス上」の雰囲気が味わえる。“末っ子メルセデス”とはいえ、安っぽさなど微塵もないのだ。
フットワークにしなやかさを増したことも、Aクラスが「大人になった」ことを印象付ける一因だ。ただし、アウトバーン上での横風には比較的敏感。背が高いという生まれ持ったボディ形状には逆らえないのだろうか。
わが国に導入が予想されるのは、1.7リッター(116ps)モデル「A170」と、ゆとりに溢れた加速感が味わえる2リッター(136ps)「A200」の2種類。発売時期は「2005年の春」というのがダイムラー・クライスラー日本による公式発表である。ちなみに、国際試乗会の場でテストドライブが叶わなかったが、2005年半ばに発表が予定されるターボ付き2リッター(193ps)モデル「A200ターボ」の導入は、「検討中」という答えが返ってきた。
(文=河村康彦/写真=ダイムラー・クライスラー日本/2005年1月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
































