ダイハツ・ミラジーノX(4AT)【ブリーフテスト】
ダイハツ・ミラジーノX(4AT) 2004.12.21 試乗記 ……113万4000円 総合評価……★★★ 2代目となっても丸い目と大きな口は受け継がれ、先代同様クラシカルな雰囲気をまとっている。「高級感と上質感」をテーマとし、「母と娘」をターゲットとする「ミラジーノ」に、『NAVI』編集委員の鈴木真人が乗った。
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オヤジとムスコは似合わない
「広い空間」をアピールする「ムーヴ」のようなクルマが軽自動車のメインストリームになった感があるが、まったく反対のアプローチをとるモデルもある。デザインと空間をハカリにかけたとき、「ミラジーノ」は迷いなくデザインを選ぶのだ。もちろん、それができるのはデザインに比重を置いてもそれなりの空間が確保できるという前提があるわけで、シャシー、ボディ、パワートレインの技術の発展が、軽のデザインを進化させる要因となっていることは確かだ。
新型「ミラジーノ」のイメージユーザーは「ともだち親子」だそうだが、オヤジとムスコという組み合わせは想定されておらず、「一緒に歩いていると姉妹に間違えられてしまう仲の良い母と娘」が本意である。かくして「クラシックテイストとモダンさの融合」がデザインテーマとなる。ベースとなる「ミラ」に比べると、各部に丸みを持たせたり、Cピラーの角度が寝ていたりして、スペース効率の面では不利な造形となっている。
しかし、それでも4人乗車に十分な空間を確保しているのは立派で、後席の足元や頭上にはたっぷりした余裕がある。軽自動車といえども、空間の広さだけが決め手になるのではなく、スタイルで選ぶことができるのはうれしい。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1999年に初代がデビュー。丸形のヘッドランプとメッキパーツが作り出すレトロな表情が特徴的だった。2002年12月「ミラ」がフルモデルチェンジされたのを受け、「ミラジーノ」も2代目が登場した。初代は「ミラ」をあとから改造したものだったのに対し、今回は開発当初から独自の構想で作られている(03年の東京モーターショーに「XL-C」の名でコンセプトカーが発表された)。よって、ボディのほとんどはミラとはまったく違うパーツで構成され、丸みを帯びたスタイルは「ミラ」とはまったく違うものとなった。
エンジンとトランスミッションは全車共通で、659cc直3DOHCに4段ATの組み合わせ。装備等の違いでベーシックな「L」、「X」、「Xリミテッド」があり、最上級の「ミニライト」は少し雰囲気の違う、スポーティなモデルとなっている。いずれのグレードにも、FFと4WDの両方の駆動方式が用意される。
(グレード概要)
Xは最量販グレードで、バンパーやアウターハンドルなどにメッキパーツを多用し、クラシカルなイメージを強調している。また、プラズマクラスター付きオートエアコンやドアミラーターンランプ、ABSなど、快適装備や安全装備も充実している。Xリミテッド以上はタコメーター付き2眼メーターが用意されるが、Xはスピードメーターのみの1眼タイプとなる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
楕円を基調としたインストゥルメントパネルは、「ムーヴラテ」と共用する。ただし、「ムーヴラテ」がかなり明るいカラーコーティネートになっているのに比べ、落ち着きのある色使いになっている。パネルの素材は高級感を追求したものではないが、表面がキラキラと光って、軽やかな印象をもたらす。エアコンの吹き出し口、ルームミラーやルームランプなど、すべてが丸か楕円をモチーフとした造形になっていて、全体的に柔らかで優しい感じに統一されている。
(前席)……★★★
シート地は毛足が長く、肌触りがいい。デザインと座り心地が、インテリアの柔らかな雰囲気にマッチしている。ドア内張りは、うまく質感を出した樹脂と、ざっくりした風合いの生地で作られていて質感が高いが、ここだけが少々他の部分と異なった印象をもたらしている。90度開くドアのおかげで、乗降性は良好。このグレードではシートリフターがオプションとなっているが、小柄な女性にはぜひ欲しい装備だ。
(後席)……★★★★
「ミラ」の後席の広さには定評があった。Cピラーが傾いている分「ミラジーノ」は不利で、室内長が45ミリ、室内高が50ミリ小さくなっている。しかし、それでもニースペース、ヘッドスペースには余裕があり、「ミラ」の空間効率がいかに良かったかがわかる。
(荷室)……★★
後部の荷室はミニマムなもの。通常は1人または2人乗車で後席を荷物スペースとして使うことになるだろうし、インパネのアッパーボックスやセンターボックス、助手席シートアンダートレイなどのこまごまとした収納スペースが充実しているので、小物の置き場には困らないだろう。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
「ミラ」がラインナップするSOHC6バルブは採用されず、DOHC12バルブのみが搭載される。「母と娘」が上品に乗ることを前提とするかぎり、静かでスムーズに走り、何の不満もない。坂道でスピードが落ちた時などにフル加速するとさすがにうるさいが、アクセルをかなり深く踏み込まない限り4段ATはシフトダウンしない。あくまで、「高級感と上質感」を楽しむためのクルマなのだ。FF車はすべて4つ星(平成17年排出ガス基準75%低減)と「平成22年度燃費基準+5%」の認定を得ているのは立派だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
Xグレードは13インチの鉄ホイールが標準で、タイヤサイズは145/80となる。Xリミテッドでは14インチのアルミホイールに155/65のタイヤが採用されていて、こちらのほうがステアリング操作への応答性ははっきりと信頼感があった。ただ、このクルマの用途とエンジンの能力を考えると、13インチの仕様で問題が生じることはないと思う。むしろ、柔らかな乗り心地は全体の雰囲気とバランスがとれていると感じた。パワーステアリングは軽すぎず、不自然さも抑えられている。
(写真=高橋信宏/2004年12月)
【テストデータ】
報告者:鈴木真人(NAVI編集委員)
テスト日:2004年12月8日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)145/80R13(後)同じ(トーヨーJ47)
オプション装備:ルージュレッドクリスタルメタリック塗装(2.1万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(10)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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