メルセデスベンツSLK350(7AT)【ブリーフテスト】
メルセデスベンツSLK350(7AT) 2004.11.22 試乗記 ……693.0万円 総合評価……★★★★ 「BMW Z4」や「ポルシェ・ボクスター」ら、スポーティな競合車を意識して生まれ変わった「メルセデスベンツSLK」。新開発の3.5リッターユニットを積む「SLK350」に、自動車ジャーナリストの笹目二朗が乗った。ほぼ満点
フルモデルチェンジは大成功と思われる。内外装のデザインや処理の変更は、一気にクォリティを引き上げる内容で、もはや数世代前の「SLクラス」のランクを凌駕した。先代はメルセデスベンツにしては、ややガキッぽいというか安手なクルマという印象を拭えなかったが、新型は大人の鑑賞に十分耐える仕上がりだ。対象ユーザーの年齢層も上がるだろう。
スポーティカーとしてもよくできている。7段AT「7G-トロニック」は、スポーツカーに乗るにMTにしくはなしと思っている硬派にも、乗ってみたい気にさせる逸品だ。クロースレシオを理解していない6MTもあるが、ATでもこれだけクロースしたギアレシオであれば、マニュアルシフトが楽しめる。「ポルシェ997」のティプトロニックSも、本当はコレが欲しかったのではないか。新開発の3.5リッターV6エンジンは気持ちよくまわる。音もいいし、トルク/レスポンス共に申し分ない。
「満点」といいつつ総合評価が★4つなのは、オープンスポーツとしての魅力にある。クルマのできは満点に近いものの、質問に答える模範解答的な受動的感覚でつくられた製品の香りがその理由。スポーツカーとしては、もうすこし能動的にドライバーをけしかけるような、挑発するところが欲しい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年にデビューした「SLK」は、「Cクラス」をベースに格納式ハードトップ「バリオルーフ」を与えた2座オープン。オープンとクーペを両立する利便性、手頃なサイズや価格が好評を博してヒットした。
7年を経てフルモデルチェンジした新型はシャシーやエンジンを強化し、「このクラスのスポーツカーを凌駕する」という、高い走行性能が謳われる。デザインは、F1マシンや「SLR マクラーレン」を彷彿とさせる、アグレッシブなものとなった。
エアコンの強化や、首まわりを暖めるシート内蔵式ヒーター「エアスカーフ」、バリオルーフの開閉時間を短縮するなど、利便性と快適性にも配慮する。
(グレード概要)
日本に導入されるのは、新開発の3.5リッターV6DOHCを積む「SLK350」(672.0万円)と、AMG製5.5リッターV8を搭載する「SLK55AMG」(959.7万円)の2種類。欧州には1.8リッタースーパーチャージャーを積む「SLK200コンプレッサー」もあるが、導入は見送られた。
SLK350は、ファブリックシートが標準。新機軸の「エアスカーフ」はオプションの本革シート(21.0万円)とセットで用意される。SLK55AMGが装備する、スポーツサスペンションやエアロパーツ、ステアリングホイール上にシフトスイッチが備わる「ステアリングシフト」などは、「スポーツパッケージ」として68万2500円で装着可能だ。
快適装備に不足はなく、DVDナビゲーションシステムや6連奏CDチェンジャーなどを含むオーディオがセットになった「マルチファンクションコントローラー」、左右独立式エアコン、クルーズコントロールなど、至れり尽くせり。ESPをはじめとする電子デバイスも標準装備する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
必要なものはほとんど揃い、操作系の配置は悪くない。タコメーターが右側にあるのもヨシ。ATインジケーターは、ギアポジションの表示が中央にあってよく見える。ナビゲーションシステムや空調関係の操作は、ステアリングホイール上のスイッチはもちろん、センターパネル上のそれも手が届きやすい位置にある。エアコンのスイッチがダイヤル式で、まだるっこしくない操作性もスポーツカー(の運転)に合っている。全体にある程度タイトにまとまっており、スポーツカーらしくドライビングに集中しやすい。
(前席)……★★★★
シートは巨漢、というか肥満体が対象のようで、座面が凹面に処理されており標準体型では持てあます。ただし、電動調整機構を完備しており、好みのポジションに近づけることが可能だ。
シフトレバーは、ジグザグパターンが左ハンドル用に切られており、パーキングに戻す際などやや不自然だが、レバー左右で行うマニュアルシフトには関わりなく、やりやすい。パワーウインドゥスイッチなど、随所に廃されたメタル処理はデザインに貢献するのみならず、薄暗い状況でもわかりやすい。
「エアスカーフ」なる、首筋に温風を吹き出すアイディアには疑問を感じた。頭も暖まってしまうため、運転していて眠くなるのだ。温めるなら肩あたりか。
(荷室)……★★
スポーツカーであること、格納式ハードトップを備えること、これらを勘案し納得できれば不満はないだろう。内部のフタを閉めた状態でないとオープン機構は作動しないから、誤って荷物をツブす心配もない。
とはいえ、絶対的な容量は狭い。ルーフを格納後に残るスペースは、ルーフがフタにように覆い被さるため、荷物へのアクセスも不便である。押し込めるタイプのソフトなバッグならば許容できるもしれないが、長距離旅行などには向かない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
なかなか気持ちのいいエンジンだ。トルク/レスポンス共に申し分なく、エンジン音は排気音だけでなく、メカニカルノイズをともなう快音を発してまわる。7Gトロニックはステップアップ比が小さく、各ギアが本当にクロースしているから、エンジン回転の上下動を待つまでもなく有効にトルクを引き出せる。トルコンを介してはいるがロックアップ機構がうまく働いており、ズルズル滑る感覚はあまりない。その上でギアをスムーズに繋げているのは立派だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地は良好である。スポーツカーのアシらしく適度に引き締まってはいるが、ストローク感もありダンピングよく、終始フラットな姿勢を保つ。アームブッシュのコンプライアンスを取りすぎておらず、停止時にだらしなく前後に動くことはない。
ハンドリングは素直である。メルセデス製のラック&ピニオンギアもようやく歯面の精度を上げてきたようで、作動はスムーズだ。サスペンションは路面変化などによる唐突な挙動変化がなく、安心してタイヤに頼って走ることができた。
(写真=荒川正幸/2004年11月)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2004年10月22日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:1170km
タイヤ:(前)225/45R17(後)245/40R17(いずれもコンチネンタル コンチスポーツコンタクト2)
オプション装備:本革シート+エアスカーフ(21.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:303.9km
使用燃料:41.1リッター
参考燃費:7.4km/リッター

笹目 二朗
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