ホンダ・レジェンド (5AT)【試乗記】
明確な存在意義 2004.10.27 試乗記 ホンダ・レジェンド (5AT) ……525.0万円 販売台数、存在感ともやや薄いホンダのフラッグシップ「レジェンド」。駆動力でクルマを“曲げる”「SH-AWD」をひっさげて登場した4代目はどうなのか。自動車ジャーナリスト生方聡が試乗した。存在感がある
実に8年半ぶりのフルモデルチェンジで生まれた4代目「レジェンド」である。フラッグシップなのに地味な印象だった3代目とは打って変わり、新型レジェンドには自らをアピールする独自性が、そこかしこに見え隠れする。
たとえばフロントマスク。低く堂々と配置されたクロームメッキのラジエターグリルと眼光鋭い4灯式ヘッドランプが「ただのラクシャリーサルーンとは違うんだよ」といわんばかりに、スポーティな雰囲気を醸し出す。とくに濃色のボディカラーを選ぶとそれは顕著で、これまでのレジェンドとは段違いの存在感を示すことになるのだ。その一方で、全長は旧型よりも65mm短い4930mmに収められており、大きさを誇示するのではなく、ぎゅっと詰まった感じが印象的である。
メカニズムの面でも“我が道を行く”ホンダの姿勢がありありとうかがえる。280psの自主規制を破った3.5リッター自然吸気V6エンジンもさることながら、このクラスとしては少数派といえるフルタイム4WD「SH-AWD」を採用。さらに、それが積極的に運転を楽しむためのシステムというのが、いかにも彼ららしいやり方だ。昨今のホンダはスポーツカーに元気がなく、F1で注目されても、思い浮かぶのはミニバンばかり……。そんなイメージを、このクルマが払拭してくれるかもしれない。
走る、曲がる、曲がる!
このSH-AWDは、走行状況にあわせて四輪の駆動力を柔軟に配分するもので、前後輪の駆動力を7:3〜3:7の範囲でコントロールし、さらに、後輪の駆動力を左右へ10:0〜0:10の範囲で配分できる。これにより、たとえばコーナリング時には外側後輪に大きな駆動力を伝えることで、クルマを内側に仕向けることが可能になるわけだ。
今回、その実力を箱根のワインディングロードで試したのだが、実に運転が楽しいのである。アクセルペダルを緩めて、あるいはブレーキでスピードを落としてコーナーにアプローチすると、鋭さこそないものの、ごく自然にノーズがコーナー内側に向かっていく軽快感がある。当然、この状況ではSH-AWDは効いておらず、ボディの徹底した軽量化や重心から遠いところを軽くする工夫や、フロントがダブルウィッシュボーン、リアにマルチリンク式を採るサスペンションの絶妙なチューニングが生み出す特性である。
それだけで、ボディサイズがひとまわりもふたまわりも小さく感じられるが、このクルマのお楽しみはこれからだ。コーナーの途中からアクセルペダルを踏んでいくと、並みの前輪駆動車ならアンダーステアが強まってフロントが外に逃げたり、あるいは前輪にトルクを伝えきれず、スタビリティコントロールが効き始めるところなのに、レジェンドの場合は、強大なトルクを持て余す素振りも見せずに、オンザレールの感覚でコーナーを駆け抜けていくのである。しかも、「オレって運転上手かったんだ」と思い上がりそうなほど、自然で安定したマナーなのだ。
もちろん、この気持ちよさに貢献しているのが、アクセルペダルの操作に即座に、しかも、力強く応えるV6ユニットであるのはいうまでもない。実用域での力強さに加えて、5000rpmを超えてもなお伸びていく逞しいエンジンをパドルシフトで自在に操れば、ラクシャリーサルーンであることを忘れてしまうほど、スポーティなドライブが楽しめるというわけだ。
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まさにドライバーズサルーン
ワインディングロードから戻る道すがら、インテリアをチェックする。メーカーオプションの「エクスクルーシブパッケージ」が装着された試乗車は、レザーシートや天童木工製の本木目パネルが奢られて、上質な雰囲気をつくりあげている。ただ、どうせなら、センター部に配されるシルバーのパネルを“メタル調”ではなく、本物のアルミパネルにしてほしかった。そんな些細なことが気になってしまうのは、それ以外の部分がうまくまとめ上げられているからかもしれない。
あまりの楽しさに後席に座るのを忘れてしまったが、わざわざ後席に座るためにこのクルマを買う人はすくないはずだ。ドライバーズサルーンとして実に高い魅力を備えるレジェンド。ライバルとは別のベクトルを持つ、その存在意義は明確である。
(文=生方聡/写真=荒川正幸/2004年10月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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