第165回:眼からウロコで温故知新!?スカイライン「S54B」初試乗!すんげぇよかった〜
2004.09.28 小沢コージの勢いまかせ!第165回:眼からウロコで温故知新!?スカイライン「S54B」初試乗!すんげぇよかった〜
■正直いうと……
正直、申し上げましょう。俺、スカイラインに対して「ステキ」って思ったこと、ほとんどないのね。免許取り立ての時に現役だった、6代目とか7代目はもちろん、8代目のR32にもそれほどシビれなかった。
いや、走りは最高だったよ。すんげぇよかった。感激もした。ただクルマとしてインテリジェンスを感じないっつうのかなぁ。個人的に欲しいと思ったことはほぼ皆無。最大の原因はあのスタイルにあり、イメージにある。
「走りの日産」をひとり肩に背負ったような、独特の重苦しい感じっての? 漠然と、俺が「讀賣巨人軍」に感じるような堅苦しく、排他的なイメージが苦手だった。名車と呼ばれる箱スカ、ケンメリですら、正直、俺にとっては「単なるヤンキー車」でしかなく、魅力に乏しい。
仕事柄、実際見ると、驚くほど小さく、締まっててカッコいいのも、エンジンが素晴らしいのもわかるんだけどね。現役当時に見たんならともかく、そのクルマと同時に生まれたような世代の俺としては、一度たりとも「欲しい」と思ったことはない。R32「GT-R」は一回持ってたことはあるけどね。
■永遠の国産名車
ところがどっこい、先日取材で2代目「プリンス・スカイライン」のS54Bと、それと同じ直6載っけたグロリアを所有する“プリンス狂い”の方と会ったのよ。そ、S54Bってのは第2回日本グランプリで「ポルシェ904」を(一時だけど)抜いた永遠の国産名車。
いつものように、マニアな方なんだろうなぁと思いつつ取材していると「ぜひ一度乗ってください」と真顔でおっしゃる。こちとらそれが本業だし、元々、運転は好きだからなんの気なしに乗ったのよ。あまり期待せずにね。
そしたらさぁ。これが感激! いいのよ。なんとも言えずにイイのよ。一見、普通のおっとりとしたファミリーセダンでしょ。当時の小型車規格に合わすべく、全幅はわずか1.5m以下で正直、スポーティさはない。
ところが座ったとたん、なんかしっくり来る。座面が結構低く、なおかつインパネはシンプルで見やすく、結構モダンデザインでカッコいい。
■ストレスのない6気筒
でさぁ。その「G7」って型式名の6気筒エンジンが素晴らしい。実に約40年前の設計。しかもわずか125ps(といっても凄いが)だし、性能は期待してなかったんだけど、下からトルクがあって扱いやすいうえ、上までキッチリ回る。
特に驚きなのはそのストレスのなさ。2速、4000rpm付近でたらたら回しても重苦しさがない。これ、俺の基準でいう、いいエンジンの証拠で、6気筒でいうと一部のBMWとか、ポルシェぐらいにしか感じられない。
さらにね。4気筒用ボディに無理やり6気筒を載せてるから、ノーズが重くなって「アンダーだアンダーだ」言われてる操縦性が、ことのほかいい。たしかにアンダーだけど、ステアリングはきっちり舵が効くし、アンダーのわりにフィーリングがいい。古い国産車にありがちな、タイヤを無理やりこじってる感触がすくない。ホント、爽快。リアシートやトランクスペースもそれなりにあるし、まるで昔のBMWに乗ってるみたいでした。マルニー(BMW 2002)とかマトモに乗ったことないんだけどね。こういう感じになんじゃないかなぁ。
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■プリンス自動車の偉大さ
初めてプリンス自動車の偉大さが垣間見えた気がしました。これが40年前のクルマだなんてとても思えない。オーナーさんは、
「当時は営業力の勝ったメーカーが生き残ったんです。それは日本の自動車文化にとっては損失だったかもしれませんね」と言ったけど、まさにその通り。プリンスがそのまま順調に育ったら、BMWやポルシェみたいなメーカーになったのかも……なーんて、いきなりホメすぎか。
でもまあ、戦後の戦闘機づくりの流れを汲む、自動車エンジニアリングの凄さの一端を覗いたような気がしました。日本ってやっぱ凄かったのね。
尊敬いたしますです。先達の方々。
(文と写真=小沢コージ/2004年10月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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