ポルシェ・ボクスターS(6MT)【ブリーフテスト】
ポルシェ・ボクスターS(6MT) 2004.08.03 試乗記 ……790万1250円 総合評価……★★★★ ポルシェといえば、RRレイアウトがユニークな魅力を醸す「911」。一方、弟分「ボクスター」も、リーズナブルな価格でポルシェユーザーの拡大に成功した。3.2リッターを積む上級「ボクスターS」を、生方聡がインプレッション。
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才色兼備
「オープンカーの爽快さとスポーツカーの興奮を兼ね備えたクルマ」
……「ボクスター」を一文で表現すると、こんなところだろうか?
ポルシェファンの裾野を広げることになったボクスターだが、人気の理由はすぐわかる。エンジンレイアウトこそ「911」とは違うけれども、911の持つエンジンの気持ちよさや軽快な身のこなしは確実に受け継いでいるし、一目でポルシェファミリーの一員とわかる佇まいも備えている。
能書きなしでも、一度ステアリングを握ってみれば、その楽しさに心躍らずにはいられない。幌を下ろせば、たとえ絶対的なスピードが高くなくても、スピード感は味わえるし、幌を上げれば、運転だけに没頭できる自分だけの空間が手に入る。
そんなボクスター、日常の足として十分耐えうる実用性も備えており、まさに才色兼備のオープン2シーター。一度は手元に置いてみたいクルマである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年にデビューした、ミドエンジンのオープン2シーター。レースカーを含め、ポルシェはミドエンジンモデルをいくつか販売してきたが、量産車としては「914」に次ぐ2車種目の挑戦である。高性能で豪華、したがって高価になった「911」に対し、量販を狙った普及版ポルシェの役割が与えられた。ホイールベース2415mm、全長4320×全幅1780×全高1290mmと、ボディサイズはやや大ぶり。2003年モデルからボディ表面の空力的手直しと、電動ソフトトップの構造・形状変更を受け、リアウィンドウはガラス製になった。
ミドに置かれるパワーソースは、伝統的な水平対向6気筒DOHC24バルブの水冷エンジン。当初は2.5リッター(204ps)でスタートしたが、細い低回転トルクによる使い勝手の悪さ、モアパワーの声に応えて、1999年に2.7リッターへサイズアップ。さらに、3.2リッター搭載の「S」を追加設定した。2003年モデルからは、どちらもバルブコントロール機構「バリオカム」の採用でパワーアップを果たし、2.7リッターは228psへ、3.2リッターは260psとなった。トランスミッションは、5段(ノーマルモデル)/6段(Sモデル)マニュアル、または5段「ティプトロニックS」の組み合わせ。駆動形式はもちろん後輪駆動である。サスペンションは4輪ストラット/コイルの独立式。
(グレード概要)
エンジン排気量がグレードを意味する「ボクスター」において、3.2リッターを積む「ボクスターS」はトップグレード。グレードを問わず、標準装備品はほぼ同じだ。アルカンタラ&レザレットのコンビネーションシート(電動調節式)や、本革巻きステアリングホイール+シフトノブ、フルオートエアコン、パワーウィンドウや熱線入り電動調節ドアミラーが備わる。オーディオは、CDラジオユニットとアンプ、6スピーカー付きだが、CDチェンジャーは別売り。ボクスターSにのみ標準装備されるのは、室内センサー付きアラームシステム、ホワイトメーターパネル、リモコンキーなど。
ただし、オプションのボディ&インテリアカラーやトリム、装備品は多彩だ。エクストラ料金と納期を気にしなければ、好みの仕様でオーダー可能。たとえばボディカラーは、57万7500円で、ユーザーが指定したオリジナルカラーをサンプルに合わせて調合、塗装してくれる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
中央に大型のレブカウンター、左にスピード、右に水温と燃料計が配置されたメーターパネルは、911で見慣れたデザイン。911との関係をアピールしながらも、ホワイトメーターを採用したり、文字盤の数字の字体を変えることで、911よりも軽快な印象を与える。表面に凹凸を設けたダッシュボードは、カジュアルでスポーティな雰囲気を演出するが、メーターの両脇やダッシュパネルを飾るグレーのプラスチックパネルの質感が不足気味なのが気になる。ポルシェファミリーのなかでは“お手頃な”モデルとはいえ、価格682万5000円のクルマには不釣り合いだと思う。
(前席)……★★★★
ヘッドレスト一体型のレザーシートは、張り出したサイドサポートのおかげで体をしっかり受け止める。だが、腰の部分がやや狭く、スリムなボディの持ち主でないと窮屈かもしれない(私には狭かった)。シート調節はスライドが手動、リクラインは電動になる。
オープン2シーターということで室内の収納が心配されたが、シートの背後に薄手のバッグくらいなら置けそうだし、ロールバーの下のあたりに地図がすっぽり入りそうな収納もある。そのほかにも、細かい収納スペースが充実しているので、小物の置き場には困らずに済みそうだ。
(荷室)……★★★
ラゲッジスペースも想像以上に広い。911と違い、ボクスターではエンジン後方にもラゲッジスペースが確保される。さほど高さはないけれど、奥行き、幅とも十分で、アタッシュケースなら簡単に飲み込んでしまう。一方、ノーズ部分のスペースは奥行きや幅は狭いが、深さが70cmほどもあり、ちょっとした旅行カバンくらいなら十分収まる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
エンジンとの対話こそ、このクルマの大きな魅力だ。といっても神経質なところはまったくない。たとえば、重たいクラッチをアイドリングでつなぐ場面でも、トルクは十分なレベルなのでエンストを気にしなくていい。アイドリングでこうだから、2000rpmあたりの低回転域で物足りなさを感じるわけがない。頼もしいばかりの力強さと柔軟さを兼ね備えている。もちろんお楽しみはそれ以降の領域で、4000rpmを超えたあたりから、心地よいエンジンサウンドとともに一気に上り詰めるような加速が得られるのは、まさに快感。しかも、そのフィーリングにはポルシェらしい硬質さがある。やはりマニュアルで操りたいクルマである。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
エンジン同様、このクルマを乗りこなすうえでも神経質になる必要はない。前225/40ZR18、後265/35ZR18のタイヤ(ピレリ PZERO ROSSO)と締め上げられたサスペンションは、明らかに硬い乗り心地を示す。だが、不快さはなく、街なかでもさほど疲れないし、高速でも安定した姿勢を保つ。荒れた路面ではそれなりにショックが伝わってくるが、ピッチングがよく抑えられているおかげで印象は悪くない。
今回の試乗では、高速コーナーの続くワインディングロードを中心に試した。こういった状況下では、ドライバーにロールを感じさせることなく、安定したコーナリングを見せる。ミドシップがもたらすノーズの軽さを実感しながらも、それによる不安をおぼえることがないのも、また、ボクスターの扱いやすさにつながっている。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2004年2月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:20525km
タイヤ:(前)225/40ZR18 (後)265/35ZR18(いずれもピレリ PZERO ROSSO)
オプション装備:スポーツデザインパッケージ=30万4500円/ウィンドディフレクター=5万7750円/PSM=17万8500円/シートヒーター=6万8250円/フロントウィンドシェード=1万5750円/キセノンヘッドライト=14万7000円/スポーツシャシー9万4500円/18インチカレラホイール=21万円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(4):山岳路(4)
テスト距離:348.3km
使用燃料:45リッター
参考燃費:7.7km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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