ボルボS40 T-5(5AT)/V50 T-5(5AT)【試乗記】
セダンがんばれ! 2004.07.10 試乗記 ボルボS40 T-5(5AT)/V50 T-5(5AT) ……430万5000円/467万2500円 ボルボのエントリーモデル「S40」「V50」がデビュー。スタイリッシュに生まれ変わったコンパクトセダン/ワゴンはどうなのか? 鹿児島で開かれたプレス試乗会に、『webCG』本諏訪裕幸が参加した。ボルボという言葉
私が大学生のころ、1990年代の半ばだが、ある雑誌のアンケートで「彼氏に乗ってもらいたいクルマは?」というものがあった。その回答に、「ベンツ」「ポルシェ」などが名を連ねるなか、「ボルボ」という答えが並んでいたのにビックリした記憶がある。もちろんどれも会社(ブランド)名で、特定のクルマを意味していない。
アンケートには続きがあった。「じゃあ絵を描いてください」。ベンツはスリーポインテッドスターを、ポルシェではカエルの目のようなライトを描く回答者たちは、ボルボで2ボックスを描いた。「ボルボ」とはステーションワゴンを意味していたのである。具体的には当時出ていた「850エステート」。セダンもあったのに。
そんな不遇な“ボルボのセダン”に一躍脚光が浴びせられたのが、2000年に本国デビューを果たした「S60」だった。当時ボルボのデザインを仕切っていたピーター・ホルバリー氏快心のハンサムカーである。
スタイリッシュの波は、わが国ではやはり比較的不遇だったコンパクト・ボルボのカテゴリーにもうち寄せてきた。ニューシリーズセダンの「S40」、そしてエステート「V50」である。
リポーターはS40/V50のプレス試乗会場である、鹿児島の地に降り立った。そこには、“スウェディッシュ・ダイナミックサルーン”“ニュースポーツエステート”と銘打たれたS40/V50が、好天の下、堂々と肩を並べていた。試乗グレードは、セダンとワゴンのトップグレード「T-5」。ターボエンジンを搭載し、220psのパワーを誇る。
従来よりボルボのエントリーモデルとして、S40、そして「V40」はラインナップされていた。以前は車名を同じ数で揃えていたが、今回は上級モデル「S60」「V70」とあわせ、セダンを偶数番台、ワゴンを奇数番台に統一。「三菱カリスマ」のプラットフォームを用いて、オランダ「ネッドカー」で生産された先代とは違い、今回は次期「フォード・フォーカス」とプラットフォームを共用。S60/V70と同じく、ベルギーのゲント工場で生み出される。エンジンラインナップはセダン、ワゴン共に、2.4リッター直5を2種(140ps、170ps)と2.5リッター直5ターボ(220ps)。駆動方式は、当面FF(前輪駆動)のみの設定で、組み合わされるトランスミッションは5段ATだけとなる。
適切な運転姿勢で
まずは、V50のドアノブに手をかけた。
正直、先代V40のデザインはパッとしなかった、と思う。当時、他のモデルがカクカクと角張っていたのに対して、なぜか丸まったデザイン。テールランプ形状も独特で、リアから見るとどこのクルマかわからない感があった。しかし、ピーター・ホルバリー率いるボルボのデザイン部門のトライが、1995年デビューの、このモデルから始まっていたのである。
S60、V70で新しいチャレンジが花開いたのは、ご存じの通り。新型では、フロントグリルはもちろん、Vシェイプボンネット、ワイドショルダー、テールランプ形状など、現行ボルボラインナップ共通のデザインアイデンティティが取り入れられた。リポーター的には、ようやく仲間入りという感じか。
ニューコンパクトエステートは、ルーフレールがオプション設定なのが、見た目のスマートさに貢献している、と感じた。ワゴンユーザーは必ずしもルーフレールを求めていない。ステーションワゴンが、実用車からスタイリッシュなクルマに変わったひとつのあらわれだろう。
上級モデルと同じタイプのシートが装備されるのもうれしいところだ。クッションが適度に柔らかで、座面がタップリしており、ヘッドレストがちょっと前に傾いているボルボのシートはリポーターのお気に入りである。室内空間はクールの一言。シンプルでかつ機能的なデザインを目指したというインテリアは、イヤミもなく、汗くさい“やる気”も感じさせない。
シートに収まり8ウェイのパワーシートでポジションを調整。ステアリング位置をチルトとテレスコピックで動かすと、これがかなり手前まで引くことができた。可動範囲の大きさに、感動した! 体型的にシートポジションを遠くに置いてしまうため、つまり足が長いリポーターにとって、テレスコピックの量は、非常に重要なポイントなのである。言うまでもなく、運転姿勢をしっかりさせることは、安全運転につながる重要なファクターだと思っている。
やはり安全第一のボルボ
左手でキーを捻る。S40/V50のイグニッションキーを刺す位置は、ステアリング左側のダッシュボード中にあるのだ。デザイン上の演出か? と思いきや、安全上の理由。衝突時に、キーと膝との接触を避けるためだという。サーブと同じだ。
コンパクトクラスでもボルボの安全思想は守られている。トップレンジの「S80」に比べ、全長で380mm短いながらも、前方衝突安全性を同等レベルにすることが目標とされた。そのために新開発された、全長が短いRNCエンジンや衝突時のエンジン脱落を計算したマウント。前方からの衝撃を3方向に分散する「3レッグサポート」をフロントセクションに用い、4種類の異なる強度のスチールを配置するボディ構造を採用するなど、あらゆる手を使っている。室内にもデュアルモードエアバッグ、サイド/カーテンエアバッグに加え、おなじみの鞭打ち抑止機構「WHIPS」や変形するステアリングコラムなども備わる。
被衝突者のことも考え、ボンネットとエンジンの間に衝撃を吸収する空間を設けている。さらに外板にも部分によって柔らかいものを使用。フロントバンパー部分は一番柔らかい材質を用いており、手で押すとペコペコとへこんでしまう。「ボルボ」という言葉が暗示するもうひとつの意味、「安全」も忘れられていない。
しかし安全性というのは乗っていてもなかなかわからない。いざという時のものは重要だが、やはり普段はデザイン、乗り心地の方が気になるものだ。相対的にアピールがすくない走行性能をチェックしつつ、恵まれた天候の下、鹿児島の道を走りだす。
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剛性の高さ
試乗コースの隼人町〜指宿市は、かなり山道が多い。
地図を見ながらルートを確かめ、ドアポケットにしまう……、と思ったがドアポケットが小さくて、A4版の本が入らない。収納場所は他にもあるが、ここと決めている場所に入れられなくてビックリしてしまった。T-5グレードは12スピーカーのプレミアムサウンドオーディオシステムが標準で装備され、フロントドアスピーカーが大きいためにポケットが小さくなっているのだ。
内装のクールさとは裏腹に、エンジンはゴロゴロとうるさく、そのサウンドは多少暴力的。排気音も気持ちいいとは言えない。1500〜4800rpmという低回転で最大トルク(32.6kgm)を発生する実用エンジン故に、あまり回して楽しむユニットではなさそう。トルキーという言葉の方が適切だ。さらに重めのアクセルペダルフィールと相まって、“そろそろ”と加速するのは苦手っぽい。
上りの山道に入ると、一転、そのパワーが活躍する。必要なときに必要な加速が得られる。レスポンスがよく、ストレスを感じない。
足まわりは硬め。ピレリP7の17インチ50扁平タイヤも多少硬さを感じるが、乗り心地が悪いと感じないのはできのいいシートのせいもあるだろう。
帰り道はセダンに乗る。S40の試乗車は、ボディカラーのドーンブルーパールが落ち着いていて、いい色だった。ボルボはボディカラーも絶妙なセレクションをしている思う。外見でのワゴンとの違いは、もちろんルーフラインとリアセクション。個人的にはS60の流れをくむCピラーのラインと、リアデッキのボリューム感が気に入っている。サイドビューが抜群にカッコいい。
乗り味はほとんどワゴンと変わらず。そういう意味では重量が違うワゴンは、剛性アップの努力などもあり、そうとうがんばっている。今度はノンビリ音楽を聴きながらクルージング。運転しているとワゴンだかセダンだかわからなくなるが、音響はやはりワゴンの方がいい。
セダンとワゴンで購入を迷うというのは現実的ではないだろうが、実際に2台を乗り比べてみると、正直ワゴンの方が美点が多い。やはり「ボルボ」の魅力は「ワゴン」にあり、か。
しかし、リポーターはこのスタイリッシュセダンを応援したい。ボルボは輸入プレミアムステーションワゴン市場でダントツのリーダーとなっているが、セダンに弱い。特にコンパクトクラスでは、ライバルたちに大きく溝を開けられている。しかし、裏を返せば、それだけ成長の余地があるということだ。
“オヤジ臭い”と言われがちな、昨今のセダンイメージを吹き飛ばすかのようなデザインのS40。「ボルボのセダン」を確立する、火付け役となってくれるのを期待する。
(文=webCG本諏訪裕幸/写真=高橋信宏/2004年7月)

本諏訪 裕幸
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