トヨタ・パッソ/ダイハツ・ブーン(4AT/4AT)【短評(後編)】
スーパー日常カー(後編) 2004.06.20 試乗記 トヨタ・パッソ/ダイハツ・ブーン(4AT/4AT) トヨタとダイハツが共同で開発した「トヨタ・パッソ」「ダイハツ・ブーン」。新しいリッターカーを、『webCG』コンテンツエディターのアオキがドライブした。千葉県は幕張の街から報告する。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
即物的モノ置き
トヨタとダイハツがリッターカー市場に投入したニューモデル、「パッソ」と「ブーン」のプレス試乗会に参加している。
空色の「ブーンCL」に乗る。新開発の1リッター直列3気筒(71ps/6000rpm、9.6kgm/3600rpm)を搭載したベーシックカーのベーシックグレードである。
思いのほかシートがいい。座面には十分なクッションが使われ、背もたれのサイズも不満ない。軽自動車の場合、バックレストの角度は左右どちらか一方でしか保持しないのが普通だが、ブーンのそれは、左右両側で留められるから、しっかりしている。
座面の高さは「トヨタ・ヴィッツ」より10mmほど高く設定されているが、にもかかわらず床面が高い印象を受けたのは、フロア前縁からペダル向こうのトーボードへつながる部分が、坂になって盛り上がっているからだ。これは、乗員の居住スペースをギリギリまで前に出してエンジンルームを圧迫したからで、また、ニューコンパクトカーのAピラー付け根は、キャビンを大きくとるため、やはり通常より前に設定されたという。
センターコンソールの下には、“ちょい置き”に便利な深く大きなモノ入れ「マルチトレイ」、クローブボックスの下には、ティッシュ箱をベンチマークにしたという、深さと奥行きのある「ワイドフリーラック」が用意される。ヴィッツの、有機的なデザインで構成されたモノ置きと比較するといかにも即物的だが、使い勝手は抜群にイイ。
感心したのは、灰皿が標準装備から落とされたこと。社会的責任のある企業として当然の選択で、かわりに従来なら灰皿となる場所に、カップホルダーとして兼用できる引き出し式モノ入れが設置された。
拡大
|
拡大
|
気になるロードノイズ
ブーン1リッターモデルを、千葉県幕張の街で運転した感想は、軽自動車を試乗したときのインプレッションと同意匠で恐縮だが、“まるでリッターカーらしからぬ”ドライブフィールで、オドロイタ。
まず、エンジンが静かだ。フル新設計のオールアルミ3気筒は、軽量コンパクト。重量58kgと、鋳鉄ブロックを用いる「軽」用3シリンダーの、6、7割程度の重さしかない。幅の広いタイミングベルトを捨て、コストのかかるチェーンベルトを用いてまで、体積を抑えている。
もちろん、車内の静粛性はエンジンだけに依るものではないが、ギリギリまで削られたエンジンルームにもかかわらず、普通の街乗りでノイズが気になることはない。フルスロットルにすればエンジン音は高まるが、3気筒特有のプルプルした安手な感じが、新エンジンではグッと薄まった。絶対的には、遅い。
乗り心地は、約900kgというウェイトにもかかわらず、一種の重厚感がある。予想していた“リッターカーの軽快な走り”とのギャップゆえ、余計にそう感じたのかもしれないが、いずれにせよ、衝突安全テストに対応した剛性感高いボディと、パッソ&ブーン用に新開発したシャシーの恩恵だろう。今回のニューモデルが市場に投入されたことで、これまでの軽自動車由来の“小型車”は、そうとうツラいことになると思う。
一方、静かな車内で響くのは−−ザラついた路面が多かったということもあろうが−−フロア下から侵入するロードノイズである。タイヤサイズは、1リッターも1.3も同じ「155/80R13」。この日の銘柄は、「ファルケンSINCERA SN-535」だった。
拡大
|
拡大
|
贅沢すぎる
1.3リッター直列4気筒は、「ストーリア」からキャリーオーバーした「K3-VE」エンジンで、90ps/6000rpmの最高出力と、12.6kgm/3200rpmの最大トルクを得る。排気量が大きいぶん、余裕をもって新型コンパクトを走らせるが、1リッターモデルに感銘を受けた直後ということもあり、「なんだか贅沢にすぎる」もったいなさがつきまとう。荷物をたくさん積んだり、リアシートに人を乗せる機会が多いヒトには、いいかもしれない。あと、1.3リッターモデルにはドライバーズシートに上下調整機能が付くから、運転姿勢にこだわりがあるヒトにも。
パッソ&ブーンの後部座席は、シートクッションを前方斜め下に一段落としてから、背もたれを倒すダブルフォールディング式。左右非対称の分割タイプだ。
おもしろいのは、シートクッションを一段落とした状態を「ロングクッションモード」と名付けて、ひとつのポジションとしていることで、座面からフロアに落としたくないモノを積むときに便利。また、ダイハツ得意の広く開くドアを活用すれば、「赤ちゃんのオシメを替える場としても使えます」。会場でエンジニアの方からそう教えていただいたとき、その説得力ある説明に、甲斐性なしのリポーターは、うなった。
パッソ&ブーンの価格は、1リッターが94万5000円、1.3が111万3000円から。FF(前輪駆動)ほか、1リッターモデルにはビスカスカプリングを用いた、「生活ヨンク」がカタログに載る。
両社入魂のコンパクトカーは、アグレッシブな価格設定と日常の使い勝手を煮詰めた完成度で、ライバルを蹴散らし、リッターカー市場を超えたマーケットを真っ赤に染めそうだ。あ、この赤はプチトマトの色ね。
(文=webCGアオキ/写真=清水健太/2004年6月)
トヨタ・パッソ/ダイハツ・ブーン(4AT/4AT)【短評(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015372.html

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。






























