ボルボV50 2.4/V50 2.4i(5AT)【海外試乗記】
穏やかで優しい 2004.03.04 試乗記 ボルボV50 2.4/V50 2.4i(5AT) 内外とも、まったく新しくなったコンパクトボルボ。「V40」後継ワゴンたる「V50」の、ハードウェアのハイライトと、そのドライブフィールを、自動車ジャーナリストの笹目二朗が報告する。プラス45mmのエステート
今年2004年に登場する新型車のなかでも、「ボルボS40/V50」系は特別な注目株である。先に発表されたS40に続いて、そう間をおかずにエステート版のV50が発表され、同じスペイン・マラガで試乗会が催された。
従来のS40/V40系はオランダ生産車であったが、今回のニューモデルのために、ベルギーのゲントに新工場が建設された。ボルボにとって最大の生産工場とあって、これまでとは意気込みがまるで違う。V50の年間販売目標は7400台と発表されている。ボルボは伝統的にワゴン比率が高いから、コンパクトモデルでもV50エステートが主役であることに変わりはない。
基本的な内容はS40と変わらず、根本から新しくなった。V50は、セダンボディより45mm後部を延長して、ワゴンスタイルを採り入れたものだ。寸法的な違いはこの全長だけ。全幅、全高、ホイールベース、トレッドなどはセダンと同一である。
なんと知的な
ハードウェアのハイライトは、ボルボと言えば安全車、当然ながら注目すべきはボディということになる。新しいボディの特徴はショートノーズのキャブフォワードデザイン。これが見つめる時間の長さとともに新鮮に感じられてくる。いまやロングノーズやクラッシャブルゾーンという言葉は、古臭くさえ響く。
V50は異なる強度を持った材質を段階的に複数組み合わせて、あらかじめ計算されたプロセスを経て、効果的に衝撃を受け止めていく。何と知的な構造設計だろう。スペースを確保すればいいという考えではなく、これは順番に折り畳まれていくような、キャッチボールの手首の動きのような、整然とした理論的イメージでショックを収めていく。
この辺が単なる思いつきやひと真似でない、ボルボにしか成しえない、自動車づくりの経験に基づいた歴史を感じる部分だ。この裏付けがあるからこそ、ショートノーズが光るのだ。丸いふくらみや穏やかな表情は、対人や交通弱者にたいしても優しく感じる。
軽快と安定性
このショートノーズは、セダンS40同様、軽快な旋回性に貢献する。延びたボディ後半の恩恵は後輪荷重の増加となり、テールに落ちつきを与えた。乗り心地の面でも効果ありで、よりフラットで重厚さが出てきた。ドイツ車のようにストロークを拒絶するほど硬くなく、バネ下はよく路面に追従して動き、大きなうねりに対してのダンピングもよい。
セダンとの違いをまとめると、軽快なフットワークに安定性が加味され、乗り心地がより洗練されたということだ。セダンの試乗会のときはまだ試作の段階で、細部の仕上げに量産レベルの域に達していない箇所も見受けられたが、さすがに今回は生産車の仕上げで、そうしたラフな面は少なかった。
安定性を増したといっても、けっして動きが鈍化したわけではない。電動ポンプによる油圧パワーステアリングの操舵フィールは自然だし、もはやエンジン駆動による油圧ポンプのスイッシュ音とも無縁だ。
エンジンは3種類
5気筒エンジンの吹け上がりは申し分ない。整理整頓されたレイアウトにより、コンパクト化されたエンジンは、いままでより耳に近い位置に来たが、頻繁に使用する3000rpm以下では十分に静粛。高回転域では数多くのパーツがきちんと揃った精度をもつ感じで、硬質な澄んだ快音を発して回る。
ATはアイシン製の5速、ティプトロ・タイプのマニュアルシフトも、ギア比の設定がよく気持ちよく操作できるし、Dレンジの自動でもストレスは少ない。それでも一段とスポーティなスタイリングを得た新型V50にしてみれば、5段MTはさらにダイレクトなパワーフィールを味わえるから、販売が一段落したら、低パワー仕様でいいからMTも追加して欲しいところだ。
エンジンのラインナップは2.4の140psと170ps、それに高性能版2.5Tの220psが用意される。なお4WDも存在するが、日本への導入はすこし遅れるようだ。
(文=笹目二朗/写真=ボルボカーズジャパン/2004年2月)

笹目 二朗
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