スバル・レガシィ3.0R(5AT)【海外試乗記】
リーズナブルな仕上がり 2003.10.31 試乗記 スバル・レガシィ3.0R(5AT) ……300.0万円 新生レガシィのフラッグシップたる3リッター6気筒搭載モデル「3.0R」と、SUV風のエクステリアをもつ「アウトバック」が、新型のデビューから半年遅れて登場した。オーストリアに日本仕様を空輸するほど、スバルが気合いを入れた国際試乗会で、自動車ジャーナリストの河村康彦が乗った。3.0Rとアウトバック
「試作ユニットを含めれば、弊社の“その”歴史は、ゆうに20年を越える」
――開発担当者の口からそんな声が聞かれたのは、水平対向6気筒エンジンを積む「レガシィ」の追加モデル「3.0R」シリーズについてである。グレード名が示す通り、3リッターの心臓を積むのは、セダンとツーリングワゴン。加えて、従来「ランカスター」と呼ばれたSUV風デザインのモデルが、海外仕様が使っていた「アウトバック」へと名を変え、フルモデルチェンジして登場した。
ちなみにアウトバックは、2003年9月に開催されたフランクフルトショーが、日本に先駆けた世界発表の場となった。もっとも、新型レガシィシリーズ、ヨーロッパでの人気はいまひとつ。新型レガシィが悪いのではない。彼の地では、いまや「ディーゼルモデルがないと量販の舞台に上がれない」というのが現実なのだ。
水平対向という特殊なエンジンに合わせて設計したボディを採用するゆえ、周辺メーカーから“適当なディーゼルエンジン”を買ってきてポンと積むわけにはいかない。ユニークなメーカーであるがゆえ、スバルはこのあたりがツライ……。
フランクフルトショーで登場したツーリングワゴン「3.0R」に、ヨーロッパはオーストリアで乗った。ちなみに、テストしたのは日本向けの右ハンドル仕様。スバルは、この地で開催される国際試乗会の日本人向け日程に合わせて、わざわざ日本仕様を空輸したのだ。レガシィといえば、なんといっても富士重工の屋台骨。それゆえ、しっかり気合いが入っているのでアル。
控えめ内外観
レガシィのフラッグシップたる3.0Rの外観は、うっかりするとこれまでの4気筒モデルと見紛いそうだ。フロントバンパーは、開口部形状を中心に専用デザインを採用。一部に“光りモノ”を採用したフロントマスクが特徴である。とはいえ、これに気が付かないと、4気筒モデルとの識別は困難だ。6気筒レガシィのエクステリアデザインは、かくも自己主張が控えめなところが、むしろウリなのである。
インテリアも、4気筒からの大きな変更点はない。ただし、インテリアカラーに合わせて、シート表皮にアイボリーレザーを用いた「アイボリーレザー・セレクション」を、6気筒モデルの専用オプションに設定された。ツートーン基調のインテリアカラーをベースに、メープルウッド調パネルを各部に配したこの仕様は、確かに4気筒モデルにはないプレミアム性の高さが感じられる。ちなみに、3.0R標準のインテリアは、シンプルなオフブラック仕様となる。
力強い新ユニット
ワゴン3.0Rに乗り込み、イグニッションキーを捻る。6気筒の回転フィールが4気筒のそれより滑らかなのは当然だが、このクルマの場合、その滑らかさをスターターモーター回転の時点から実感することができる。
従来型レガシィが積む6気筒ユニットは、低回転域でのトルク感が少々細いことがウィークポイントだった。しかし、新型はそのマイナスイメージをスッキリと解消。実は今回の6気筒ユニットは、従来型をベースにしながら、ヘッド周りを中心に大幅なリファインが加えられたのだ。
吸気バルブ駆動システムには、ホンダ「VTEC」ばりの可変バルブタイミング&リフト機構を新採用。電子制御スロットルシステムも、新ユニットで初めて採用された。
そんなこんなで新型6気筒は、なかなか力強いスタートシーンを演じてくれた。もちろん、これまで4段だったATが、5段仕様に改められた効果も大きいはずだ。自慢のシーケンシャルロジックも、この5段ATの採用でようやくその真価を発揮した、という印象である。
スッキリしたハンドリング
ハンドリングは4気筒モデルと同様、ドライでスッキリとしたテイストが持ち味。樹脂製インテークマニフォルドの採用で3kg、ブロックやシリンダーの“無駄肉”排除で2kg……と、きめ細かな軽量化策を施した効果が実感できる。さらに、フラット6は、コンパクトさもジマン。全長は4気筒ユニットに対してわずか20mm増しただけなのだ。それゆえ、4気筒モデルと同スペースのエンジンベイに搭載が可能になったという。
フットワークも、基本的には4気筒モデルと同様の印象だ。215/45R17タイヤが発する路面踏み込み音が多少耳に付くが、全般的な静粛性は3リッター6気筒モデルとして、リーズナブルな仕上がりだった。
パワー炸裂の4気筒ターボにするか、滑らかフィールが売り物の6気筒モデルを選ぶか――フラッグシップの登場で、そんな迷いを感じる人が現れるかもしれない、新型レガシィなのである。
(文=河村康彦/写真=富士重工業株式会社/2003年10月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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