トヨタ・セルシオA仕様(6AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・セルシオA仕様(6AT) 2003.09.12 試乗記 総合評価……★★★★ ……647.1万円 マイナーチェンジで“精悍なフロントマスク”や6段ATを得て、“スポーティ”を強調した「セルシオ」。ベーシックなA仕様に、『webCG』記者が試乗した。
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矛盾か二物か
「精悍なフロントマスク」「(サイドは)躍動感を」「(リアは)よりスポーティ感を表現」(以上、プレス資料より)と、アクティブなイメージが強調されるマイナーチェンジ版。リアに突き出す2本のマフラーが勇ましい。かつては環境への配慮を示すため、マフラーエンドさえリアバンパーで隠したもんですが……。「環境&燃費」性能向上において、すでに一定の成果を収めたということか。
実際、新開発6段ATの恩恵で、カタログ燃費(10・15モード)は、マイチェン前の8.2から8.9km/リッターに改善された。歴代セルシオの、「性能アップ」と「燃費」の両立は、まことに立派。拍手ぅ!
運転すれば、恐るべき静粛性はさらに磨きがかかり、スムーズな乗り心地と、1インチアップの17インチを履きこなす、しっかりした足まわりにも感心。楽チンに速い。
あい変わらず驚くのは「レーダークルーズコントロール」で、設定した速度を中心に、前のクルマに追従して速度を上げ、割り込みがあればブレーキを踏んでくれる。「オートワイパー」「オートライト」、さらにステアリングに連動して光軸を左右に動かす「インテリジェントAFS」、ナビゲーションシステムからの情報でシフトダウンを行う「NAVI AI-SHIFT」と、セルシオにおかれましては、運転手、いらないんじゃないの?
……といった従来の開発ベクトルはそのままに、しかし、欧州のプレミアムカーと名実ともに対抗するために、ドライバーを刺激する“スポーティ”を主張する改良型セルシオ。シーケンシャルシフトまで備えちゃってぇ……!?
3代目セルシオ後期型を、「自己矛盾」ととるか「二物を得た」と考えるべきか。あくまで私見ではありますが、オリーブマイカに塗られたテスト車を見るかぎり、頭に浮かんだ単語は、「アスリート」より「ご年輩」。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1989年にデビューした高級サルーン。静粛性や品質において世界中から賛辞を受け、注目を集めた。北米市場では、高級ブランド「レクサス」で販売され大ヒット。自家用車にはなりにくいドメスティックモデル「センチュリー」をのぞけば、名実ともに日本を代表するプレスティッジカーである。現行モデルは、2000年8月にフルモデルチェンジを受けた3代目。2003年8月にマイナーチェンジを受け、デザイン、走り、安全性の向上が図られた。
エクステリアは、スラントを強めたボンネットなどでダイナミズムを強調。インテリアは、内装色と木目パネルの組み合わせを変更。グローブボックスの使い勝手や、エアフロー機能を備えた「コンフォータブル・エアシート」を後席にも採用するなど、細かい改良が施された。ナビゲーションシステムが、テレマティクス「G-BOOK」に対応したことも新しい。
機関面では、シーケンシャルモード付き6段ATの採用がトピックである。エンジンは、従来と同じ4.3リッターV8DOHC(280ps、43.8kgm)だが、トランスミッションの多段化によって発進加速や燃費性能が向上。燃費は10・15モードで、従来比0.7km/リッターアップの8.9km/リッターとなった。さらに全車「超-低排出ガス」車認定と、2010年燃費基準をパス。グリーン減税に適合した。
安全面は、「ハリアー」に初採用された、ミリ派レーダーを使う予防安全システム「プリクラッシュセーフティシステム」をオプション設定。そのほか、ステアリングホイールの切れ角にあわせて、ライトの照射角を変える「インテリジェントAFS」(アダプティブ・フロントライティング・システム)、運転席/助手席SRSニーエアバッグなどが標準装備された。
(グレード概要)
セルシオは、ベーシックな「A仕様」、スポーティな「eR仕様」、そしてエアサスが奢られる豪華版「C仕様」に大別される。A仕様の足まわりは、コイルスプリングを用いるコンベンショナルなノーマルサスペンション。シート生地は「ウールモケット」。オーナーユースを想定して、リアシートの快適装備(「電動調整機能」「シートヒーター」「大型アームレスト」など)が省かれるのが、C仕様との主な違いだ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
白いニードルが光ってからオプティトロンメーター全体が点灯する、お馴染みの演出で迎えてくれるインストゥルメントパネル。ちなみに、前期型は赤いニードルだった。新型セルシオ豆知識。グローブボックスが、上下2分割から、ひとつにまとめられたのも変更ポイント。
全体としては、センターディスプレイを中心に、機能性がさらに推し進められた。ディスプレイのまわりには、「現在地」「メニュー」「目的地設定」……と、日本語表示のボタンが並ぶ。新しいのは、「情報(G-Book)」が加わったこと。ボタン多用は、トンネルコンソールの“マウス”を用いて機能を選ぶ「BMW7シリーズ」の「iDrive」に較べたら少々ドロ臭いが、コンピューターに精通していなくても自然に使えるよさがある。オーディオ類の「TV」「DISC」「MD」「AM/FM」、それぞれに明確なボタンが割り振られているのもわかりやすい。小物入れ、コインポケットほかが、いずれもダンパー付き(?)で、スーッと滑らかに引き出されるのが、品質感へのこだわり。
ベーシックな「A仕様」といえども、「ディスチャージヘッドランプ」「電動チルト&テレスコピック・ステアリングホイール」「トランクリッド・イージークローザー」「クルーズコントロール」「フロント10WAYパワーシート」「左右独立オートエアコン」など、装備満載。
(前席)……★★★
ウールモケットのクロスシートは、クッション厚めの安楽指向。背もたれには、腰の付近が上下2カ所にわかれた電動ランバーサポートが備わる。10WAYの多彩な調整機能に対応すべく、お好みのポジションを記憶するメモリー付き。贅沢さや、座り心地にとりわけ感心させることのない“さりげないおもてなし”が身上、か。
ショファードリブンに考慮して、助手席のバックレスト側面には、後席からも操作できる前後スライド、リクライニングのボタンが設定される。前席左右とも、シート下に小物または履き物を入れるトレイが備わる。“機能追求型高級車”の面目躍如。
(後席)……★★★★
「動く執務室」または「移動休息所」として、空間、装備とも、まずは十分なリアシート。後席用エアコン吹き出し口ほか、アームレスト後方に、冷風を導く簡易冷蔵庫「クールボックス」あり。シャンパンには小さいが、缶ジュースには最適。新しいセルシオには、女性の社会進出と男性の軟弱化を反映して、天井左右に、ライト付き大型バニティミラーが装備された。
(荷室)……★★★★
欧州プレミアムカーと比較すると、「傲慢なまでの圧倒的広さ」には欠けるが、公用、接待用として、不満のないラゲッジスペース。床面最大幅165cm、奥行き96cm、高さ50cm。さらに床下には、深さ6cm前後のトレーが備わる。トランクリッドには、積んだ荷物に干渉することなく、かつ開閉が上品なダブルダンパータイプが採用された。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
「エンジン、かかってるの?」という静けさはいままで通り。「平成22年燃費基準」と「超−低排出ガス(平成12年基準排出ガス75%低減レベル)」をパス済み。目玉の6段ATは、そもそもこれまでの5段でもスムーズ至極だったから、フィール面でのありがたみは感じなかった。“燃費用”6速ギアを追加する一方、ファイナルギアを落として、動力性能の向上にも抜かりがない。「D」レンジのシフトプログラムが秀逸なので、シーケンシャルシフトは、いわゆるひとつの付加価値。マイナーチェンジの、目に見える象徴。
余談だが、「レーダークルーズコントロール」を使っていると、運転が楽なだけでなく、減速制御後のエンジンの使い方がおだやかなので、燃費にも好影響を与えそう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
テスト車は、コンベンショナルなコイルバネを使った足まわりをもつ。タイヤサイズは「225/55R17」と、前より“薄く”“大きく”なった。サスペンションからの入力だけに注目した(見えないけど)「狭義の乗り心地」では、“ビロードのような”とはいえないけれど、「粛々とまわるエンジン」「スムーズな加速」と、クルマ全体から受ける乗り心地の印象は、滑るように快適。微視的な観察を解釈すると、ゴムの薄膜を介したような、これまでのトヨタ車的ライドフィールからの脱却がうかがえる。
いうまもなく、セルシオは“曲がり”を積極的に楽しむクルマではないが、それなりに快調なペースで山道を走ることもできる。ステアリングのギア比はややスロー、カーブではそれなりのロールを伴うが、ハンドリングはシュアで、退屈ではない。
(写真=荒川正幸)
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【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年9月1日〜3日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1297km
タイヤ:(前)225/55R17 95W(後)同じ(いずれもDunlop SP Sport270)
オプション装備:クリアランスソナー(7.4万円)/レーダークルーズコントロール(ブレーキ制御付き)=7.0万円/セルシオ“マークレビンソン”プレミアムサウンドシステム=63.7万円/光脱臭機能付きオートエアピュリファイヤー=4.0万円
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(3):山岳路(4)
テスト距離:336.7km
使用燃料:49.0リッター
参考燃費:6.9km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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