マツダ・アテンザスポーツ23Z(FF/5MT)【ブリーフテスト】
マツダ・アテンザスポーツ23Z(FF/5MT) 2003.08.11 試乗記 ……273.2万円総合評価……★★★★
マツダの世界戦略車「アテンザ」に追加された「23Z」は、専用サスペンションや18インチタイヤなどを装着するスポーティグレード。ハッチバックモデル「スポーツ」の5段MT仕様を、自動車ジャーナリストの笹目二朗がテストした。
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欧州車を抜けるかも
全体的に、とてもいい印象をもった。「23S」は乗り心地などにやや粗削りな面もあったが、かなり洗練されてきたといえる。あと一歩の詰めで、欧州車を抜けるかもしれないと、期待する気になる。
まず、一般道での乗り心地がいい。フラットで姿勢変化の少ない乗り味は、最近のドイツ車を凌ぐ。これが、偏平率45%の18インチタイヤ装着車であることを考慮すれば秀逸だ。微低速時における、小ストロークの突き上げ感や、スタビライザーによる左右の関連を弱めて、4輪の独立した作動感が生まれれば更に向上するだろう。操縦安定性も同じく、一途に思い詰めたようなところがあり、直進時などはフっと力を抜いた安楽さが欲しい。さらに、その2点間をオンオフではなく、リニアでもなく、非線形的に丸く繋げるとシットリする。このあたりが次の課題か。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
マツダのミドルクラスとして長い間親しまれてきた「カペラ」に代わるモデルとして、2002年に発表されたのが「アテンザ」。ボディタイプは4ドアの「セダン」、5ドアの「スポーツ」、ステーションワゴンの「スポーツワゴン」の3種が用意される。フォードグループ全体で使うために開発された、直列4気筒DOHC16バルブエンジンは、2リッターと2.3リッターの2種類。生産は日本だけでなくアメリカでも行われ、海外では「Mazda 6」の名前で販売される世界戦略車でもある。
(グレード概要)
アテンザの2.3リッターは、セダンに「23E」、スポーツとスポーツワゴンには「23C」と「23S」がデビュー当初からラインナップされてきた。2003年7月9日に追加された「23Z」は、スポーティグレードたる23Sの性格を、さらに研ぎ澄ませたモデル。スポーツとスポーツワゴンに設定される。
エアロパーツの追加など、華美な演出はないが、18インチのホイール&タイヤ、大径ブレーキローターとレッドのキャリパーを装備。専用チューンドサスペンションを組み込むなど、シャシーのバージョンアップが念入りに施された。アテンザは発表当初から、年々熟成を重ねていくことが表明されている。23Zはアテンザの熟成が反映された、第1号モデルだともいえる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
メーター類は大型で見やすいが、数字のフォントはもう少し細い方が読みやすいと感じた。全体を覆うひさしは、光による写り込みを排除して効果的。ナビはダッシュボード中央、一等席の見やすい位置にある。チタン調パネルも厭味がなく、サッと拭けて掃除がラク。マルを基調にした反復デザインはやや目障りでもあるが、シンプルで機能的だ。トリムのチリ合わせなどフィニッシュも上々。
(前席)……★★★★
中央部を滑りにくいエクセーヌで張った革シートは、座り心地良好。サイドの盛り上がりも適切で、横方向のサポートもよい。座面の縦寸法はやや短いが、全体に後傾角が付けられるので、ポジションに問題はない。ランバー部は適度な張出のある形状で一応不満はないが、長距離ドライブの場合に調整機構は欲しいところだ。Aピラーが寝ているわりに乗降性は悪くない。ボンネットの見切り、ダッシュの棚の処理など前方の眺めもまずまず。
(後席)……★★★
背面は6対4の分割可倒式だが、畳まれるタイプにありがちなクッションの薄さは感じられず、取り付けもしっかりしている。表面形状はやや平板だが、部分的に革が使われるシートは、前席同様座る部分がスエード調のエクセーヌ材なので滑りにくい。ヘッドクリアランスも窮屈でない範囲にある。
(荷室)……★★★★
一見すると3ボックスセダンだが、実は5ドアハッチバック。リアシートを畳んで荷室を広げることができ、使い方によっては“大物”を収容できる能力がある。容量は492リッターだから、独立したトランクとしても充分な容積だ。開口部も、バンパー高をえぐったところから開くなど、低い敷居も好ましい。バックレストは、荷室に設けられたレバーにより、ワンタッチで倒せる「KARAKURIフォールド」を搭載。シートバックの動きに連動して座面が沈み、フロアは面一になるスグレモノだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン&トランスミッション)……★★★
バランスシャフトの恩恵か、直列4気筒にしてはアイドリングも含めて滑らかにまわる。2.3リッターの排気量にしては、ややトルクが物足りないものの、吹け上がりは軽快だ。5段MTのシフトフィールはストークこそ大きめだが、ワイアー式のリモコンとしては剛性感も上々。走り込めばフリクションも落ちるだろう。ギア比は全体に若干ローギアードだが、日本的な用途には合っている。
(乗り心地&ハンドリング)……★★★★
この項目の評価が、車全体に好印象を残す。ダンピングフォースの与え方がよく、フラットな乗り心地は日本車では得難いものだ。微低速域の細かな突き上げや、ザラザラした感触がなくなれば、フランス車に迫るのではないか。ステアリングフィールは、直進性も応答性もいいが、ステアリング系のフリクション感をなくし、サラーっとした感触にすれば最良である。215/45R18タイヤも、オーバーな感じがしない。
後席は、フロントよりやや細かい突き上げを感じるが、スポーティモデルであることを考慮すれば、概ね乗り心地は良好だ。
(写真=清水健太)
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【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2003年7月24日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:2854km
タイヤ:(前)215/45R18(後)同じ(いずれもブリヂストン・ポテンザRE050A)
オプション装備:オプションセット=38.2万円(カーテンエアバッグ/インダッシュ6連奏CDチェンジャー/DVDナビゲーションシステム/BOSE製7スピーカー/撥水フロントガラス)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(3):山岳路(4)
テスト距離:546.5km
使用燃料:63.7リッター
参考燃費:8.6km/リッター

笹目 二朗
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