ポルシェ911カレラ4Sカブリオレ【海外試乗記】
ポルシェらしいカブリオレ 2003.07.12 試乗記 ポルシェ911カレラ4Sカブリオレ ポルシェ「911ターボ」のワイドボディと足まわりをもつ「911カレラ4S」に、「カレラ4Sカブリオレ」が追加設定された。新型を「ボディ剛性の低い“カッコ付けモデル”」と想像していた自動車ジャーナリストの河村康彦は、オーストリアのプレス試乗会でドライブし……。
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印象を覆すオープンボディ
個人的な好みをいわせていただくと、ポルシェ「911」というのは「ヨンクでクーペのクルマ」だと思う。
RWD(後輪駆動)のカレラと4WDのカレラ4を比較すると、外乱に強く、“超安定”高速走行のフィールを味わわせてくれるのは、いうまでもなくカレラ4である。クーペとカブリオレを較べた場合、まるでメタルインゴットから削り出したかのような、ボク好みのピシッとした剛性感を味わわせてくれる911は、これまたいうまでもなくクーペの方だ。
ありていにいうと、これまでの「911カブリオレ」のボディ剛性感は、ぼくがポルシェに期待するレベルには遠く及ばなかった。同じドイツ車の、メルセデスベンツやBMW、アウディが送り出したオープンモデルに較べれば、高いしっかり感を味わわせてくれるのだが……。
しかし、同じポルシェのオープンモデル「ボクスター」の、極めてシッカリした感触を知ってしまうと、「どうしてこんなにヤワいのか!?」と口走ってしまいそうな印象を抱かざるを得なかった。
そんなわけで、911に「カレラ4Sカブリオレ」が加わると聞いても、「ハイハイ。要するに“ターボルック”でさらにカッコつけたカブリオレね」と思うだけだった。だが、その程度の“軽いノリ”でオーストリアはチロルの山中まで出かけたぼくを待っていた、C4Sカブリオレの走りのテイストは、前述のような911カブリオレに抱いてきた印象を覆すに十分なものだった。つまり、新型のボディ剛性感は、標準カブリオレ(?)のそれとは別モノ。そのオープンボディのシッカリ感は、ぼくがポルシェ車に期待するレベルを問題なく超えていたのである。
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性能はクーペとほぼ同じ
もちろんこうした印象は、「気のせい」でも「テスト車両の個体差」でもない。C4Sカブリオレのボディは従来のカブリオレをベースにしつつ、構造に手が加えられたのである。ただし、その差は「Aピラー付け根部分とサイドシル、Bピラー(このクルマの場合、左右ドアの後部)付け根部分、サイドシルの両結合個所に補強材を加えただけ」と、驚くほどに少ない。911カブリオレとボディ構造の重量を較べても、わずかに13kg重くなっただけだ。
ちなみにこの補強は「安全性の向上ではなく、乗り味のリファインが目的」とのこと。それが従来型カブリオレには不要で、C4Sカブリオレで必要になった理由は、「911ターボをベースとしたローダウンサスペンションを採用したことで、ボディへの入力がより大きくなったため」と、ボディ設計の担当エンジニア氏が教えてくれた。
オーバーオールの車重では、電動ソフトトップ機構などを搭載した結果、カブリオレは、C4Sクーペより約70kg重くなった。しかし、加速力の変化(劣化)は、事実上気にならない水準だ。6段MT仕様、5段“ティプトロニック”仕様とも、たくましいフラット6サウンドを響かせながら、ゴキゲンな勢いで速度を増す。ちなみにデータ上でも、C4Sクーペに対する0-100km/h加速タイムは、6MT仕様で0.2秒遅れをとるにすぎない。およそ20秒で開閉可能なトップをクローズした状態で、空気抵抗係数(Cd)値は0.30。280km/hという最高速データ(6MT仕様)同様、C4Sクーペのそれと同数値なのである。
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望外に快適
ところで、ターボ譲りのローダウンサスに、ファット&ロープロファイルのタイヤを――いくらボディ強化策を施したとはいえ――クーペに剛性で劣るオープンボディに組み合わせるとなると、当然ライドコンフォートを心配する人もいるだろう。が、C4Sカブリオレは、こうした課題をごく無難にこなしていた。低速域で「しなやか」という表現を使うにはさすがに無理があるが、速度が増すに連れてポルシェらしいフラット感が急速にアップ。80km/h以上での乗り味は「望外に快適」といってもよいくらいである。
ちなみに、ばね下重量を4輪合計で18kgと大幅に低減できる「PCCB」(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)をオプション装着すれば、そうした傾向はさらに顕著になる。「セラミック複合素材によるディスクローターの寿命は、車両寿命にも匹敵する」というこのブレーキシステムは、パッドの磨耗紛でホイールを汚すこともない。“カッコ付け”のオープンカーには、嬉しいニュースのひとつといえる。
というわけで、ポルシェらしいカッチリとした走り味を十分に味わわせてくれる、ターボルックのオープン911。日本では2004年モデルから、ティプトロニック仕様が導入されることになりそうだ。
(文=河村康彦/写真=ポルシェジャパン/2003年7月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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