フォルクスワーゲン・ゴルフR32 4ドア(6MT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ゴルフR32 4ドア(6MT) 2003.07.03 試乗記 ……405.0万円 総合評価……★★★★ 大衆車のスタンダードともいえる「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に、241psを発する3.2リッターV6を押し込んだスーパーゴルフ「R32」。3ドアに続いて導入された5ドアモデルに、モータージャーナリストの生方 聡が乗った。
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コンパクトなスポーツモデル
BMWの「M」やアウディの「S」のような、とびきりスポーティなモデルを、今後はフォルクスワーゲンも手がける。それらは「Rライン」と呼ばれ、手始めに世に送り出されたのが「ゴルフR32」である。
R32はコンパクトカーの優等生に、大胆にも3.2リッターのエンジンをノーズに押し込んでしまったホットハッチ。それに見合うよう、225/40R18タイアや強力なブレーキ、ハードなサスペンションを装着。外観も大型のバンパーにより、明らかにノーマルとは違うオーラを放っている。
スポーツ性を手に入れるために、快適性などの点で失った部分もあるが、R32の走りっぷりを知ると、かえってその割り切りが潔く思える。
潔いといえばその価格。2ドアが395.0万円、4ドアが405.0万円のプライスタグは他のグレードに比べても、あるいは競合他社のモデルに比べてもバーゲンとしかいいようがない。
いまや特別な存在ではないゴルフGTIに対して、このR32こそ、スポーツモデルと呼ぶにふさわしいクルマである。今後のRラインの展開がとても楽しみだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ゴルフR32」は、ラクシャリー傾向の強まった「GTI」とは異なる、本格的なスポーティモデル。フォルクスワーゲンは今後、各モデルに「Rライン」と呼ばれるスポーティグレードを追加する予定で、ゴルフR32はその第1弾である。ワールドプレミアは2002年5月のマドリードショー、同年8月からドイツで販売が開始された。日本へは、2003年1月11日から3ドアハッチバック(2ドア仕様)が300台限定で販売され、すでに完売。5月6日に、5ドアハッチバックモデル(4ドア仕様)が200台追加発売された。価格は、3ドア(左ハンドル)が395.0万円、5ドア(右ハンドル)は405.0万円。
(グレード概要)
ゴルフR32の5ドアモデルは、右ハンドルのみの設定。スポーティスペシャルの専用装備として、エクステリアに前後の大型エアロバンパー、サイドスカート、リアスポイラーを装着。足元を、OZ製アルミホイールと、225/40ZR18インチのファットなタイヤでキメる。インテリアは、「R32」ロゴ付きのケーニッヒ製本革スポーツシート、アルミ製ペダル、グリップの太い本革巻きステアリングホイールを装備。加えて、サイドエアバッグ&カーテンエアバッグや、ベルトフォースリミッターなどの安全装備や、オートエアコン、クルーズコントロール、熱線吸収ガラスなど快適装備も備え、ゴルフのトップモデルに恥じないラグジュアリー性をも付与した。
エンジンは、フラッグシップ「フェートン」のベーシックグレードと同じ、狭角バンクの3.2リッターV6SOHC24バルブを搭載。最高出力241ps/6250rpm、最大トルク32.6kgm/2800-3200rpmを発生する。トランスミッションは6段MT、駆動方式はハルデックスカプリングを用いた4WD「4MOTION」を採用。0-100km/hを6.6秒で駆け抜け、最高速度は247km/hにも達する。足まわりは、20mmローダウンのスポーツサスペンションを採用。さらに、リアサスペンションは、FFモデルのトーションビームから、4WDゆえのマルチリンク式に変更。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(装備+インパネ)……★★★★
カタチこそ他のゴルフと同じだが、よく見るとR32ならではの演出が随所に盛り込まれている。まず気づくのはダッシュボードのパネルがアルミニウムに変えられていること。ステアリングホイールも握りの太い専用の革巻き3本スポークタイプとなる。
シルバーに縁取られたメーターリングとフラップ型のエアベントはボーラ譲り。300km/hまで刻まれたスピードメーターとともにスポーティーな雰囲気を演出、ふつうのモデルでないことをさりげなくアピールしている。
(前席)……★★★
VWレーシングのロゴが記されたフロントシートは、ケーニッヒ製のレザースポーツシート。座り心地は悪くないが、ドイツ人向け(?)の大振りサイズなので、身長168cmの私を気持ちよくサポートせず、さらに座面が高いので、一番下に下げてもしっくりくるシートポジションがとれなかった。今回の試乗車は4月に追加された右ハンドルモデル。日本で乗るにはうれしい設定だ。
(後席)……★★★
右ハンドル仕様は4ドアで、これならスポーツカーに乗りたいパパも、家族から反対されないですみそうだ。4ドアだから、前後ドアはともに短く、狭いところでも、もちろん広い場所でも乗り降りは便利だ。リアのレッグルームやヘッドルームは、ノーマルのゴルフに準じ、大人でも十分な広さが確保されているから、長時間の移動でも窮屈な思いを強いられることはない。
(荷室)……★★★
リアシートの座面を起こしてシートバックを倒せばワゴン並みのラゲッジスペースが手に入るゴルフだが、R32の場合、フルタイム4WDシステムを採用するため、前輪駆動モデルに比べてフロアが約10cm高くなり、また、リアシートのシートバックを起こした状態で荷室の奥行きも約7cm短い。おかげでラゲッジ容量はノーマルの330リッターに対して85リッター少ない245リッターと小さくなった。フロア下のスペアタイアのスペースも削られ、タイア応急修理キットが装着される。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
R32最大のウリは、フェートン譲りの3.2リッターエンジン。バンク角15度の狭角V6は、その排気量から想像するよりもずっとコンパクトだ。ちなみにカタログ上はSOHCと表記されるが、吸気側と排気側のカムシャフトがそれぞれ1本ずつ用意され、シリンダーあたり4本のバルブを駆動しているから、直列6気筒DOHCと同じような構成である。
最高出力241ps、最大トルク32.6kgmの自慢のエンジンは、1510kgのボディを威勢良く走らせるには十分すぎる性能だ。電子スロットルの味付けがレスポンス重視ということもあって、アクセルペダルにちょっと力を込めただけで簡単に回転が上がってしまうのが不自然だが、どの回転域からも力強く、スムーズな加速を見せるのは頼もしいかぎりだ。6段マニュアルギアボックスもかっちりしたフィーリングで、ヒール・アンド・トウのしやすいペダルレイアウトとあいまって、シフトが楽しくなるクルマだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
乗り心地はいまどき珍しいほど硬い。低速では路面の荒れを正直に伝え、首都高速などの目地段差ではガツンとくる印象。かといって高速道路でフラットかというとそれほどでもなく、スプリングに対して相対的に減衰力が足りないダンパーが小さな上下動を許してしまう。しかし、ワインディングロードに持ち込むと、それまでの我慢の甲斐はあったと思う。腰高な印象のノーマルゴルフに対して、このR32はロールを巧く押さえ込むとともに、ダブルウィッシュボーンのリアサスペンションがアンダーステアの軽い、軽快なハンドリングを実現している。おかげで、3.2リッターV6を積んでいるとは思えないほどノーズは軽い感じで、気持ちよくワインディングロードを飛ばすことができる。
(写真=郡大二郎)
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【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2003年5月28日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:2019km
タイヤ:(前)225/40ZR18(後)同じ(いずれもミシュラン パイロットスポーツ)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:一般道(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:525.8km
使用燃料:89.8リッター
参考燃費:5.9km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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