第29回:かなり考えてあります!
2003.05.27 小沢コージの勢いまかせ!第29回:かなり考えてあります!
■オデッセイ、エスティマのムダを……
九州は宮崎シーガイアで行われた、三菱自動車の新型ミニバン「グランディス」の試乗会に行って来ました。今、国内で売れてるのはコンパクトカーの「コルト」と軽の「eKワゴン」のみという三菱。コレが売れなきゃ明日はない!? ってな状態で、待ったなし。そのせいもあってか、非常に練られ、よくできたクルマでありました。
パッと見はね、結構、小さいわけ。縦横の長さで見れば、完全に「ホンダ・オデッセイ」「トヨタ・エスティマ」サイズなんだけど、高さが抑えられており、そうは見えない。
乗っても同じく、床は高めだし、室内高もあまり余裕を感じず、「ホンダ・ストリーム」「トヨタ・ウィッシュ」のデカいのって感じ。だけどね、これこそが狙い通り。
まず、見ればわかるけどスタイルがいい。「ジャパニーズ・モダン」がテーマだそうで、微妙に曲がったサイドのラインが結構美しい。ちょっと「プジョー307」的なんだけど、全体のフォルムもかなりスポーティ。
デザイナー氏によれば「わび、さび、間の取り方」に気を使ったそうで、そう言われるとそんな気がしなくもない。さらに、シートの座り心地が凄くいい。今までのオデッセイ、エスティマクラスにあったワンボックス的空間を、ある意味「ムダ」と見なし、その分を(?)シートの厚み方向に振ったそうで、特に2列目シートの居住性には気を使っており、シート座面の角度を変えられるうえ、ひざまわりが広い。
逆に3列目はそこそこの居住空間と割り切り、ストリーム、ウィッシュよりちょっと広い程度か。だが、「3列目はそうそう使いませんよ」とエンジニア氏は言い切る。確かにそうかもしれない。
■まずは2列目
乗り心地もかなりいい。シートのよさはもちろん、前席の床を上げ、フロア下のフレームを直線構造にしたことによってボディ剛性全体がかなりアップしてるようで、これが貢献しているのだろう。ただ、この構造は元々、衝突安全性向上のためだそうだけど。
ハンドリングは結構絶妙。それほどキビキビ、スポーツ性重視じゃないんだけど、「軽いなかにもシャープさがある」という味付け。俺は、どっちかっていうと、好き。
だが、コイツも狙い通りで、クルマの運動性は実は「2列目に乗る人」、つまり奥さんや子供を最優先に考えたんだとか。そしてその次に運転するダンナさんの楽しみも考え、多少のヴィヴィッドさも加味したと。まさにそんな感じ。
さらによかったのはブレーキのタッチ。踏みはじめにギクシャクがなく、吸い付くようにしっとりと、なおかつコントロール性がよい。これまた2列目に座る人のことと、ドライバーの楽しさの両立を探った結果だそうで、結構、よくできてる。
■割り切ったつくり
エンジンは2.4リッターの「MIVEC」一本だけど、下から上までよく回る。欲をいうと、2000、3000rpmあたりのトルクがちょっと物足りない感じだけど、ま、これで十二分。
ってなわけで結論を言いますと、グランディスは「スペースを“質”に振ったオデッセイクラスのミニバン」ですね。今までに比べまず「スタイル」を優先し、さらに「座り心地」や「質感」の向上を狙ったと。そしてけっこう割り切った造り。俺としては全体の方向性はこれでいいと思った。だって、オデッセイ、エスティマなんかとまともに張り合ったって勝ち目ないもんね。今の三菱。
ちなみに次期型オデッセイはグランディスよりもスタイルをさらにスポーティに振った、極端に背の低いミニバンになるらしい。それである種の「スポーティミニバン層」を狙い、別個に「もっとデカい容量優先のミニバン」も出すんだとか。余裕のあるホンダならではの戦略ですね。
ってな具合にまだまだ混沌とした日本ミニバン市場。戦いはまだまだ続くって感じですな。がんばりやー。
(文=小沢コージ/2003年5月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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