マツダRX-8 TypeE(4AT)【試乗記】
“ステキ感”が足りない 2003.05.21 試乗記 マツダRX-8 TypeE(4AT) ……313.3万円 4ドア4シータースポーツのマツダ「RX-8」は、「スポーツカー」というコトバに顔を曇らせる一家の大蔵省、奥様をダマすことができるか? 2児の父である『NAVI』佐藤健副編集長が、エイトの4AT仕様に考えながら乗ってみた。普通に乗れる
マツダ「RX-8」で奥さんをダマせるか、というのが本稿のテーマである。「ダマす」というのは言葉が悪いけれど、「4ドア、4人乗りのオートマだからファミリーカーにも使える」と、奥さんを説得できるかどうか、36歳、二児の父である筆者が考えながら乗ってみた。
愚妻と二人の豚児を伴って、マツダのディーラーを訪れたと仮定してみましょう。
早速、奥さんをRX-8の運転席に座らせてみる。ここで、エンジンとトランスミッションを低くできるというロータリーユニットの利点が裏目に出る。腰を曲げ、足を開いて「よっこらしょ」とかけ声をかけないとシートに辿り着かない。ディーラーに行く日には、奥さんにズボンを履かせることをお奨めします。ただし、シートの掛け心地は素晴らしい。
次に、エンジンを始動する。「ぐぐぐぐぐぐ、ボワン!」と、ゆっくり燃えるロータリーの特徴で、長いクランキングの後にエンジンは目覚める。テレビのスイッチを入れるようにシュンとかかるエンジンに慣れた奥さんは、「?」と思うかもしれない。
ディーラーを出てアクセルを踏むと、奥さんは意外と普通に乗れることに驚くはずだ。MT仕様では極低回転域でのトルクの細さを感じさせる“RENESIS”ユニットであるが、トルコンのトルク増幅作用の恩恵で、4AT仕様では「ストップ&ゴー」が苦にならない。
乗り心地もイイ
走行時のエンジンフィールは、キメ細やかで上質だ。それほど回転を上げない市街地走行でも、ロータリーの美点を味わえる。ただし、信号待ちは要注意だ。ステアリングホイールを通して、微振動が伝わってくる。このアイドル振動は、極低回転域ではガスをキレイに燃やすことが難しいという、ロータリーの構造的な問題だとされている。これには奥様も表情を曇らせるだろう。というか、筆者もこの振動はちょっとイヤだ。MT仕様では、振動をさらに強く感じるが……。
ステアリングは、外観から想像するより軽い。奥さんも「これなら毎日乗れるかも」と思うはずだ。電動パワステは軽いだけでなく、フィールもいいからスポーツカー好きのアナタも満足できること請け合い。
乗り心地もイイ。試乗車には、オプションのヨンゴー扁平・18インチという“ヤル気”のタイヤが履かされていたが、野蛮な突き上げは一切ない。
買っちゃいなさい
しかし、ここで調子にのって狭い道に入ってはいけません。運転席から見えるのはフロントフェンダーの膨らみだけで、ボンネットの先端が見えないのだ。もし、奥様がちょっと神経質だったりすると、狭い路地を曲がるときなどちょっと不安かも。ディーラーの試乗車だし。試乗は幹線道路に限定しましょう。
また、“シフトの楽しさを教えよう”などと、欲をかくことも厳禁だ。「アクティブマチック」と呼ばれる4ATでは、ステアリングホイールから生えるパドルでシフトすることも可能だ。しかし、Dレンジで走ったほうがはるかにスムーズなのだ。パドルをパタパタ操作してシフトしようとすると、変速時のショックが大きい。山岳路でエンジンをギンギンに回すような場面では有効なアクティブマチックであるが、トロトロ走るときにはDレンジ入れっぱなしに限る。奥さんは、基本的にはスポーツカーなんて買いたいとは思っていないわけで、アラを探そうと目を光らせている。ネガはできるだけ隠したい。
で、ディーラーの駐車場に戻って、奥さんを後席に座らせてみる。想像よりはるかに広いことに驚くでしょう。豚児たちは、観音開きのドアにはしゃぐはずだ。「子どもたちが小さい間は、これで十分じゃないか」というセリフを用意しておきたい。もちろん、子どもは大きくなると家のクルマになんか乗らなくなるわけです。
買っちゃいなさい、買えばなんとかなるさRX-8。と言いたいところですが、奥さんの首を縦に振らせるには問題がひとつ。それは、“ステキ感”の不足だ。たとえばアルファ「147」とか「156」だったら、洒落た内装に奥さんも思わず財布の紐を緩めるかもしれない。でも、RX-8の少々安っちいオーディオ/空調の操作パネルにそういった効果は期待できない。シートや足まわりとか、目に見えないところは完璧なのに、まったくマツダは商売ベタなんだから。
RX-8に必要なのは、実用性ではなくて非日常性の演出である。
(文=NAVI佐藤健/写真=清水健太/2003年5月)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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