マツダRX-8(6MT)【海外試乗記(前編)】
メカニズムもパッケージングも 2003.01.22 試乗記 マツダRX-8(6MT) ついに発売へのカウントダウンが始まったロータリースポーツ「RX-8」。“4ドア4シータースポーツ”というコンセプトを掲げ、観音開きのドアをもつマツダのニューモデルはどうなのか? 自動車ジャーナリスト河村康彦による「RX-8試乗報告」、その前編。
拡大
|
拡大
|
ロータリーエンジンの現代性
ノーズの低いフロントエンジンのスポーツモデルは、これからの時代、つくりにくくなるといわれる。なぜなら「衝突した歩行者保護のための規格づくり」が、世界各地で進んでいるからだ。歩行者との前面衝突に備え、衝撃吸収性を持たない、つまり鉄やアルミの固まりであるエンジン本体とボンネットの間に、ある程度の隙間(=クラッシャブルゾーン)を確保する必要が生じる。そのため、空間をとりにくい“ローノーズ・スタイル”の実現が困難になるというわけだ。
もちろん、だからといって、鼻先の低いエクゾティックなスタイリングを備えたスポーツカーが姿を消すことはないだろう。パワーユニットを、前席後ろに背負うミドシップ・マウントであれば、フード下に十分なクリアランスが取れる理屈だし、技術の進歩は「対歩行者用のエアバッグ」などを可能にするかも知れない。
が、そんな面倒なことをしなくても、FR(後輪駆動)レイアウトのまま歩行者保護の難題をパスできるパワーユニットが、日本にはある。いうまでもなく、ロータリーエンジンである。
2003年の年頭に米国はデトロイトで開催された「NAIAS(North American International Auto Show)」で、いよいよ世界で唯一、ロータリーエンジンをパワーソースとするスポーツモデル「マツダRX-8」の市販バージョンがお披露目された。
“記号性”ではなく
いささか長い前フリになってしまったが、ようやくRX-8に触れることができた。少々辛辣な言い方をすると「すでに世界が“ダメ出し”をした」はずのロータリーエンジン--つまり一時の熱狂のあと、結局マツダ以外に開発を本格化させたメーカーはなかったヴァンケルユニット--をいまさら復活させることに、「ノスタルジー以外の一体どんな意味合いがあるのか?」。それが、ぼくのこれまでの正直な気持ちであった。
けれども、654cc×2ローターの「13B」型ハウジングを用いつつ、エンジンの搭載位置を「RX-7」よりも40mm下げ、前輪を基準にすると60mmも後方に移動させたことで、“完全なる”フロントミッドシップ・マウントを実現させたと聞いたとき、もう一度この稀有なパワーユニットを応援したくなった。
新開発のプラットフォーム(それは、必ずしもロータリーエンジン用とは限らないという)の上に最新リファインを施したロータリーエンジンを載せたRX-8というクルマは、かくして「世界で最も合理的!」といえる基本レイアウトの持ち主になったのだ。しかもそれは、「直列やV型エンジンを用いたのでは絶対に達成しえないレイアウトである」とマツダは主張する。このエンジンでしかなしえないことをやっている――そう知ったときに、ロータリーエンジンのもつ“記号性”ではなく、実質的なメリットというものをぼくは感じることになった……。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
考えに考え抜かれた
感心したのは、ボディのパッケージングについても、だった。キャビン部分を小さく見せないと“スポーツカー”にはなりえないということから、歴代RX-7を彷彿とさせるCピラー形状が与えられたRX-8は、しかしそんなスモールキャビン・デザインからすると、望外と思えるほど実用的な“フル4シーターパッケージ”の持ち主でもある。
ただしフロントシートにハイバックデザインを採用したのは失敗だったと思う。たしかに背中をスッポリとサポートしてくれるそれは、ドライバーにとってはスグレモノ。が、後席からは、まるで「目前に立ちはだかる絶壁のよう」に感じられてしまう。レッグスペースとヘッドクリアランスに余裕すら感じられる「大人用として実用的な空間」を確保していながら、前方への視界がほとんど失われるため、リアシートの乗員が極端な閉塞感を味わわされてしまうのが残念だ。“4ドア4シータースポーツ”というコンセプトを掲げながら、フロントシートがまるで2シーター用デザインであるのは腑に落ちない。
ちなみに、このクルマならではの観音開きドアは、後席からはフロントドアが操作できなかったり、リアシートへのアクセスにはフロントパッセンジャーがシートベルトを外す必要があるなど、やはり通常の4枚ドアには実用面でかなわない。けれども、2ドアクーペと比較すれば、リアシートへの乗降性は期待以上に優秀と感じたし、フロントドア長がむやみに大きくならないことで、フロントシートへの乗り降りも楽にしていることも見逃せない。そして何より、「ピラーレス化を可能とするあのドアデザインなくしては、現在のRX-8のスタイリングは不可能だった」のだ。
トランクスペースは、絶対的には「広大」とはいえない。けれども、RX-8が純粋なスポーツカーであると受け取れば、これもまた「予想を超えたラゲッジルーム」というのが正しい評価になるだろう。
メカニカルなレイアウトも、ボディのバッケージも、実は考えに考え抜かれてできあがった一台。それが、世界中への発売に向けてカウントダウンが始まった、RX-8というクルマなのである。
(文=河村康彦/写真=マツダ/2003年1月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
日産キックスG(FF)/キックスX e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.7.13 日産のコンパクトSUV「キックス」が、いよいよフルモデルチェンジ! デザインもパワートレインもプラットフォームも刷新された新型は、見ても乗っても長足の進化が感じられる力作となっていた。日産の再生を担う重要モデルの仕上がりを報告する。
-
NEW
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。






































