メルセデスベンツS600L(5AT)【ブリーフテスト】
メルセデスベンツS600L(5AT) 2003.03.29 試乗記 ……1580.0万円 総合評価……★★★★パワーゲーム
「誰がイチバンか」を知らしめるためにスリーポインテッドスターがとったのが、大排気量エンジンをツインターボで過給するというミもフタもない手段。具体的には、超ド級サルーン「マイバッハ」のパワーソースをデチューンして、「Sクラス」のフロントに押し込んだ。「ポルシェ911ターボ(5AT)」をしのぐ0-100km/h=4.8秒の加速で、ライバルに有無を言わさない。
「暴力的な動力性能」「燃費悪化」に対する“自動車界の盟主”の言い訳が、「プリセーフコンセプト」。ブツかる直前に、シートベルトのゆるみを取ったり、必要なら助手席側のシートバックを立てたりして、パッシブセイフティのポテンシャルを可能なかぎり引き出す仕組み。
ステアリングホイールを握れば、やみつきになる怒濤の加速。リアシートに座れば、やはりやみつきになる快適性、と、いずこからか湧き上がる優越感。自動車メーカー合従連衡の踊り場における輝けるスター。パワーゲームの体現モデル。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年のパリサロンでデビューしたメルセデスベンツのフラッグシップ。2002年11月18日に、マイナーチェンジ版の日本での販売が開始された。グリル、ライトまわりなど、外観の変更は小規模。全車キセノンランプを採用、クリアカバーのライトで目つきスッキリ。やや大型化されたグリルで、押し出しも増した。一方、マイチェンの眼目は、クルマが危機的状況に陥ってから実際の事故にいたるわずかな間に、シートベルトのテンションを高め、必要なら助手席のシート角度を正し、またガラスサンルーフが開いている場合はコレを閉めて横転時に備える「プレセーフ」機能を搭載したこと。そのほか、S350のV6エンジンが3.2から3.7リッターに拡大され、S600Lには、5.8リッター(NA)に替わって、5.5リッターV12ツインターボが採用された。また、S430に「4MATIC」こと4WDモデルが用意されたことも新しい。
(グレード概要)
日本に入るV12ビターボモデルは、ロングボディの「S600L」のみ。シートはもちろん、ドアトリム、インストゥルメントパネルにいたるまでフルレザー仕様。ピラー内張、天井にはアルカンタラが使われる。ガラススライディングルーフは標準で備える。制御自在なシート、エアコン、オーディオ類(ラジオ、テレビ、DVD、MD、CD、etc...)はもちろん、クルーズコントロール、レインセンサー、オートライト、ヒーテッドドアミラー、電動ブラインド、クライメートコントロール、駐車時に障害物を知らせるパークトロニックなど、装備満載。寒暖に対応した前後席は、特筆モノだ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ユーザー層に合わせたコンサバティブなインパネまわり。重厚なウェオルナットのパネルが用いられる。目新しさはないが、6.5型液晶をもつDVDナビゲーションシステム、前席および後席の空調を集中的に制御する「クライメートコントロール」、電動で上下前後に調整可能なステアリングホイールはヒーター付きなど、機能面での取りこぼしはない。
(前席)……★★★★★
おなじみの「シートの型をしたスイッチ」でポジションを調整できるほか、座面前下に「ランバーサポート」「肩部のランバーサポート」「バックレストの横方向のサポート」さらにはバックレストのエアクッションが膨張/収縮を繰り返す「マッサージ機能」、ハードなドライビング時にコーナリングGに合わせてバックレストのサイドサポートを強化する「ダイナミック」モードが備わる。……といった機能を駆使せずとも、たっぷりしたサイズとしっかりしたクッション、取り付け剛性感の高さで、フラッグシップにふさわしい快適性と安心感を乗員に提供する。シートヒーターおよびベンチレーター付き。
(後席)……★★★★★
ウムを言わさぬ広さ。座面先端から前席バックレストまで40cmほどの空間が確保される。シートは、座面を前後できる重厚な本革仕様。ショファードリブンに対応して、前席に負けない快適装備を誇る。ヒーターはもちろん、ベンチレーター付き。助手席をリアシートからスライドさせることも可能だ。トンネルコンソール後端にリアシート用の左右独立の温度調整が可能なエアコンコントローラーおよび吹き出し口あり。前席背もたれの背面にはウッドテーブル、天井には、バニティミラーと、そのまわりに読書灯、そして、サイド、リアガラスからの日光を遮るシェードも装備される。厚いBピラーとドアが、視覚的にも安心感を与える。
(荷室)……★★★★★
Sクラスのトランクルームは、床面最大幅138cm、奥行き90cm、高さ50cmと、広大。トランクリッドは、軽くキャッチャーに押しつけるだけで、自動的にロックまで引き込まれる「クロージングサポーター」付き。運転席またはリッドのスイッチによって、自動で開閉することも可能だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
マイチェン前のNAエンジンより小さくなったとはいえ、5.5リッターと絶対的には大きな排気量。2つのターボチャージャーの力を借りて、2000rpmにも達しない回転域でも−−ショファーにはありがたいことに−−2トン超のボディを悠々と運ぶ。街なかでは、500psユニットの存在をまったく感じさせないままドライブすることも可能だ。聞こえるのは、ロードノイズばかりなり。
一方、停止状態からスロットルペダルを踏み込めば、簡単にリアを振り、ESPを作動させる強大なトルクを発生。めまいがしそうな、圧倒的な加速も楽しめる。シフターを左右に動かすことでマニュアルシフトも可能な5段ATは基本的にスムーズだが、ときにデフからのショックを感じさせる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
エアサスを装備するS350-S500に対して、S600は油圧ユニットと組み合わされたコイルスプリングもつ。電子コントロールされるガス封入式ショックアブソーバーと併せ、ボディの動きをアクティブに制御する。メルセデスいうところの「アクティブ・ボディ・コントロール」システムである。インパネのスイッチで、「ノーマル」「スポーツ」の切り替えが可能。
S600Lは、ハイテクシャシーと、2トン超という車重による自然の恩恵によって、いかにも高級車然としたフラットな乗り心地を提供する。ドライバーに路面の凹凸を伝えつつ、しかし何事もなかったのようにスムーズに走る。ハンドリングも同意匠で、(怒濤の加速は別にして)ことさらエキサイティングに振れることなく、必要な情報を与え、自然なフィールに終始する。いかにもお大尽な。
(写真=高橋信宏)
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【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年1月30日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式: 2003年型
テスト車の走行距離 :4955km
タイヤ :(前)215/45ZR18 96Y(後)265/45ZR18 97Y(いずれもMichelin Pilot Sport)
オプション装備 :−−
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態 :市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離 :350km
使用燃料:−−
参考燃費:−−

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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