日産スカイラインクーペ350GTプレミアム(5AT)【試乗記】
パートナーとともに 2003.02.25 試乗記 日産スカイラインクーペ350GT(5AT) ……367.0万円 「インフィニティG35クーペ」として、北米で人気を博する日産スカイラインクーペ。2003年1月16日から、わが国での販売も始まった。webCG記者が、雪の鹿児島で乗った。 拡大 |
拡大 |
フェアレディZ「2+2」の役割をも
日産スカイラインクーペを、ななめ後ろから見たヒトは、たいてい「ははーん」と思うはずだ。
「こりゃあ、ゼットだわい」
ルーフラインは、明らかに「フェアレディZ」のそれである。
スカイラインクーペは、2003年の年明けとともにはじまったデトロイトショーこと北米自動車ショー(NAIAS)で正式にデビューした。当地での名称は「インフィニティG35クーペ」。トヨタの「レクサス」ブランドにあたる日産の上級販売チャネル「インフィニティ」で売られるからだ。北米では2002年11月に先行発売されていたが、日本では2003年1月16日から販売が開始された。
商品コンセプトは、「Stylish and Performance」。新型スカイラインクーペの特徴として、「V35型スカイラインのデザインアイデンティティを、よりスポーティに表現」と「“余裕と感動の高性能な走り”を追求したプレミアムクーペ」が謳われる。
それはともかく、ニュークーペは、ややおとなしい性格になったスカイラインセダンの“颯爽たるイメージリーダー”の役を担い、また、いまはなくなったフェアレディZ「2+2」(臨時のリアシート付き)モデルの穴を埋めるクルマともなろう。
エンジンは、280psの3.5リッターV6を搭載。トランスミッションは、マニュアルモード付き5段ATか6段MT。スペック的にもプレミアムなモデルである。
グレードは、ベーシックな「350GT」と、本革仕様の「GT350プレミアム」の2種類が用意される。価格はマニュアルモデルの方が高く、前者が325.0/339.0万円(5AT/6MT)、後者が342.0/356.0万円となる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
「オッ!」と思わせる
スカイラインクーペのプレス試乗会は、鹿児島で開催された。「冬でも穏やかな九州南端でスポーツクーペの醍醐味を」という意図で選ばれたのであろうが、あいにく、当日はときどき雪に変わる冷たい雨。撮影の際には吐く息白く、手をかじかませながらのテストドライブとあいなった。
スカイラインクーペのホイールベース(前後車軸間)は2850mm。いうまでもなくセダンと同寸で、日産いうところの「FMプラットフォーム」を共有する。しかし、優雅なルーフラインからもわかるように、ボディパネルで4ドアモデルから流用するモノはない。サイズは、全長×全幅×全高=4640×1815×1395mm。セダンより35mm短く、65mm幅広く、75mm低い。
たとえば、日産がライバルと見なされたい「BMW3シリーズ」で顕著だが、現在のカーデザイナーは、モデルとしてのアイデンティティ−−つまり一目で3シリーズなりスカイラインとわかる個性−−と、「ドコが違うかよくわかんないけど、なんかカッコいい」というクーペのプレミアム性の間で、微妙な綱渡りをしているわけだ。さらに、セダンを手直ししただけの2枚ドアモデルで高級クーペ市場で勝ち残ることは、もはや難しい、ともいえる。
まず乗ったのは、赤いペイントのATモデル。ズシッと重めのドアを開けてドライバーズシートに座る。インテリアは基本的にセダンと同じだが、センターコンソールや、ドアのスピーカーまわりに、鈍いシルバーのチタン調“カショク”処理が施された。説明するエンジニアの方が、さかんに「カショク処理、カショク処理」とおしゃるので、てっきり“加色”処理かと思っていたら、“加飾”処理だった。「機能的には関係ないけど、差別化のためにしょうがないなァ」という技術者の声が聞こえてきそうな、いかにもエンジニア主導企業の用語だ……と、リポーターは悪意ある解釈をするのであった。
実質面で大きな変更は着座位置で、セダンより5cmほど低く、GT-Rとほぼ同じ高さになった。スポーティなシート位置である。ステアリングホイールを上下に調整すると、メーターナセルごと動くにはセダンと同じ。スウェード調クロスを用いたシートは、クッション感高く、しっとりした座り心地がイイ。
ミラーを合わせて走り始めると、「オッ!」と思った。大いに“スポーツ”を予感させる力強い発進。どんより曇った空がうらめしい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
成熟した市場
「天気が崩れないうちに“走り”の写真を撮ってしまいましょう」という高橋カメラマンの判断は正しかった。何度かカーブを往復して、駐車場に入ったときだ。パラパラパラッ……という音が聞こえたかと思うと、丸い発泡スチロールのような、小さい雪の固まりが降ってきた。それぞれが地面を転がっていく。アッという間に黒いアスファルトが白く覆われた。
適度な“曲がり”が続く指宿スカイラインをあきらめ、海沿いの国道226号線に出る。
3.5リッターV6“VQ”ユニットを積んだスカイラインには、セダンのトップグレードにしてトロイダルCVTを用いた「350GT-8」がラインナップされる。エンジンは同じだが、クーペはチューンを変え、8psアップの280psを200rpm高い6200rpmで、トルクは1kgm太い37.0kgm/4800rpmを発生する。スペック上はフェアレディZと同じだが、出力特性が配慮され、担当エンジニアの弁によると「“ジャークな”味付け」にしたという。「グイッと前に出るようにした」とでもいいましょうか。トランスミッションのよさを最大限引き出すべく、スムーズな特性を与えられたGT-8とも差別化が図られる。
新しいクーペは、力強い加速を見せる一方、Zより200mm長いホイールベース、そして物理的に90kg重いウェイトが効いて、“プレミアム”の名に恥じない、落ち着いた乗り心地をみせる。「耐久レースで勝つための技術」としてスカイライン、そしてフェアレディに導入された“フラットライド”コンセプトは、もちろんクーペでも採用された。ゼットでは、“スポーツカー”との折り合いがいまひとつついていないと感じられた“フラットライド”だが、日産のスポーツクーペではそれが活きている。“スポーティ”より、むしろ“高級感”の面で。
一方、運転していて気になったのは、着座位置が低いがゆえの“見切り”の悪さである。ドライバーからボンネット左右のフェンダーの“峰”が見え、車両感覚をつかみやすいセダンと比較すると、クーペはフロントスクリーンしか見えない。慣れていないせいもあるが、狭い場所での取りまわしでは、実寸以上にボディが大きく感じられた。メインマーケットは北米だから、使い勝手より流麗なスタイリングの方が大事なのかもしれない。
試乗を終えて、開発関係者の方々と話をした際、乗り心地のよさに言及すると、「スポーツカーはドライバーひとりで楽しむ傾向がありますが、クーペは隣に乗っているヒトのことも考えないと」というフレーズが返ってきた。プレスインフォメーションでは、「パートナーへの思いやりを大切にすること」と説明される。
なるほど。スカイラインクーペは、“大人”のためのクルマなのだ、と納得した。同時に、日本の自動車市場の成熟を考えた。2枚ドアのクルマが、子育てを終えた年輩層のための商品になったのだから。とはいえ、ジャパニーズマーケットは爛熟の気もあるから、「“ゼット顔”のクーペをつくる輩が出てこないともかぎらんな」と考え、ひとりニヤつく。
(文=webCGアオキ/写真=高橋信宏/2003年2月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。














































