メルセデスベンツ C240 4マチック(5AT)【ブリーフテスト】
メルセデスベンツ C240 4マチック(5AT) 2003.02.04 試乗記 ……605.0万円 総合評価……★★★雪とロングドライブ
メルセデスベンツの4輪駆動システム「4マチック」による高速走行性能は秀逸。エンジンとトランスミッションのできもいい。「よく雪の降る地域への高速道路を使った長距離移動を頻繁に行い、リアシートに客人を乗せることがよくある」というヒトに向く。……と、長い限定を付けたのはほかでもない。群を抜く高速での「安定性」と「快適性」に較べて、それ以外の部分でクオリティの低さが眼に付いたからだ。つまり、あまり雪国へ行かず、ハイスピードクルージングもしないヒトにとって、車両本体価格565.0万円は高いのではないか。そういうヒトには、535.0万円の「C240」はおろか、395.0万円の「C180コンプレッサー」で十分だと思う。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)現行Cクラスは、2000年にデビュー。日本へは、2000年9月27日から導入された。「ボディ」はもちろん、「ステアリング形式」(ボールナットからラック&ピニオンへ)も「フロントサスペンション形式」(ダブルウイッシュボーンからストラットへ)も変更され、根本から生まれ変わった。
日本での2003年モデルラインナップは、1.8リッター直4+スーパーチャージャー(143ps)を搭載する「C180 コンプレッサー」、同じエンジンのチューンを変え、最高出力を163psとした「C200コンプレッサー」、そして2.6リッターV6(170ps)を積む「C240」「C240 4マチック」と、218psを発する3.2リッターV6と積む、トップグレードの「C320」が輸入される。トランスミッションは、すべて5段AT。ちなみに4マチックが搭載されるのは、Cクラスセダン&ワゴンの240シリーズと、高級サルーン「S430 4マチック」。
(グレード概要)
2002年10月ラインナップに加わった「C240 4マチック」は、4WDシステム「4MATIC」を搭載する新グレード。価格は2WDのC240より30.0万円高い、565.0万円。ハンドルは左のみの設定だ。
4MATICは通常、前:後=40:60にトルクを配分するフルタイム4WDシステム。滑りやすい路面での走行時や危険回避時に、4輪それぞれのブレーキ、エンジン出力などを制御し、走行の安定を図る「4エレクトロニック・スタビリティ・プログラム」が備わる。装備品は基本的にC240と変わらないが、前席シートヒーターが標準装備となる。なお2003年モデルから、C320にのみ標準装備されていたハンズフリーテレフォン機能付きVICS対応DVDナビゲーション、オーディオ、テレビなどを制御する「マルチファンクションコントローラー」が、C240 4マチックとC240に拡大設定された。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
インパネや運転席の周辺は、全体的にプラスチック然としている。500万円超のクルマとしては、安っぽい。空調やオーディオ、ナビゲーションシステムなども使いにくい。造形に新鮮なものがないのも残念。“運転していて楽しくなる”類のインテリアではない。(前席)……★★★
シートのかけ心地やホールド性などは申し分ない。ただ、センタートンネルの出っ張りが助手席側に大きくハミ出していて、足許のスペースを喰っているのが気になる。パッセンジャーが座る際、両足を若干右へオフセットして座るハメになるのだ。また、助手席背面のドアポケットにモノを入れようとしたところ、ポケットのパネルがガバッと背面から外れて落ちた。シート内部のスプリングやクッション材など、ふだんは眼にすることができないモノを見ることができてベンキョーさせてもらったが、はっきりいってショックである。メルセデスベンツのクオリティが、文字通りここまで落ちたのか……、と。
(結局、ポケットのパネルは元通りにハマらず、ガタガタして落っこちそうなままだった。この1台だけの不具合だと思いたいけど、ほんとにショ〜ック!)
(後席)……★★★★
アンコがたっぷりと詰まって、パァンと張ったシートが身体をしっかりと受け止めてくれる。かけ心地は快適だ。足下もすっきりと空間が広がっていて、見た目より広い。ヘッドレストを外すことなく2:1でダブルフォールディングでき、使い勝手と座り心地を両立している。
(荷室)……★★★★
小型メルセデスのよき伝統で、開閉に力を要しないトランクフードは使いやすい。荷室内部も凹凸が少なく、430リッターの積載スペースを有効に活用できる。サイズは、幅×奥行き×高さ=140cm×105cm×50cm。
![]() |
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
2.6リッターV6エンジンはずいぶん改良されて、実に滑らかになった。回転の上がり下がりのキメ細かさは、まさに高級車のものだ。
「ティップシフト」機構付き5段ATも非常に優秀。左右に「コクコクッ」と、手首の動きだけでマニュアルシフトできる。もちろん、オートマチックモードでの変速マナーもスムーズそのものだ。エンジンとトランスミッションには、メルセデスベンツの高級ぶりが十分に発揮されている。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
エンジンとトランスミッションの高級ぶりとは対照的に、タウンスピードでの乗り心地はゴツゴツ、ゴワゴワしていて少々安っぽい。ハンドリングも曖昧に感じることがある。しかし高速道路に乗り入れると、直進性が高く、フラットな姿勢を保って走り続けるので、印象は一変する。高速道路での走りやすさと安心感の高さは、フルタイム4輪駆動システムである「4マチック」の恩恵といえるだろう。
(写真=郡大二郎)
![]() |
【テストデータ】
報告者:金子浩久
テスト日:2002年12月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:--km
タイヤ:(前)205/55R16 91H(後)同じ(いずれもグッドイヤー イーグルNCT5)
オプション装備:ガラススライディングルーフ(16.0万円)/本革シート(24.0万円)
走行状態:市街地(4):高速道路(4):山岳路(2)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
NEW
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。 -
第926回:フィアット初の電動三輪多目的車 その客を大切にせよ
2025.9.4マッキナ あらモーダ!ステランティスが新しい電動三輪車「フィアット・トリス」を発表。イタリアでデザインされ、モロッコで生産される新しいモビリティーが狙う、マーケットと顧客とは? イタリア在住の大矢アキオが、地中海の向こう側にある成長市場の重要性を語る。 -
ロータス・エメヤR(後編)
2025.9.4あの多田哲哉の自動車放談長年にわたりトヨタで車両開発に取り組んできた多田哲哉さんをして「あまりにも衝撃的な一台」といわしめる「ロータス・エメヤR」。その存在意義について、ベテランエンジニアが熱く語る。