2002年型ポルシェ911シリーズ【試乗記】
信じられない乗り心地 2003.01.02 試乗記 2002年型ポルシェ911シリーズ モデルイヤー2002年型の911カレラは、弟分ボクスターとの差別化を図るため、ターボと共通の顔つきとなった。そして、エンジンが3.6リッターにスープアップ! 清水和夫が、ニューカレラをテストした。 会員コンテンツ「Contributions」より再録。「0-100km/h」=5.0秒
新型「996」こと2002年型ポルシェ911シリーズは、パワーアップしてデビューした。といってもビッグマイナーチェンジであるから、外観に大きな変化はない。エンジン排気量が3.6リッター(320ps、37.7kgm)になり、ヘッドランプのデザインが変わったこと、そしてカブリオレのリアウィンドウが「樹脂」から「ヒーター付き硬質ガラス」になったのがメイントピックだ。
911のフラット6は、排気量が上がっただけではなく、ターボモデルに先行搭載された「バリオカムプラス」機構が採用された。これは、吸気側バルブのタイミングのみならず、リフト量も切り替えるシステムで、燃費も低速トルクも向上したというのがポルシェの主張である。
96.0mmのボアをもち、ストロークが78.0から82.8mmに延ばされた水冷3596cc水平対向6気筒ユニットは、320ps/6800rpmの最高出力と、37.7kgm/4250rpmの最大トルクを発生する。出力アップにより、「0-100km」加速は、カレラの6MTモデルが5.0秒(ティプトロは5.5秒)と、軽量モデル「GT3」(4.8秒)や「ターボ」(4.2秒)に一歩近づいた。最高速度はメーカーのデータ値でクーペボディ(6MT)が285km/h。さらに燃費が約6%改善されたというからいうことはない。
ニューカレラの顔つきは、ポルシェターボに似たものとなった。エアロダイナミクスにも進歩が見られる。フロントホイール前方のホイールハウスに「ホイールスポイラー」と呼ばれるリップスポイラーが装着され、空気抵抗を示すCd値=0.30と維持しつつ、高速安定性に影響する揚力は、フロントで25%、リアで40%も低減できたという。
エンジンは低速トルクが増したので、一般道路では高級感ある乗り味となった。そのうえひとたびアクセルを全開にすれば、GT3も追いかけられそうな加速力が生まれる。ティプトロでシームレスな加速を楽しむのも快適だが、6段MTを繰ってスポーティに走るのもご機嫌だ。
レベルアップしたライドコンフォート
アウトバーンはフラットアウト。スピードメーターはあっという間に260km/hに達する。RR(リアエンジン)のカレラでも、前のモデルのカレラ4並の安定性を実現している。向上した空力性能が圧倒的に効いているのだ。
さらに驚いたのが、乗り心地のよさ。非常に洗練されている。テスト車はノーマルの17インチではなくオプションの18インチラジアルを履いていたが、それが信じられない感じだ。日本では「乗り心地」と「ハンドリング」を別のものとして捉え、さらに乗り心地を「音」と「振動」に分けて考える習慣がある。しかし、ドイツでは乗り心地は“ライドコンフォート”と一語で表され、また「安定性」も含まれる。だから「ポルシェが乗り心地を重視した!」と書くと、日本では多くの人が「軟弱になったのか……!?」と誤解をする。しかし、ポルシェもフェラーリもBMWも、より快適なスポーツカーを求めている点では共通している。誰が「乗り心地が悪くてもいい」というのであろうか。
ニューカレラのライドコンフォートがレベルアップした主な理由は、ボディ剛性が捻りで25%(カブリオレで10%)向上したからだ。その結果、18インチタイヤとのマッチングがよくなった。また、フロントダンパーの減衰力特性が見直され、高速走行中のフロントのピッチングを抑えることにも成功している。コーナリング中にスロットルペダルをゆるめた際のタックインも少なくなり、高速の安定性と乗り心地が一気に良くなったのである。
(文=清水和夫/写真=ポルシェジャパン/2001年9月10日)

清水 和夫
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
MINIジョンクーパーワークス(FF/7AT)【試乗記】 2025.10.11 新世代MINIにもトップパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が続々と登場しているが、この3ドアモデルこそが王道中の王道。「THE JCW」である。箱根のワインディングロードに持ち込み、心地よい汗をかいてみた。
-
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)【試乗記】 2025.10.10 今や貴重な4ドアセダン「ホンダ・アコード」に、より高度な運転支援機能を備えた「Honda SENSING 360+」の搭載車が登場。注目のハンズオフ走行機能や車線変更支援機能の使用感はどのようなものか? 実際に公道で使って確かめた。
-
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】 2025.10.9 24年ぶりに復活したホンダの2ドアクーペ「プレリュード」。6代目となる新型のターゲットは、ズバリ1980年代にプレリュードが巻き起こしたデートカーブームをリアルタイムで体験し、記憶している世代である。そんな筆者が公道での走りを報告する。
-
NEW
アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2025.10.16試乗記今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。 -
NEW
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの
2025.10.16マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。 -
NEW
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか?
2025.10.16デイリーコラム季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。 -
NEW
BMW M2(後編)
2025.10.16谷口信輝の新車試乗もはや素人には手が出せないのではないかと思うほど、スペックが先鋭化された「M2」。その走りは、世のクルマ好きに受け入れられるだろうか? BMW自慢の高性能モデルの走りについて、谷口信輝が熱く語る。 -
NEW
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2025.10.15試乗記スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。 -
第849回:新しい「RZ」と「ES」の新機能をいち早く 「SENSES - 五感で感じるLEXUS体験」に参加して
2025.10.15エディターから一言レクサスがラグジュアリーブランドとしての現在地を示すメディア向けイベントを開催。レクサスの最新の取り組みとその成果を、新しい「RZ」と「ES」の機能を通じて体験した。