スバル・インプレッサWRX(5MT/4AT)【試乗記】
頑張っている 2002.12.17 試乗記 スバル・インプレッサWRX(5MT/4AT) ……269.8万円/285.1万円 誕生から10年、フルモデルチェンジから2年経ったスバル「インプレッサ」が、マイナーチェンジを受けた。顔をガラリと変えての登場だ。自動車ジャーナリストの河村康彦が、最強バージョン「STi」の影に隠れがちな“フツーの”WRXに乗った。ボクサーサウンド健在
三菱「ランサーエボリューション」との対決がクローズアップされるスバル「インプレッサ」。そのため、最高出力280psを誇る「STiバージョン」にばかりスポットライトが当たるが、“フツーの”「WRX」だって、フツーの道で乗るには十分異常の“走り”のパフォーマンスの持ち主。カタログ上はSTiバージョンより30ps低い、250psのエンジン出力だが、街中でのシグナルグランプリ程度であればまず「向うところ敵なし」(推奨はしませんが……)。
何より、速いインプレッサで「2ペダルカー」にこだわるのであれば、今のところこのグレードを選ぶしかない。STiバージョンには、6段MTしかないから。ちなみに、ライバルたるランエボにも、5段AT仕様の「GT-A」が存在するが、そちらは330.0万円。価格面では、インプレッサWRXに圧倒的な割安感がある。
スポーティなバケットシート(本格的なスポーツ走行では、ホールド性が不足気味)に腰を落ち着ける。スポーツモデルらしく、視界の中心線上に置かれる大型のタコメーターに目をやりながら、ターボ付きのフラット4に火を入れる。すると、その心臓はちょっと眠たげに、重いスターターの回転と共に目を覚ます。“ボッボッボッ”と、独特のパルスに満ちた低いボクサーサウンドが、ドライバーの耳を刺激する。
いまやスバル車のアイデンティティのひとつとなったこのサウンドは、4本あるエグゾーストマニフォルドの長さが異なることによる「排気の干渉音」が原因。その干渉を減らす、すなわち無駄な抵抗を排除してパワーアップするため、新型STiバージョンは等長マニフォルドが採用された。おかげで、ボクサーサウンドもかなり“薄口”になったが、こちらWRXは従来通り。スバルとしてもこの音を、「残すべきか残さざるべきか、かなり迷った」という。取りまわしが複雑になるため、等長マニフォルドは高価になるから、しばらくは「スバルの音」として、依然、多くのモデルから耳にすることにはなるだろう。
WRXの名に恥じない
WRXのMT車は、STiバージョンに用いられる6段タイプではなく、コンベンショナルな5段タイプのギアボックスをもつ。個人的にはクロースした6段型が欲しい。オプションでもよいので、フィーリング抜群の6段MTの設定を望みたい。
1速を選び、“STiバージョンよりは”軽いクラッチをミートして、アクセルペダルをちょっと深く踏み込んでみる。すると、ターボ付きエンジン特有の「ググッとくる」トルクの盛り上がりが、STiバージョンより1000rpm近く低い2700rpmあたりから押し寄せる。レスポンスのよい「小径ターボチャージャー」が、新たに採用されたおかげだろう。
ただし、そのぶんパワーの頭打ち感も早いタイミングで訪れる。タコメーターのレッドラインは7000rpmに引かれるが、実感として、有効なパワーバンドは6200rpmくらいまでだ。ちなみにAT仕様の場合は、トルコンの滑りの影響か、“ターボゾーン”の下限が3200rpmまで上がる感触。いずれにしても絶対的な加速力は十分で、「WRX」の名に恥じるものではない。
軽快なフットワーク
フットワークテイストは、STiバージョンよりも軽快な印象だ。というより、「こっちの方が乗り心地がよい」と表現した方がわかりやすいだろう。ブリヂストンのポテンザRE011が発するパターンノイズが、30km/hくらいまでの速度域で顕著なのが残念だが、全般的な快適性はなかなか高い。
ブレーキのタッチはさほど剛性感が高くなく、すこし物足りない。ハード走行での持久力が足りないSTiバージョンのそれも含め、ブレーキに関してはまだ一級品とは思えないのが新しいインプレッサの弱点か。
ハンドリング面では、コーナーをとことん追い込んで行った際のアンダーステアは、STiバージョンよりも強め。しかし、「ちょっと飛ばす」程度でのワインディングロードでの身のこなしは見事なものだ。敏感な人であれば倒立式ストラット新採用やリア・ストラットのトップマウント形状変化の効果を、横剛性感の向上として実感することができるだろう。
STiバージョンの影に隠れて目立たないが、“フツーのWRX”も頑張っているのである。
(文=河村康彦/写真=高橋信宏(T)、難波ケンジ(N)、荒川正幸(TOP写真)/2002年11月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。
































