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第166回:日本の名機は、まだ元気! 〜「ゼロ戦エンジン始動イベント」の会場から 【Movie】

2012.12.04 エディターから一言

第166回:日本の名機は、まだ元気!〜「ゼロ戦エンジン始動イベント」の会場から 【Movie】

 

アメリカで保存されている日本のゼロ戦が、久しぶりの“里帰り”。その様子を、お披露目の舞台となった所沢航空発祥記念館からリポートする。

17年ぶり、3度目の来日


バスン、バスン、バララン! バラバラバラ……

どこかハーレーダビッドソンを思わせる、OHVエンジンならではの音。

仕事がら貴重なレーシングカーのエンジンサウンドを耳にする機会は多いけれど、今回の取材対象も相当なレア物だ。
なにせ、目の前でアイドリングしているのは、あの「ゼロ戦」なのである。

しかも、いまだに空を飛べる機体と知らされれば、緊張も一段と高まるというもの。

これ、ホンモノなんだなぁ……!

観客の前に姿を現わしたゼロ戦。この機体は61-120号機で、日ごろはアメリカ・カリフォルニア州で展示されている。今回、特別展示のため17年ぶりに“里帰り”した。
観客の前に姿を現わしたゼロ戦。この機体は61-120号機で、日ごろはアメリカ・カリフォルニア州で展示されている。今回、特別展示のため17年ぶりに“里帰り”した。 拡大
1943年製の機体は、入念なレストアを施されているとはいえ、実に69年モノ。日に3回行われたアイドリングのデモンストレーションも、エンジンへの気遣いから1回あたり10分に制限された。
1943年製の機体は、入念なレストアを施されているとはいえ、実に69年モノ。日に3回行われたアイドリングのデモンストレーションも、エンジンへの気遣いから1回あたり10分に制限された。 拡大
両翼の先端までの長さは11mで、全長は9.1m。この日、大空を舞うことはなかったものの、最高速度は564.9km/h, 航続可能距離は1920kmをマークする。

→ゼロ戦およびエンジン始動イベントのその他写真はこちら拡大
両翼の先端までの長さは11mで、全長は9.1m。この日、大空を舞うことはなかったものの、最高速度は564.9km/h, 航続可能距離は1920kmをマークする。
	
	→ゼロ戦およびエンジン始動イベントのその他写真はこちら

2012年12月1日、埼玉県所沢市にある所沢航空発祥記念館で、「海軍零式艦上戦闘機五二型(通称:ゼロ戦)」のエンジン始動イベントが開かれた。
今回の試みは、同記念館が今年8月から開催している特別展「日本の航空技術100年展」の“目玉展示”として行われたもので、取材日の12月1日のほか、翌12月2日にも実施。明けて2013年3月の30日、31日にも予定されている。

イベント会場は、ときどき小雨がパラつくコンディションではあったが、どっこい、大勢の観客が詰めかけた。
でも、そうした熱心な航空ファンならずとも、ゼロ戦のことは日本人なら誰でも知っているに違いない。戦争に関するドキュメンタリー映像や書籍を通じて名前に触れる機会はたびたびあるし、その高性能が「優れた日本のものづくりの象徴」として語られることも多い。

さて、今回のデモンストレーションに使われた機体は、富士重工業(スバル)の前身である中島飛行機の小泉製作所で1943年に製造された。1944年に戦地で米軍の手に渡り、戦後、1957年にアメリカ・カリフォルニア州にある航空博物館「プレーンズ・オブ・フェイム」が所蔵。その後はレストレーションを重ねつつ、さまざまな航空ショーで飛行を続けている。

日本に里帰りするのも、実はこれが3回目になる。1978年と1995年の過去2回は実際に母国の上空を飛んでみせたが、今回はエンジンの始動のみ行われる。とはいえ、貴重な機会には違いない。いつも自動車イベントで往年の名車に会うときもそうだが、神妙な心持ちで見学に臨んだ。

61-120号機は、現存する中で最もオリジナルに近いゼロ戦だ。唯一、当時と同じ栄二一型エンジンを搭載する。
61-120号機は、現存する中で最もオリジナルに近いゼロ戦だ。唯一、当時と同じ栄二一型エンジンを搭載する。 拡大
所沢航空発祥記念館の坪井健司館長(写真右端)と、ゼロ戦に同行した「プレーンズ・オブ・フェイム」のスタッフ。3人のうち一番右に見えるジョン・マロニー氏は、アメリカ国内における正式なゼロ戦の操縦資格を持っている。
所沢航空発祥記念館の坪井健司館長(写真右端)と、ゼロ戦に同行した「プレーンズ・オブ・フェイム」のスタッフ。3人のうち一番右に見えるジョン・マロニー氏は、アメリカ国内における正式なゼロ戦の操縦資格を持っている。 拡大

世界でひとつだけの“音”

アメリカ人スタッフの手でアイドリングを始めたエンジンは、27.9リッター星型14気筒。クランク軸を中心として14本のシリンダーが放射状に並ぶ。スーパーチャージャーで過給され、最高出力1100馬力を搾り出す。

軽量で空力性能に優れた機体とあいまって、当時としても輝かしい高性能を発揮したというのだが――それほど有名なゼロ戦が今や1機しかないというのは、なんとも寂しい。
名車だったら、まだ残る。クルマと兵器を一緒にはできないけれど……。センチメンタルな筆者に、所沢航空発祥記念館の館長 坪井健司さんが応じてくださった。

「“飛べるゼロ戦”は、いまでも世界に十数機あるんですよ。ただ、オリジナルの栄(さかえ)二一型エンジンを搭載しているのは、この1機だけなんです」
修復がままならず、多くは形状の似たアメリカ製エンジンに乗せかえられてしまっているのだそうだ。

貴重な機体と言われると、音だけでは物足りなくなるのも人情……。でも、飛ばすには“年を取り過ぎている”ということなのでしょう?

「いや、とんでもない。この機体は、まだまだ元気に飛べますよ!」
と、坪井館長。
「場所(空港)の手配も必要になりますから、そう簡単にはいきませんけど。アメリカでのメンテナンスも非常によく行き届いていますし、いまでも飛行はできる。」
「今回はエンジン音をお聞かせするにとどまりますが……1911年に産声を上げてから、たった30年で世界の最高峰まで登りつめた、日本の航空機産業のすごさ。それをこの音から感じていただけたらと思っています」

いつになるかはわからないけど、飛んでる姿もリポートしたい。

(文と写真=webCG 関顕也/取材協力 所沢航空発祥記念館)

ボディーの表面には、細かな凹凸が見受けられる。コックピットへの乗り込みは写真の向こう側から。定員は1名である。
ボディーの表面には、細かな凹凸が見受けられる。コックピットへの乗り込みは写真の向こう側から。定員は1名である。 拡大
次回のエンジン始動イベントは、2013年3月30日と翌31日に予定されている。
次回のエンジン始動イベントは、2013年3月30日と翌31日に予定されている。 拡大

■ゼロ戦エンジン始動イベント(所沢航空発祥記念館)

→ゼロ戦およびエンジン始動イベントのその他写真はこち
 

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